「デュラン・デュラン」に自分を投影した結果…。

安保法案が可決された。

外国から眺めて居るから一層感じるのかも知れないが、これで我が国の行く末はより困難な物になり、武器輸出国として世界に君臨すると共に、世界のテロの標的と為るだろう。エゴ首相はいつ何時でも、身代わりに為る覚悟を決めて置いて頂きたい。

然し「福島」も放り投げて、バカリンピックと拙速エゴ法案だけに力を入れるこの政権…日本史に於ける希なる汚点政権は、早く打倒せねばならない。

さて一度涼しく為った物の、再び30度前後まで気温の上がったニューヨーク…余りの気温差に、僕も珍しく風邪を引いて仕舞った。

そして今週開催の「Asian Art Week」。クリスティーズはそれなりの出来で、サザビーズの売り上げの約2.5倍、都合5489万1189ドル(約65億8700万円)を売り上げたが、客足も活気も春に比べると今1つ…これも中国経済の先行き不安感の顕れだろうか?

今週のトップ・ロットは中国16〜17世紀の4脚組みの椅子で、419万7000ドル(約5億円)…今回の中国美術セールは、陶磁器に比べると家具の強さが目立ったが、東南アジア現代美術部門でもスーザの作品がカテゴリー・レコードの408万5000ドルで落札された事を考えると、日本・韓国美術分野は寂しいばかり。

そんな中、風邪と坐骨神経痛を圧しての此方の仕事はと云えば、プライヴェート・セール用の伝狩野元信の「水墨四季山水図屏風」を展示し、沢山の学者に観て貰って数多の意見を頂き、その評判が良かった事だけが救いだ。

が、その反面、恥ずかしながら食欲の方は相変わらず盛んで、日本から来た古美術商達との焼肉やメキシカン、某美術誌編集長と新アートビジネスを始める某大手商業施設関係者とのイタリアンや、某美術館の財団理事とのシーフード等盛り沢山で、今頑張っているダイエットがこの侭維持出来るか、只でさえ拙い自信が相当揺らぐ(涙)。

そしてその食べ過ぎ感が漂う或る朝、テレビをふと観て居て吃驚仰天し、結局最後迄齧り付いて観て仕舞ったのが、NBCの朝の番組に生出演して居た懐かしの英国バンド、「デュラン・デュラン」のライヴだった!

デュラン・デュランは1978年にバーミンガムで結成され、2枚目のアルバム「Rio」の大ヒットに因り、所謂「ニュー・ロマンティック」の旗手と為る。

知らない人の為に云って置けば、「ニュー・ロマンティック」とは70年代後半のブリティッシュ・ロック界で起きた、例えばスパンダー・バレエ(「True」!)やヒューマン・リーグ(「Don't You Want Me」&「Fascination」!)、カルチャー・クラブやディペッシュ・モード等の、センス有るヴィジュアル且つ音楽性がウリのバンド達に拠るムーヴメントだ(「ABC」も入るのか?)。

因みにこの「デュラン・デュラン」と云うバンド名も、稀代の色男監督ロジェ・バディムが当時の夫人だったジェーン・フォンダをヒロインに抜擢したセクシーSF映画、「バーバレラ」中の悪役「デュラン・デュラン博士」から取られて居るのだが、そんな所にも中々のセンスが感じられる。

僕が彼等の曲を初めて聴いたのは確か「Rio」と云う曲で、「ベストヒットUSA」の中でだった気がするが、若しかしたら「Hungry Like a Wolf」だったかも知れない(どっちが先だったか?)…何れにせよこの「デュラン・デュラン」と云うバンドは、其れ迄ディスコで聴いて居たアメリカのブラック・ミュージックとは異なる「オサレ感」一杯のサウンド&ルックスで、後の例えば「Please Tell Me Now」や「The Reflex」、「Notorious」等のダンサブル・ナンバーは大学生時代に散々聴いた物だ。

さて久々に観た彼等の顔には、法令線が目立ったり少々イジッた感も見えたりしたが、リード・ヴォーカルのサイモンが今年56歳と云う事実を鑑みれば仕方が無いし、然し体のシェイプも悪くなく、未だ未だ男の色気は感じられる。

そして始まった彼等のパフォーマンスはパワフルで、「Hungry like a wolf」等を熱唱。序でにその日「Terminal 5」でのライブで披露した、僕の大好きだった「The Reflex」の間奏部分がリズムだけに為り、サイモンが通常「So, why don't you use it ?」と歌う箇所を「ソー、ホワイヤイヤイヤイ、ホワッ!…ホワイヤイヤイヤイ、ホワッ!」と歌う部分(判らんだろうなぁ:笑…判らん人はこれを見よ→https://m.youtube.com/watch?v=oDnNF5cHCdo)から、再び「The Reflex!」と入る時のカタルシスは、見事に健在だったのだ!

最近、昔好きだったミュージシャンの年齢が実は自分の年と意外に近かった事を知って、驚く事が有るのだが(因みにボノは僕より3つ上で、ボン・ジョビは1つ上、ジョージ・マイケルは同い年で、クラヴィッツは1つ下だ!)、彼等のパフォーマンスが未だイケイケだったりするのを見ると、「俺も頑張らねば…」と素直に思える。

そう考えると矢張り「ロック・スター」とは、「この歳」に為っても人々に「若く居よう」と云う無駄な抵抗的な、然しロマンティックな勇気を与えられる、誠に素晴らしい存在なのだと僕は再確認するので有った。

そして、今回観たデュラン・デュランの面々と比べた結果、恥ずかしながら「俺も未だ未だイケるのでは?」と思った僕を、皆さんどうぞお笑い下さい(笑)。


ーお知らせー
*Gift社刊雑誌「Dress」にて「アートの深層」連載中。9/1発売の10月号は「平和」と云う「こわれもの」に就て。