年の瀬動向。

12月19日(土)
8:00 前夜のカラオケ忘年会の所為と思われる、喉の痛みで起床。青汁豆乳シェイクとバナナを食べてから、掃除。嗚呼、今年も後10日と少し。

13:00 その風邪気味を圧して、私的好奇心の為に数店の骨董屋を廻るが、結果、欲しい物が無かった事を神に深謝する。

15:00 原美術館で「そこにある、時間:ドイツ銀行コレクションの銀行の現代写真」を観る。中々素晴らしい展覧会で、特にフリオ・セザール・モラレスやクラウス・リンケの作品に惹かれるが、アーティストの「写真をコンテンポラリー・アートとして表現する苦労」を再認。

17:30 ギャラリー小柳での「野口里佳 鳥の町」展レセプションへ。鶴等の渡り鳥の群飛のカタチが美しい。その後山下先生と久々の再会、そして小柳さんから年末恒例の某アーティスト主催の「歌会」の詳細を聞く。この「歌会」は年々グレードアップして居るが、今回は有名建築家軍団との対決との事…オヂサン・パワー凄い。

19:00 かなり遅刻して仕舞ったが、代官山ヒルサイドテラスでの平野啓一郎&澤田知子両氏の対談を聞く。澤田さんはお元気そうで、相変わらず突っつきたくなるホッペが本当に可愛らしく、作品も大層面白いし、平野氏のツッコミも流石。澤田さんの「キャバ嬢」ポートレイトでの「アングル」が、キャバクラに貼って有るキャバ嬢の写真の様に、体・顔・視線を各々逆向きにする構図に基づいて居ると云う話に、深く頷く。

20:00 対談を一緒に聞いた写真系の友人と、ワインビストロ「L」でディナー。ビーツや魚が美味い。


12月20日(日)
11:00 年を越える前にと思い、亡き父の墓参。その後実家に行き、風邪気味且つドアに顔をぶつけて絆創膏を貼った母親と饂飩を食べる。年老いた親の一人暮らしは、矢張り心配だ。

15:00 国立新美に行き、「18th Domani展」と「シェル美術賞展」を観る。Domani展では松岡圭介や佐伯洋江、木島孝文作品に興味を持ったが、今回のレヴェルは中々高い。シェル展はマアマアだったが、展示の仕方が酷過ぎる。

19:00 引っ越し&新装開店以来ご無沙汰して居た、中高同級生Dのやっている自由が丘のスペイン料理店「M」へ。友人且つ親戚(友人に為って粗10年経ってから、遠い親戚だという事が分かった…)のTと、美味いタパスや鹿肉、ロー・カーボ・ダイエット中の人間は決して食べてはいけない激ウマ「カラスミ・ペペロンチーノ」を頂いて仕舞ふ。そんな僕は人間失格だが、ライザップに数十万出して10数キロ減量した後、見事にリバウンドしたTも同じ穴のムジナか…悲し過ぎる(涙)。


12月21日(月)
12:30 ミッドタウン中の「U」で、重要顧客とランチ。前夜の反省から、シュフズ・サラダのみをお慰みで注文するが、デザートにピーカン・タルトを食して仕舞ひ、ジャン・ポール・ベルモンドの様に「俺は最低だ」と心の中で呟く。然し「『ミッドタウン』内の『U』」って、此処はニューヨークか?何で日本の飲食業界は、ニューヨークの流行り店を全て持って来ようとするのだろう…借り物アイディアだらけで、恥ずかしく無いのか?そう云えば、以前東京の某デパ地下に買い物に行った時、「G」と云うニューヨークの地名の付いたスイーツ・ショップ&カフェが在って、余りに美味しそうだったので入って食べたら案の定超ウマく、帰りに「此方のお店、ニューヨークの『G』のどの辺に在るんですか?」と店員に聞いたら、「あのぉ、ウチはニューヨークには無いんです」と云う。「エッ、では何処が本拠地なの?」と聞いたら、何と「名古屋」だと云ふ…流石名古屋、と云うべきか。

14:00 その顧客と、サントリー美術館の「水〜神秘のかたち展」を再見。うーむ、観れば観る程「日月山水図屏風」には謎が多い。不動明王の代わりに、倶利伽羅剣を矜羯羅・制窳迦と共に配した軸が素晴らしい。欲しい。

16:00 然る重要アート・パトロンの方から、「『今から』湯河原の温泉に3人で行くんだけど、一緒に行かない?この3人と渡り合えるのは、貴方だけだから。」とのお誘いを電話で受ける。良い宿なので一瞬心が動くが、「今から」って…行ける訳無いぢゃ無いか!(怒)

