At U.E.S. & L.E.S. on SAT.

オークションの翌日の土曜日は、一日中「寝たきり」に為りたかったのだが、そうも行かず、昼過ぎから、筆者が持っている「日本クラブ・カルチャー講座」の生徒さんを対象に、レギュラーで行っている「METギャラリー・ツアー」をした。今回は勿論、「Art of the Samurai」展ツアーである。

10名程の生徒さんがロビーに集まり、早速特別展ギャラリーへ。土曜日は生憎の雨降りであったが、METは大混雑で(もしかしたら筆者9年間の滞NY中で、最も混んでいたかも知れない)、これは恐らく今METに来ているらしい、6点の「フェルメール」のせいであろう。しかし、日本美術関係者としては、この内の何%かでも「サムライ展」を観てくれれば、と期待してしまった。

さて特別展会場は、内覧会で観ていたので知った空間ではあったが、やはり通常開館時となると一般来館者で溢れ、その反応を見るのも面白い。日本美術をやっていると、コレクター、業者や美術館等、どうしても「プロ」のお客が多くなるのだが、このレクチャーの生徒さん達も含めた、日本美術と初めて身近に接する人達とのコミュニケーションも、スペシャリストにとっては実は非常に大切なのである。

埴輪や国宝「赤革威鎧」、太刀・刀・短刀・脇差の見分け方(皆さん、判りますか?)や、時代・産地・刀匠に因る「姿」「刃紋」等の差異、また鑑賞のポイント等を説明しながら進む。生徒さん達も、刀の美しさ、鎧・兜の現代的・芸術的造形に、驚愕の声を上げた。

特に「変わり兜」のコーナーでは、質問も相次ぎ観る興奮もピークだったのだが、その時一人の白人男性が近付いて来て、話しかけて来た。聞くと彼は雑誌「New Yorker」の取材カメラマンで、このサムライ展を取材しに来たのだが、「日本人らしき」我々が余りに熱心に観賞し、熱く語っているので、興味を惹かれたらしい。彼が言うには、「日本人でも」この展示に感動している、と云う様子を写真に撮りたいとの事だったので、皆の了解を取った上で許可をした。掲載されたのを見た方が居らしたら、どうぞお知らせ下さい!

そうこうしていたら、当展覧会の責任者である小川盛弘氏と、会場でバッタリ。氏の解説を「無料」で聞いた生徒さん(&筆者)の幸運はこれに留まらず、小川氏の招待で館4Fの、大きな窓からのセントラル・パークの紅葉も眼に眩しいVIPルームにて、「アフタヌーンティー」をご馳走になった。そこでも小川氏のレクチャーは続き、生徒さん皆大満足であった。小川先生、有難う御座いました!

夜はと云うと、L.E.S.(ローワー・イースト・サイド)の、知る人ぞ知る小劇場「Abrons Arts Center」での、これも知る人ぞ知る「The Citizens Band:The Debt Rattle」を観に行く。

この劇場は、本当の意味でのL.E.S.(Spring & Pitt St.)に在り、アヴァンガルドな演目をメインに活動している、如何にも「現代舞台芸術」ステージで、ファンド・メンバーにBetty ParsonsやAndy Warholの両ファンデーションが名を連ねているのも頷ける。またこの「The Citizens Band」には、一緒に行ったA姫に因ると、ファッション系の血脈が在り、また「ダイチ・プロジェクト」とも関係があるらしい。

演目内容は所謂「キャバレー・パフォーマンス」で、バンド、音楽、歌、ダンス、アクロバット、そして「美女」がメインとなる。云ってみれば筆者も大好きな、パリの「クレイジー・ホース」や「ムーラン・ルージュ」的エンターテイメントだ。出演者は、筆者が知っている名前は皆無と言ってよいが、有名ファッション・モデルのKaren Elsonや、レニーの娘であるZoe Kravitz等、話題性のある「美女」が出演していた。

さて舞台はどうだったかと云うと、正直「?」であった。内容は「ダンス・マラソン」中のキャバレーで様々な事(政治的・経済的テーマを含む)が起き、例えばミュージカル仕立ての歌の歌詞にも、シニカルなテーマを含んだ物も有ったりする。歌と踊りに混じり、鎖やロープを使ってのセクシーなアクロバット空中ダンスも有りそれなりだが、勿論「Cirque de Soleil」には遠く及ばない。悪く言えば全体的に「大人の学芸会」的であった(一寸キツイか)。

が、しかし劇場は満員御礼で、大盛り上がり。そして筆者が最も眼を奪われたのは、残念ながら舞台では無く、開演前の客席で社交する、大人数の美しい女性達であった(笑)。因みに男性達も「業界」ぽくお洒落な人が多かったが、何しろこれだけの数の美女達は、ちょっと壮観で、目がキョロキョロしてしまった(再笑)。

どうも彼女(彼)達は出演者の友人らしく、モデル仲間等が観に来ていた様である。古美術とはエラく違う世界で、舞台アートとしてのクオリティは 「?」だが、色々な世界が有る物だと、この孫一、感心しきりであった(笑)。

一日でU.E.S.での「サムライ・アート」と、L.E.S.の「キャバレー・ミュージック」。ニューヨークらしい土曜日でした。