我が家にやって来た「現代女神像」。

昨晩は気温が何と摂氏6度迄下がった、冬間近のニューヨークに戻って来た。

さて日本での最後の日々は、幾つかの大名品の実見やプライヴェート・セールの契約等、仕事上は極めて有意義だったが、展覧会フリークとしての日々もこれまた充実。

先ず東京では、建て替え前の昭和なビルを使っての現代美術アート・セミナー&展覧会、「The Mirror - Hold the Mirror up to the Nature」のオープニングへ…この企画は清水敏男氏の総合プロデュースで行われ、登場するアーティストは総勢30名、豪華対談を含むセミナーも超充実している。

会場となる銀座4丁目の1930年建設のビルは、非常に「味」が有る建物で、其処に展示されたカプーアや名和晃平、西野達や流麻二果、真悟フランシスや堂本右美等の作品はそのレトロな空間で輝き、一種独特の雰囲気を醸し出して居るので是非ご覧頂きたい(→http://the-mirror-ginza.com/)。

また観覧後のレセプションも、日本のオープニングでは中々無いタイプの盛り上がり方で、バンドの演奏を聴きながら「石」好きO氏や達さん等と盛り上がり、若いアーティストと新しく知り合ったりして大満足…日本でも、こんなセンスの良いイヴェントが増える事を、切に希望したい。

そして日本滞在最終日に観たのは、「東美アートフェア」@東京美術倶楽部。行ったのが初日だった為、正直売上がどうだったかは分からないのだが、会場には結構な数の人で溢れて居て、活気を感じた。

京都では、重要ミーティングの合間を縫って2つの展覧会を超駆け足で…平成知新館に行くのも初めてだった僕は、先ずは京博の「修理完成記念 国宝 鳥獣戯画高山寺」と「平成知新館オープン記念 京へのいざない 第1期」を観る。

此処で展覧された鳥獣戯画全巻は、修理後初公開だと云う。流石の展示だとは思ったが、矢張り民間にも散らばる(アメリカにも一幅在る)断簡等全てを展示した上で、制作年代の差異考証や、筆や紙質の違い等を検証して貰いたい、と思うのは僕だけだろうか…来年東博でも鳥獣戯画の展示が有る様に聞くが、此方では如何だろう?

また大好きな谷口吉生に拠る平成知新館も、流石見易く美しい。が、何と無く古めかしく威厳の有った昔の京博が懐かしくなったのも事実。人間とは贅沢な物だ…そんな京博を後にして向かったのは、裏千家の茶道資料館。此方では「開館35周年記念秋季特別展 茶の湯の名碗」が開催中。

この展覧会の事は、かいちやうから「孫一さん、何気に凄い展覧会だから、時間が有ったら観た方が良いですよ」と勧められて居たのだが、成る程聞きしに勝る凄いラインナップだった!

僕の大好きな長次郎「白鷺」や光悦の「加賀光悦」を始め、粉引「塞翁」や「二徳三島」、「対馬井戸」、そしてこの世に存在する三碗の内、蜂須賀家ー馬越家ー川端康成と伝わった重美の「宗及井戸」迄、もう垂涎モノばかり…観覧後のリチャード・ミルグリムの茶碗で頂いた一服も含め(お運びの女性がニューヨークから来た僕に、知らずとは云え「ニューヨークの」を強調し連発していたのが、妙に可笑しかった)、至福のひと時で有った。

そんなこんなで、ニューヨークへの帰りの機内では意外な結末だった「半沢直樹」を全話観了し、帰って来た地獄宮殿で僕を待って居たのは、マヨンセと宮殿コレクションに新しく入ったアート作品だった。

その作品とは、現代美術家加藤泉の彩色木彫女性像「Untitled」…先日都現美で観た氏の新作のド迫力には及びつかないが(拙ダイアリー:「『生きるぞー!』なアート」参照)、何とも愛らしく、然し作家加藤氏の情熱と「手」を鑿跡に感じる、素晴らしい作品だ!

そして、マヨンセに因って「ピッピちゃん」(或いは「泉子」:笑)と名付けられたこの「女子像」は、何処か日本古来の木彫「女神像」を僕に思わせる。

それは若しかしたら、加藤氏が島根県出身だからかも知れないし、氏の木彫作品が何時もプリミティヴだからかも知れない。或いは氏の「木」へのアプローチに、何処か入魂的なモノが有るからかも知れない。でもそんな事は、正直どうでも宜しい…「ピッピちゃん/泉子」は既に、地獄宮殿の新たな「女神」に為ったのだから。

この様なアートと暮らす悦びは、経験した者にしか分からない「贅沢必需品」。その方法、極意と悦楽に関しては、現在僕が「アートの深層」を連載中の女性誌(是非ご一読を!)、Gift社刊「Dress」12月号(11月1日発売)の特集をお読み頂ければ、良〜く判ります。

是非ご一読を!


PS:この文章をアップしている時に、大ニュースが入って来た。「ジェニー/達子」が誕生したと云う…Tオヤジ、Mちゃん、本当にオメデトウ!!