「日本のサムライを語る会」。

昨晩は、ダウンタウンの美味しい和食屋「M」で開かれた、「日本のサムライを語る会」に参加して来た。

この会は、某国営放送局NY支局のU女史の企画なのだが、要は現在混迷を極める日本という国を憂い、異国NYで「命を懸けて」頑張る日本人の「サムライ」達(スゴイね:笑)から、その日本文化観(と酒)を通して打開策を探ると云う、途方も無い意図の飲み会であった。

出席者はU女史の他に、今NY、いや世界で大評判の、メトロポリタン美術館「Art of the Samurai」展の企画担当キュレーター小川盛弘氏、OMA・NYパートナーの建築家重松象平氏、同国営放送エクゼクティヴ・プロデューサーのK氏、そして筆者夫婦の6人である。

さてこのU女史は、嘗て紅白歌合戦の司会も務めた事も有るので、ご存知の方も多いと思うが、何しろ気さく且つ全く気取った所の無い人で、そして何よりもお酒が大好き。こうなると場が盛り上がらぬ訳が無い。先ずはU女史と小川氏に拠り、慎重に吟味された日本酒で乾杯、メンバーも皆大人しく飲み始める。

がしかし、この「M」という店は料理もお酒も非常に美味しいので、皆段々と口数も増え、話も盛り上がる。小川氏による「サムライ展」の質疑応答コーナーでは、例えば武士にとっての刀は「人を殺す武器」では無く、「最後に自分を守る武器」なのであるという考え方や、巨大な変わり兜の意味は、鉄砲の噴煙に因って視界が悪くなった戦場に於いて、味方が大将の位置を知る為だと云う事など、本当に勉強になった。

実はこの間の月曜日に、筆者は仕事で行けなかったのだが、METの大講堂で全世界から日本の刀剣・甲冑分野の学者や修復家を招いての、大シンポジウムがあった(勿論一般の人も参加できる)。

行った人の話によると、講堂は2階まで超満員で、700人位の人が来たらしい。レクチャー終了後には、多くの人々がステージに押し寄せ、質問や賛辞を送ったそうで、これはMETに云わせると、ゴッホ展の時のレクチャー以来だそうだ。さてここで問題は、この様な最高級の展覧会やレクチャーが、日本では恐らく実現不可能だと云う事、そしてもし実現したとしても、ここまで一般人を含めた人が集まるかどうか。

これは昨晩、皆で夜中まで語りに語った、様々な「日本文化」や「日本美術」、「愛国心」や「武士道」等の話題を通じての、ある種結論的な「危惧」を示しているのだが、それは現代日本人の「好奇心の無さ」「批評文化の無さ」である。この事は数日前のダイアリーでも話題になったので、敢えて繰り返さないが、本当に深刻な問題だというコンセンサスを得た。

余談だが、この「M」の超美人のママさんが、妻の叔父の友人だと云う事が偶然判ったりして、毎度思う事だが、世界は狭くて「ご縁」で一杯なのだった。会の行方はと云うと、余りに個性の強い人間の集まりだったので(笑)、最後の方になると初対面同士でも「SHUT UP!」等の英語や怒声も飛び交い、話もドンドン熱くなり、酒も驚くべきペースでドンドン進んだ末、酔っ払った為に同じ話が何度も繰り返されたりもした(笑)。いや、皆さんホントに飲みました…何本「幻の酒」が空いた事か(再笑)。最後は筆者を除き、皆酔っ払い状態で「日本の将来」を憂い、解散となった。

いやはや、非常ーに楽しく有意義な「憂国の会」であったが、皆さん、今朝大丈夫だっただろうか…そう云った「憂い」もあるが(笑)。