「先笄の黒髪」。

今日は朝一の飛行機で、関西へ。空港近くで顧客に会い、数点の作品を観て査定し、無事オークション出品決定。その後はアポの合間を縫って、近くの正木美術館で開催中の、「朱と墨―根来が繋いでくれた縁」展を観に行った。

この展覧会は、所謂「プロ好み」の地味目の企画だが、狭い館内には素晴らしい出品作が犇めく。その中でも、例えば重要な根来作品の数々、大燈国師の国宝墨跡「渓林偈」や雪洞筆「瓜に虫図」軸、延いては根来作品の横に所々佇む、須田悦弘作の作品「白椿」「雑草」に迄も、その出品作の卓越したクオリティを、容易に見る事が出来た。

館を出た後は、重い手荷物を引き摺りながら、電車を乗り継ぎ、京都入り。個人コレクターの元を訪ね、売却希望作品を拝見、数点ゲットの後、顧客と人で溢れる木屋町に繰り出した。「丸鍋」、アワビの唐揚げ等々のご馳走を、「また」たらふく頂いた(笑)。

食事後は祇園に繰り出そうとしたが、祭日の今日は、殆どの店が休みである事を思いだし、同じ祇園お茶屋「M」に向かう。この「M」は、古くは白州次郎・正子夫妻、最近では海老蔵も遊ぶお茶屋である。祭日の花街の夜は、お茶屋位しか開いていない…。

「M」に上がると、齢90を優に越えた「お母さん」が挨拶に現れ、取り敢えずバーで一杯。祭日なので、顧客御贔屓の舞妓さん達も中々捕まらなかったが、我々の「日頃の行い」が良いせいか(笑)、驚くべき奇跡が起きたのだった!

それは、今「衿替(えりかえ)」中の、美人の誉の高い「豆ちほ」さんが来てくれた事だ。「それの何処が、そんなに興奮する程ラッキーなのだ?アホちゃうか…」 と思われる方も多いと思うので、此処でご説明を。

1.「衿替」とは、舞妓から芸妓に変わる、たった二週間の間の事で、その期間舞妓さんは、「先笄(さっこう)」という特殊且つ、ゴージャスな髪型を結う。この期間の売れっ子舞妓に会えると云う事は、「蒼井優に逢える」程、奇跡に近い。

2.「豆ちほ」さんは、噂に由ると藤十郎が狙っている程の、「美人」である。

3.そして極め付けは、その「豆ちほ」さんが、何と「黒髪」を舞ってくれると云うのだ!!

「黒髪」は元来地唄舞であるが、井上八千代の振付に依り京舞となった。「逢えない男を想い恨んで、床の枕を涙で濡らす」と云った内容で、座って裾を乱した侭クルッと廻ったりする、特殊な、しかしかなり色っぽい振付の踊りで、この「衿替」の時期に踊られる。只可愛かった「少女」が「女」になる瞬間を、旦那となる男達に見せるのである。そしてそれを観る男達は、唾をゴックンする(笑)。

座敷に場を移し、「豆ちほ」さんの「黒髪」を観た我々も、勿論「唾ゴックン」したのだが、何れにせよ、その素晴らしさは筆舌に尽くせないので、此処では省略する(教えてあーげない:笑)。イヤー「豆ちほ」さん、本当に綺麗でした…。「豆ちほ」さんが舞終わった後は、夜中過ぎ迄飲み、夢見心地で「M」を後にした。

京都、大好きである(笑)。