デザートに "The Figure and Dr. Freud" は如何?

現在「HAUCH OF VENISON」で開催中の展覧会「The Figure and Dr.Freud」を、カタログ作業を抜け出して密かに観て来た。

この展覧会は、現代美術の「始祖」ピカソジャコメッティの大御所から、ウエッセルマン、メイプルソープ、チャック・クロースの「中興の祖」、そしてお目当てのMutu、Currin、Piccininiの最先端アーティスト迄、31人の作品で構成される、俗に言えば「肖像画と人物画」展である。日本人ではアラーキーと川原直人の作品が出展されている。

そしてこの展覧会は、フロイト心理学の根幹である「性衝動」をテーマとし、人物表現の表裏に現れるアーティストの個人的、かつ外界と共有されるべき「性衝動」を、「フロイトの眼鏡」を通して観察すると云う試みなのだが、お世辞抜きに最近の企画展の中では秀逸である!!上記以外の展示作家名を挙げると、Salle、Daniel Richter、Eder、Picabia、Alice Neel、De Kooning、Condo、Mel Ramos等々なのだが、やはり見所はカッティング・エッジの作家作品だ。

何しろ一番嬉しく驚いたのは、「絵画」の復権である。90年代以降現代美術の主流は、絵画から立体、写真、ビデオ、インタレーションへとかなり傾倒し、絵画(特に具象)は少々肩身の狭い境遇にあった様に感じていたが、ここ数年例えばJenny Saville、Doig、Lucian Freudといった(大物も含めた)個人的に大好きな、力の籠もった具象現代絵画の評価が上がり、抽象・半抽象を含めた実力派の若手ペインターも出現している事が、この展覧会からも窺い知れる。

ベーコン展でも感じたのだが、「絵画の力」の復権は「アート力」の復権をも意味するだろう。コケオドシはもう通用しない。そういった意味でもロン・ミュニックや今回出展のピッチニーニに代表されるスーパーリアリズム・ファイバー彫刻なども、只単に超写実的人物表現のみに留まっていられない、新しい局面を迎えている事が確認され、非常に興味深かった。力強い「現代の絵描き」の作品を、これからも熱望したい。

ベーコン展を美味しく観た後は、この展覧会をデザートにどうぞ。この展覧会は8月22日まで。