火山に恋して: "Volcano Lovers" @ Ise Cultural Foundation。

昨晩は、ソーホーに在るIse Cultural Foundationで始まった、「Volcano Lovers」展のオープニング・レセプションに行ってきた。

この展覧会は、若手現代美術キュレーターの渡辺真也君が暖めてきた展覧会で、日本とアイスランドのミニマル・アートを紹介する試みである。同じ地球に有りながら、殆ど歴史的には関わりが無く、ユーラシア大陸の両極に存在する二国間の共通点は、「火山」と「島国」であると云う観点から、その火山地形から生ずる、噴火や地震等の自然現象の影響の下に、歴史上多大な影響を受けてきた両国の文化・伝統、そして其処から産まれたミニマル・アートが展示されている。

出品作家はアイスランド(名前を書くのも難しい…:笑)・日本共各4人ずつで、日本からは安部典子、嵯峨篤、斎木克裕、照屋勇賢各氏の作品が出品されている。

ISEに着くと、アイスランド側共同キュレーターの方と渡辺君が出迎えてくれ、アイスランドからの作家達とも挨拶を交わす。会場の展示はスッキリとして、流石「ミニマル」な雰囲気。展示作品もインスタレーションが中心となっているが、バラエティに富んでいる。

筆者は、アイスランドの現代美術(と云うか、如何なるアイスランドの美術もだが)を、全く初めて観たので非常に興味深かったのだが、実は筆者が最も目を惹かれた作品は、斎木克裕氏の写真作品「DEVIDE #3」であった。斎木氏はこの作品の為に、作中の山に自身で実際に登ったそうで、ピンと張り詰めた空気と、その薄さが作品から感じられる程美しく、「DEVIDE」された切り口も、観者に作品の「鋭さ」を強く印象付けている。

さて渡辺君によると、近年の「プレート・テクトニクス」研究に因り、アイスランドは北アメリカプレートとユーラシア・プレートの割れ目から、そして日本は太平洋・フィリピン・ユーラシアの3つのプレートの接合箇所の上に形成されている事が解かり、「火山」と「島国」と云う共通地形を持つ両国は、それ故高い山々や深い海溝を持つのだそうだ。そして此処が肝要なのだが、アイスランドに於ける「アサトゥル」や日本に於ける神道等に見られる様に、両国の文化ともこう云った自然環境を背景とした「アニミズム」の影響が強い。

日本に於ける神道が、アニミズムを起源としている事は云うまでも無いが、わが国日本の豊かな自然、四季、豊富な水、国土の70%を占める山地森林(今はもっと少ないか・・)等々の環境を作り出しているのが、火山地形の恩恵だとすれば、これは非常に興味深い。何故なら「自然に帰る」と云う神道の根本思想(死んで焼いた後、骨は骨壷に入れず、お墓の下の土に撒く)が、生態的輪廻思想だけで無く、地震や火山噴火、台風等の「日本的」(勿論日本だけではないが)自然災害による、「破壊と再生」から産まれたとも云えるからだ。

こう云った事からも、今回この展覧会の一つのコンセプトである「自然に拠る創造」、筆者的に云い換えれば「自然再生の力」を、観者はジックリと考えさせられ、そしてそれは、渡辺君がこのショウのタイトルに引用している、スーザン・ソンタグの小説「The Volcano Lover(火山に恋して)」に有る様に、「私たちは戻ってくる。私たちは帰ってくる。」と云う事にも繋がるのかも知れないと思った。

昨晩のレセプションには多くの人が訪れ、アーティスト、キュレーター等の友人達との会話も弾んだ。こう云った元気の有るレセプションに行くと、NYのアート環境の素晴しさ、また「好奇心」の強さに心を打たれる。エネルギー全開の展覧会レセプションであった。

この展覧会は来年1月2日まで開催。