「大倉會」@セルリアンタワー能楽堂。

昨日は、セルリアンタワー能楽堂で開催された、「第三回 大倉會 研究公演」へ。

この会は、小鼓方大倉流宗家及び大鼓方大倉流宗家預りの、大倉源次郎先生が主宰されている、能の「囃子」の研究会である。先生に依ると、2-3月は所謂「能閑期」(笑)だそうで、4月以降の「能繁期」前にこう云った教育的公演を開催するには、最適だそうである。

会場ロビーでは、旧知のアーティスト、藪内佐斗司さんや北村真一さんとも再会し、華やかな雰囲気である…そしていざ、満席の堂内へ。

第1部は、源次郎先生が解説する「能楽囃子概説」、楽器の紹介、掛け声や楽譜、延いては観客全員参加の「エア鼓」(エアギターの小鼓版:笑)での「三番三」等、素人にも大変興味深く勉強になる内容であった。

例えば、「雛祭り」の「五人囃子」の飾り方の話。これは、右から「謡」「笛」「小鼓」「大鼓」「太鼓」と並ぶのだか、忘れがちである。そんな時には、5人を右から「持っている楽器が、口から離れて行く順」に並べると正しい…則ち右から、謡(「口」が楽器、扇子を持っている)、笛(口の直ぐ下)、小鼓(左肩)、大鼓(左腰)、太鼓(足元)と云う具合である。

源次郎先生は、解説トークも非常にお上手で、ご自分でも「囃子方」ならぬ「噺方(はなしかた)」と仰る位だが(笑)、気さくで時には駄洒落をも交えながら、驚く程判り易く、観衆の心を掴む。また「能の租」とも云われる秦氏や、大和猿楽等の能楽史をも絡めた、素晴らしい内容であった。

休憩時間に外に出ると、見覚え有る、紋付き袴姿の男性が…梅若玄祥先生の元で内弟子をしている、川口晃平さんであった!川口さんは、「沈黙の艦隊」等で有名な漫画家、かわぐちかいじ氏のご子息、数年前ニューヨークで飲んで以来の、嬉しい再会であった…お元気そうで何より。

第2部は、金春・観世両流派のシテ方との連調、舞囃子、一調そして半能の舞台だったが(因みに、今をときめく内田樹先生の奥様、小鼓方大倉流の高橋奈王子氏も連調「天鼓」に出演)、その中でも素晴らしかったのは、何と云っても梅若玄祥師の舞囃子「三輪」であった。

この曲には「素囃子(しらはやし)」と云う小書が付いており、大和猿楽から産まれた重要な能「三輪」の、最もシンプルな形の舞である。そして梅若玄祥師の舞には、何時も驚かされる…面等無くとも舞手は「三輪明神」に確り見え、極限迄贅肉を削ぎ落とした舞は、非常にゆっくりとした足運びと共に、「能の原初」を観客の前で顕にしたのだった。

今回の様な研究公演は、本当に素晴らしい試みで、是非とも学校教育にも取り入れて頂きたい。何故なら日本の学校の音楽室に掛かる「楽聖」の肖像画は、未だにハイドンモーツァルト、ベートーベンで、「世阿弥」や「金春禅竹」は居ないからだ…(日本人では滝廉太郎が精々)。

「日本の」伝統音楽を見直す、良い機会に為るに違いない。