18:00 VIP顧客と久々の麻布十番の和食「K」でディナー。高麗人参や鱶鰭の天麩羅等、凝った食事をトリュフご飯で〆る。高いが、美味い。

21:00 その顧客と銀座のクラブへ。嘗て僕が大好きだった女優や一流芸妓と浮名を流した、モテ・カッコイイ作家NO.1、「追いかけるな」I氏が隣の席に居て、彼が綺麗なホステスさんに熱心にして居た話に聞き耳を立てる…非常に勉強に為った。


12月22日(火)
11:00 近所のスタイルズ・ケイクスで買った「『皆さん、今年もお疲れ様でした』ケーキ」をオフィスに持って行く。

12:00 某ホテルの寿司店「N」で、今年も1年間大変お世話に為ったVIP顧客とランチ。静かさが不気味な中国マーケットや、石油のダブつく中東のアート購買事情等に就いて問われるが、この方の勘と判断力、世界を見る眼の鋭さには何時も感嘆する。

14:30 骨董屋さんの顧客を訪ね、四方山話。出されたお茶が非常に美味しくて、3杯も飲んで仕舞ひ、カフェイン摂取過多で死んだ人のニュースを思ひ出す。

18:30 青山銕仙会で開催された「第九回 広忠の会」を観る。今年のお能はこれで見納め。亀井広忠師のこの個人会には、毎回普段のお能には来ない様な綺麗な女性客が多くて、意味も無く緊張する(笑)。今回は観世銕之丞師とお父上亀井忠雄師のオトナでシットリとし一調「芭蕉」と、味方玄師がシテを勤めた幽玄極まる能「定家」。何しろ「定家」の広忠師の大鼓と声は気合十分で、大倉源次郎師の小鼓との相性も良く、可成り素晴らしくて感動。偶に思うのだが、京都の能楽師の舞は嫋やかで、この「定家」の様な曲にはピッタリ。素晴らしい舞台だった。

21:30 お能をご一緒した祇園町の元芸妓さんと、西麻布の和食「A」で食事。ハチ公ソースとメンチカツの絶品組み合わせに大鼓並みの舌鼓を打つが(笑)、僕達を只者で無いと感じたウェイター氏が「自分は元雀右衛門の弟子でした」と告白したので、非常に吃驚する。その後、甘いもんのラスト・オーダーに間に合わなかったので、別腹を満たす為に飯倉「C」に移動。クリスマス仕様の為数の減ったケーキ・ラインナップにブツブツ云いながら、パレスホテルの「マロンシャティイ」が如何に美味しいかを話していたら、ボーイのオヂサンが「有るよ」とまるでドラマ「HERO」の田中要次の様に呟いたので、それを注文…が、それはマロンシャティイと云うよりは「アイス・モンブラン」だったので、少し気落ちする。


12月23日(水・天皇誕生日
11:00 たねやの「栗月下」で一服頂きながら、溜まりに溜まったメールをiPadで片付ける。BGMはクリスマスっぽくSLAVAのCD。然し、クリスマスに浮かれる東京の街は、本当にムカつく。クリボッチな僕が云っても説得力が全く無いのは判って居るが、あのバカげた軽薄なノリには堪えられん…クリスチャンでも無い癖に。それに引き換え陛下のお誕生日のお言葉は、年々重きを増し踏み込んだ物に。平和を志すあの尊いお気持ちとお言葉を、安倍首相等は一体どう思うのだろう。

14:00 久し振りに神保町の街に出て、本屋を廻る。今日の年末年始本の収穫は、高階秀爾「日本人にとって美しさとは何か」、伊藤潤「天下人の茶」、島田雅彦「虚人の星」、辰巳出版「私たちが熱狂した 80年代ジャパニーズロック」、古井由吉「雨の裾」、宮沢章夫東京大学『80年代地下文化論』講義 決定版」、椹木野衣会田誠戦争画とニッポン」、坂口恭平「家族の哲学」。

20:00 麻布十番の中華「S」で、恒例の作家H氏、写真家S氏との忘年会。今回はもう1人のメンバー、ジャズ評論家O氏がNYに行って居て欠席なのが寂しいが、ゲストに元宝塚トップ・スターのOさん、シュー・メイカー&アーティストT氏、フランス文学研究者Y女史、写真家I氏をお迎えして歓談。世代とジェンダー、職業を超えた、知的でアーティスティック、プロフェッショナルで話題豊富な会は何時も楽しい。

24:00 H氏から送られたリンクで、オリンピックのロゴの選考メンバーに拠る、癒着に関する告発ブログを読む。ったく、日本は救い難い…競技場も結局あの体たらくだし。伊東豊雄氏が云う様に、ザハは今回の隈案と日本国に対して訴えを起こすべきでは無いか?


さて、今夜は聖夜…母親孝行で寿司でも食べようか。


ーお知らせー
*Gift社刊雑誌「Dress」にて「アートの深層」連載中。12/1発売の1月号は、世界的日本人「コスモポリタン」、「ヨーコ・オノ」に就て。