ライト@ライト。

昨日はフランク・ロイド・ライトの展覧会「From Within Outward」をグッゲンハイムに観に行った。

ライトの展覧会をライトの建築物内で観る、これぞNYの醍醐味。元々ライト・マニアで興味を持っていたのだが、浮世絵のディーラー&蒐集家としてのライトと、日本趣味のある建築家としてのライトを知ってからも興味は増すばかりであった。今回の展覧会は、図面、モデル、広告等でライトの遺業を回顧するものである。

何しろこの建築家は気難しいロマンティストで、その作品もピンキリとも云えるのだが、特に建築素人の筆者が最も心を奪われたのは、まず美しいモデル。マジ「欲しいなー」と思った。実現しなかった(「しなかったから特に」かも知れないが・・)作品が実は素晴しく、プラネタリウムや水族館のデザインには、感心&感動…夢一杯、遊び一杯なのである!!

帰りのミュージアム・ショップで見つけたLEGOの「グッゲンハイム美術館」を、最後まで買っちゃおうかと真剣に悩んだ位だ(買わなかったけど。徹君、ゴメン)。また、彼のドローイングや設計図、モデルを見ていると、当ったり前の話だが、世の中のモノは全て「直線と曲線」で構成されていて、しかし彼の作品はその事実を改めて思い出させる程、直線とカーブの使い方が絶妙なのである。何か構成主義のアートを観ている様だった。

ライトと日本の繋がりは深く、周知の如くだが、展覧会にも関係する私的且つ日本美術的事項を、2つのみ挙げておく。一つはご存知「帝国ホテル建設」で、筆者の遠戚がその頃帝国ホテルの支配人をしていた事も有り、興味津々。当時の事情をもっと知りたい方は、これまた親類作家山口由美氏の「帝国ホテル・ライト館の謎」(集英社新書)に詳しいのでご参考まで(宣伝、宣伝!)。

もう一つは、ちょっと間接的でまどろっこしいのだが、「プライス・タワー」である。

この「プライス」とは、最近メッキリ「和楽」などで常連となった、若冲コレクターでお馴染みのジョー・プライス氏のお父上の事で、プライス氏は石油パイプラインで巨万の富を得、その本社ビルの設計建築をライトに依頼したのであった。

ご子息である所のジョー氏は、この父上からお金を貰ってスポーツ・カーを買う為NYに旅した時に、偶々骨董屋で若冲を見つけてしまい、その金を全部使ってその掛軸を買ってしまった…これが氏のコレクションの始まり。「プライス・タワー」の図面や写真を見ていると、「タワー」が何故かプライス・コレクション中の「スックリ立った、若冲の鶴」(「双鶴図」や「群鶴図」参照)にも見えてくるのだが…考えすぎか(笑)。ライトは、つくづく日本と縁深いのであった。

余談だが、同時開催の「The Sweeny Decade」という展覧会も中々良かった。ポロックやデ・クーニング、タピエス等に混ざって、山口長男と菅井汲の大名品が展示されている。1959年の彼等の作品は本当に力強い。こういう時に何となく誇らしくなるのは愛国心の成せる業か。照屋勇賢氏も最近NEWSWEEK誌で「世界が尊敬する日本人」に選ばれたと言うニュースも聞いた。

世界で戦う日本人アーティストを誇らしく思うぞなもし。