Samurai Reincarnation/「魔界転生」。

それにつけても、オバマの日本訪問は一体何だったのだろう…。

それは共同記者会見で、安倍総理が会見「原稿」内でオバマを「バラク、バラク」とファースト・ネームで読んで居たのに対し、筆者の知る限りオバマ安倍氏を「ミスター・アベ」とか「ミスター・プライム・ミニスター」と呼び続け、一度も「シンゾー」とは呼ばなかった。

海外のビジネス・オケージョンに於いて、お互いをファーストネームで呼び合う時には、当然お互いの「同意」が必要で、筆者のビジネスでも例えば顧客の方が「頼むから、ボブと呼んでくれ」とか、「Dear Mago」で始まるメールを寄越さない限り、決して此方からは親しくない相手をファーストネームでは呼ばないし、呼びたい時は「May I call you XXX ?」と先ず聞くのが礼儀だからだ。

と云う事は、オバマは総理を「シンゾー」と呼ぶ程に、そして向こうに思われて居る程は親しくない、と思っている訳で、その段階で安倍総理の方が「バラク」等と呼ぶのは失礼だし、常識が無い。

聞けばオバマは夫人を連れず来日し、次郎寿司を残し、昼食会を断り、迎賓館にも泊まらなかったらしいから、「国賓」でもファーストネームで呼び合う程の「トモダチ」でも無い、と云う意思表示だったのだろう…イタい記者会見で有った。

さて、春が訪れたと云えども、夜等は未だ0度近く為るニューヨーク…そして、その夜も何だかんだ云って忙しい。

先ず火曜日は、残念ながら今週一杯で店が閉まって仕舞うアッパー・イーストサイドの和食店「DONGURI」へ、ジャズ・ピアニストのH女史&マヨンセと向かい、相変わらず超旨い「胡麻豆腐」や「スイート・コーン掻き揚げ」、「和風海鮮ブラック(イカスミ)・リゾット」等を頂き、「味」に別れを告げる。

此処のスーパー・シェフ、加川仁さん(拙ダイアリー:「伝統を知った『クリエイティヴィティ』」参照)が作る料理をこれからニューヨークで食べられなくなるのは淋しいが、仁さんは日本へ帰り、今後東京の某和食店でシェフを務めるそうなので、それはそれで楽しみだ!然もその店とは…今は内緒で有る(笑)。

翌水曜は毎年恒例の「山田会」を、今度はミッドタウン・イーストの「KOKAGE」で。京都の老舗生麩屋「麩嘉」が経営する精進料理の店「KAJITSU」の階下に在るこの店は、魚や肉も出すので確り食べたい時は最適なお店だ。

「山田会」は、そもそも元裏千家ニューヨーク出張所所長の故山田尚先生を偲ぶ会なのだが、今年はそのメンバーの1人で有る、日本美術史の大家でコロンビア大学名誉教授の村瀬実恵子先生の「卒寿」のバースデーも兼ねて、総勢14名での楽しい食事会と為った。然し村瀬先生、お元気である!

そして木曜は、チャイナタウンに在る顧客の画廊のオープニング・レセプションに顔を出し、その後はA姫&マヨンセと合流し、ローワー・イーストサイドで開催された、ソーラー・システムで動く時計「Q+Q」のイヴェントへ。

此処ではビヨンセの妹ソランジュ・ノウルズに拠るDJや、キャンディー・バー、ポラロイドを撮ると貰えるコインで「ガチャガチャ」をすると、この「Q+Q」の時計が出て来ると云った色々な企画が有り、会場は盛況。我等3人とも一寸「スウォッチ」っぽいカラフルな時計をゲットし、その後はA姫行き付けのイタリアン「P」で、時計を見せ合いっこしながら食事…旨かった!

さて、此処からが今日の本題。

最近、或る面白い本を読了したのだが、その本とは中川右介著「角川映画 1976‐1986 日本を変えた10年」。この著作はタイトル通り、我が青春時代に一世を風靡した角川映画の最盛期の10年をドキュメントした作品で、「犬神家の一族」から始まり「人間の証明」「野獣死すべし」「里見八犬伝」「スローなブギにしてくれ」から「天と地と」迄、何とも懐かしいタイトルが並ぶ。

この書籍の事は後日此処に記そうと思うが、この本を読了した翌日、偶々ブライアント・パーク横の紀伊国屋書店のDVDコーナーで偶然見つけ、思わず買って仕舞ったのが、「Samurai Reincarnation」…その邦題こそ、今日のダイアリー・タイトルで有る処の「魔界転生」だ。

魔界転生」は1981年角川春樹制作作品、原作山田風太郎で監督深作欣二、主演は柳生十兵衛に「ソニー千葉真一天草四郎沢田研二、その他佳那晃子(細川ガラシャ)や緒方拳(宮本武蔵)等が出演している作品。

一剱萬生
一刀萬殺
魔界転生
真界天生ナリ

神武参剱王太志命剱言

「伊勢の生神」と呼ばれた、真剣による祓いの秘儀を会得していた人物に因るこの文々で始まる本作は、スタッフに衣装アドヴァイザーの辻村ジュサブローや音楽の山本邦山等の名前等も見えるが、改めて観ると何ともキッチュな超B級映画で、終わり方も唐突…が、確かに見処が幾つも有った。

先ずは冒頭、沢田扮する天草四郎が蘇るシーンで、観世流シテ方味方健師に拠って舞われる能「船弁慶」…流石、「未練」を残して死んで行った者を蘇らせると云う本作のストーリーに相応しい曲だ!そして佳那晃子の超現実的な艶っぽさや、マイケル・ジャクソンの「スリラー」を彷彿とさせる、魔界衆全員(若山富三郎以外)が着用した金色コンタクトレンズに因る「金眼」。

また、沢田と真田広之のキスシーン(何と、これが真田の映画での「初キスシーン」だったらしい!:笑)や、最後のシーンで十兵衛に首を撥ねられたにも関わらず、まるでマジンガーZの敵役「ブロッケン伯爵」の様に、無頭の腕に持たれた四郎の首が笑い話すシーン等々。

が、一番凄いのは、何と云っても柳生但馬守宗矩役の若山富三郎の演技だ!特に本作最後の最後の、セットを燃やした「本物の炎」の中での、息子十兵衛役の千葉との殺陣は誠に素晴らしく(2人共、水を被って重くなった衣装を付けての殺陣だったらしい)、この作品で若山は瞬きをしない事に拠って「魔界衆に為った」事を表現しようと試みたらしいが、それは実際抜群の効果を生んで居て、重厚且つ鬼気迫る物が有る。

30年振りに観た、サミュエル・L・ジャクソンも演技に取り入れたと云う「魔界転生/Samurai Reincarnation」…如何にも深作的、そして「47Ronin」的なアメリカ人好みのスピード感有る、タランティーノにリメイクを頼みたく為る作品でした。