「トランプ効果」…?:秋のメイン・セール結果。

気が付けばもう11月も半ば過ぎ、ロックフェラー・センターには史上2番目に大きなツリーが立ち、今年も後ひと月半…。

そんな中我が国の首相は「金のドライバー」なる貢物を持って、未だ宣誓も就任もして居ないドナルド・トランプに所謂「朝貢外交」をしに行った。全く以って恥ずかしい。

そこではパフォーマンス好きで自己愛に溢れる首相は大得意だったが、海外のメディアは非常に冷静で、トランプが通訳も用意しなかった事や娘が同席した事等、一向に介して居ないのだろう。ドヤ顔の喧嘩慣れして居ないお坊っちゃまは、何れ百戦錬磨のトランプに痛い目に会うに違いない。

それともう1点云わせて貰えば、首相がもしどうしても今回の会談をやりたかったのなら、もっと隠密に、メディアも気付かない程の「プライヴェート」な会談にすべきだったと思う…Too lateだが。

そのトランプの勝利後急落したニューヨークの株価は、その後ダウ史上最高価格を記録し、円安と日本の株価も復活させた。そして富裕層に好意的なトランプの経済政策は、今週ニューヨークで開催された秋のメイン・セールズにも、好意的な結果を齎したと思う。

そんな各オークション・ハウスの今週のセール結果は、以下の通り。


ーフィリップス「20世紀&現代美術」ー
●イブニング・セール売上:1億1123万9500ドル(約120億円)、売却率92%(34/37)
トップ・ロット:リヒター「Dϋsenjäger」:2556万5000ドル(約27億6000万円)
1000万ドル以上での売却:3点:リヒター、リキテンスタイン、スティル
●デイ・セール売上:981万750ドル(約10億6000万円)
●「20世紀&現代美術」総計:1億2105万250ドル(約130億6000万円)


サザビーズ印象派・近代絵画」ー
●イブニング・セール売上:1億5771万4750ドル(約170億3000万円)、売却率79%(34/43)
トップ・ロット:ムンク「Pikene PÅ Broen (Girls in the Bidge)」:5448万7500ドル(約58億8000万円)
1000万ドル以上での売却:2点:ムンクピカソ
●デイ・セール売上:3883万1750ドル(約42億円)
●「印象派・近代絵画」総計:1億9654万6500ドル(約212億3000万円)


ー同「現代美術」ー
●イブニング・セール売上:2億7656万750ドル(約298億7000万円)、売却率:94%(60/64)
トップ・ロット:リヒター「A, B, Still」:3398万7500ドル(約36億7000万円)
1000万ドル以上での売却:6点:ホックニー、ウォーホル、バスキア、リヒター2点、デ・クーニング
●デイ・セール売上:8017万9875ドル(約86億6000万円)
●「現代美術」総計:3億5674万625ドル(約385億3000万円)


ークリスティーズ印象派・近代絵画」ー
●イブニング・セール売上:2億4634万4500ドル(約266億円)、売却率:80%(39/49)
トップ・ロット:モネ「Meule」:8144万7500ドル(約88億円:アーティスト・レコード)
1000万ドル以上での売却:4点:モネ、ピカソ2点、カンディンスキー(アーティスト・レコード)
●デイ・セール売上:3283万250ドル(約35億5000ドル)
●「印象派・近代絵画」総計:2億7917万4750ドル(約301億5000万円)


ー同「戦後・現代美術」ー
●イブニング・セール売上:2億7697万2500ドル(約299億1000万円)、売却率:85%(55/65)
トップ・ロット:デ・クーニング「Untitled XXV」:6632万7500ドル(約71億6000万円:アーティスト・レコード)
1000万ドル以上での売却:5点:デ・クーニング、リヒター、ライマン、カリン(アーティスト・レコード)、デュビュフェ
●デイ・セール売上:6146万2250ドル(約66億4000万円)
●「戦後・現代美術」総計:3億3843万4750ドル(約365億5000万円)


と云う事で、4人のアーティストのオークション・レコードを出したクリスティーズが、この秋も「ワールド・リーディング・アート・カンパニー」の座を守った訳だが、全体的にも高い売却率と安定した売上を記録し、ホッと一息。各オークション・ハウスの週間売上は以下。


●フィリップス:1億2105万250ドル(約130億6000万円)
サザビーズ:5億5328万7125ドル(約597億6000万円)
●クリスティーズ:6億1760万9500ドル(約667億円)


その意味でトランプの勝利は、約13億ドル(1400億円)をアート・マーケットで費やした「この1週間」に関しては、その効用を発揮したと云って良いかも知れない…そして共和党への政権の復帰は、今回アーティスト・レコードを出したモネ、カンディンスキー、デ・クーニング、或いは現役最高価格作家のリヒターと云った「マスターズ」へアート業界の資金を集めさせた、保守的な結果だったとも云えるのでは無いか。

9.11の際もリーマン・ショック時も、アートの世界には株の世界から半年遅れて「景気の波」がやって来る。そして人格は兎も角、トランプの登場は日本を含めた世界の美術業界の「トランプ(切り札)」に為るかも知れない。

今世界に君臨する極右・自国優先・排他主義の指導者達に因って、世界が滅びさえしなければ、だが…。


−お知らせ−
*12月14日(水)19:00より、青山の岡本太郎記念館にて開催される「舘鼻則孝 呪力の美学」展のアーティスト・トークに登壇します。詳しくは→http://www.taro-okamoto.or.jp/event/index.html

*12月16日(金)19:00-20:30、ワタリウム美術館での「2016 山田寅次郎研究会4:山田寅次郎著『土耳古画考』の再考」 に、ゲスト・コメンテーターとして登壇します。詳しくは→http://www.watarium.co.jp/lec_trajirou/Torajiro2016-SideAB_outline.pdf

*僕がエクゼクティヴ・プロデューサーを務め、「インドネシア世界人権映画祭」にて国際優秀賞とストーリー賞を受賞した映画、渡辺真也監督作品「Soul Oddysey–ユーラシアを探して」(→http://www.shinyawatanabe.net/soulodyssey/ja/)が、好評の為、来年1月21・24・30日の3日間、渋谷のアップリンクにてリヴァイヴァル上映されます。奮ってご来場下さい!