男の嫉妬<>女性の本性。

夜とも為ると虫の声が響き、風も涼しい秋を感じさせる東京の今日この頃…が、巷間では恐ろしい事件が連発している。

その1つ、寝屋川の少年少女殺人事件の真の責任者は、あんな深夜の時間に平気で子供を放浪・外泊させる親では無いか?…この世には悪い奴・狂った奴が多いのだから。

が、オトナとしてそれにも況して恐ろしいのは、優秀な国際弁護士が慶大法科大学院生に局部を切り取られ、トイレで流された事件だ。

平日の朝、虎ノ門オフィスビルで起きた惨劇は、「男の嫉妬」の凄さを思い知らされる。歴史上阿部定の様に、女性に拠る行為は有っても、妻を寝取られた(のでは無いかと思う)男が、相手の男の局部を切り取る事は非常に珍しい。

そしてこの事件のニュースを聞いて思い出したのが、キム・ギドク監督の「メビウス」で有る(拙ダイアリー:「キム・ギドクの描く、男に取っての『最低最悪の悪夢』」参照)。男性器を失った弁護士が、この映画の登場人物の様な末期を迎え無い事を祈るばかりだ。

さて今日はお知らせから…諸般の事情で日本滞在が延びたのだが、そのお陰で来る9月8日(火)の19:00-21:00、インターネット・ストリーミング放送局「Dommune」に於いて、天才現代美術家西野達氏をインタビューする事と為った(→http://www.yamamotogendai.org/japanese/exhibitions)。

親しい友人でも有る達っつあんのインタビュアーとは、光栄至極…が、相手が達っつあんだけに、山本現代の山本裕子さんにも「変な事云ったら、ダメ、ゼッタイ!」と何処かの標語の様に諭されて居るのだが、とても確約出来ない(笑)。

色々と趣向も考えて居るので、皆さんのご来場・ご視聴をお持ちしております!

てな具合だが、今日は先ずは最近観た2つの展覧会の事から…先ずは表参道は「エスパス・ルイ・ヴィトン」で開催中のヤン・ファーブルの展覧会、「Tribute to Hieronymus Bosch in Congo (2011-2013)。

「ファーブル昆虫記」の著者の曾孫としても知られるこのアーティストの作品は、いつも僕を驚かせるのだが、それは今回も然りで、宝石の様に輝くスカラベ・モザイクを用いたレリーフ的作品は「愉楽の園」のボッシュへのオマージュと、母国ベルギーがコンゴに行った激烈な植民地政策批判と云う2002年以来のファーブルの主要テーマの1つで有るモティーフにも関わらず、豪快且つ繊細で美しい作品。太陽光の入るこのギャラリーに、誠に相応しい展覧会だった。

また四谷に在る曹洞宗寺院「東長寺」とそのアート・スペース「P3 art and environment」では、「回向ーつながる縁起」展が開催中。

東長寺開山400周年を記念して1989年に創立された「P3」は、ジョン・ケージや蔡國強等の作品の制作発表の場として存在して来たが、東長寺が今年新しく「文由閣」を建立した記念として、この展覧会を開催…出展作家はインゴ・ギュンター、オノ・ヨーコ等だが、特にインゴの作品「Seeing Beyond the Buddha」は素晴らしい作品だ!

石の上にインストールされ、自然光を集めた3500本以上の光ファイバーの切断面で描かれた仏像坐像は美しく輝き、展示会場の外に伸びたファイバーを観覧者が触れ動かす事に拠って、光の仏陀は揺れ動き、観覧者は仏との繋がりや「縁」(えにし)を実感出来る、一見の価値有る作品だと思う。

また友人のクリエイティヴ・ディレクターT氏に誘われて、後期の為の展示替え中の資生堂ギャラリーを訪ねると、阿部未奈子・佐藤翠・流麻二果の女性アーティスト3人展「絵画を抱きしめて」を観る。

残念ながら前期を観れなかったのだが、3人のアーティストと話しながら観た、後期の為に展示された個性豊かな作品群は「色」が主人公のインスタレーションで、各作家の個性と共に天井高の有るギャラリーを彩る…絵画の存在価値を再確認出来る、是非見て頂きたい展覧会だ。

そして一昨晩は母や従姉妹夫妻らと共だって、今月で休業するホテル・オークラ本館へ…「『This is Okura』300 Days Project 観世宗家特別公演」で有る。

家族や友人達と永年親しんだオークラ本館とももうお別れと為ると寂しい限りだが、それを記念する「平安の間」で行われたこの晩の演目は、「屋島」と「天鼓」のお仕舞二番に、山本東次郎師の狂言「鬼瓦」、そして宗家の能「紅葉狩」…小書に「鬼揃」と有る。

小次郎信光作、戸隠の鬼退治に想を得た「紅葉狩」は、前場の華やかさと後場の激闘、そして美女と鬼のコントラストが物凄い曲だが、それは恰も開演前の解説で増田正造氏が語った様に、間違い無く「女性の本性」の劇化に他為らない。

が、肝心の能は侍女達の舞が上手く合わず、ガッカリの出来…そして、矢張りお能能楽堂で観るに限ると云う結論に至った訳だが、それとは別にこの晩の「紅葉狩」は、「女性を安易に信じてはいけない」と云う教訓を僕に思い出させてくれた(笑)。

何故なら観能中、僕は最初に記した弁護士局部切断事件のもう一人の主人公で有る「大学院生の妻」の事を考えて居たからで、聞く所に拠るとその妻は夫が弁護士の局部を切断する間、ずっとそれを側で見て居たらしい…。

聞くからに恐ろしい光景だが、その間に助けも呼ばなければ止めもしない処に、女性と云う生き物の或る種の真実が有る様にも思う。

男の嫉妬と女の本性…何方がより怖いかは、云う迄も無い(笑)。