ギフト。

昨日の朝、岳父が日本へ帰って行った。

20数年振りのNY滞在は、岳父にとっても色々な意味で大変だったと思うが、アーティストとしては、かなりエキサイティングな想い出になったに違いない。これが今後の制作活動にどう生きるか、今から楽しみで有る。

その朝、妻が岳父をJFKまで送りに行ったら、以前から知ってはいたのだが、同じ便で帰国の茶人千宗屋氏、日本古美術界の「東の横綱」、ロンドン・ギャラリーの田島充氏がいらっしゃり、岳父をラウンジまで先導して頂いた様だ。余りに「濃い」ANA9便の「連客」なので、もし堕ちたりしたら、こりゃ大変だ(笑)!と冗談を云ったりしていたのだが、無事着いた様子…これで日本美術界も、安泰である(笑)。

そして、昨日今日と「中国美術」のオークションが行われているのだが、この売れ行きが信じられない位に、モノスゴイ。この事を書きたいのは山々なのだが、本日夕方過ぎ迄オークションが続くので、その驚くべき結果は明日お知らせする事にする…乞うご期待。

さて昨晩は、オークションも終わり「ASIA WEEK」も終盤を迎えた事も有って、NY在住若手目利き古美術商の柳孝一氏の声掛けで、年も程近い、日本からの若手美術業者を集めての食事会が行われた。

メンバーは、柳氏を始め、ロンドン・ギャラリーの田島整氏、京都の大御所「思文閣」の「神さま」と山内君、日本橋の観賞陶器の老舗「壺中居」の中島氏、京都の「川崎美術」の息子さんで、仏教美術の名店「甍堂」で修行し最近独立した川崎君と筆者。そしてスペシャルゲストとして、欧州ツアーから帰国途中の、田島氏の友人の女子プロゴルファー、そしてその姉妹も有名プロゴルファーと云うRさんの、計8名。昨晩のメンバーは、何しろ皆「ウルサ方」なので最初は緊張感が漂ったが、酒も入り食事も進むと徐々に口数も増え、雰囲気も和やかになる。しかし、全員どこまで生き残れるか…(笑)。

因みに今回のダイアリーでは、皆さんの「了解」を得て、Rさん以外は「実名登場」ですので悪しからず…そしてもう一点、今読まれている方は「思文閣の『神さま』とは何のこっちゃ」と思われていると思うので説明すると、「神さま」は「神 健輔(かみ けんすけ)」さん(勿論本名)と云う名前で、本人に云わせると、銀行や病院等で「『神』様ー、『神』様ー」等と呼ばれるのが、子供時分から本当に恥ずかしかったのだそうだ…(笑)。「志村けん」全盛時には、さぞかし大変な苦労をされたのでは無いだろうか(笑)。

本題に戻る。先ず食事は、チャイナ・タウンの「ORIENTAL GARDEN(福林門酒家)」で。柳氏がこの店の常連で有る事から、彼に全ての注文を任せたのだが、何しろご馳走のオン・パレード。春巻などの点心からピータン、鶏、牛、炒飯など全て旨いのだが、特筆すべきは「ミル貝」。最初は「刺身」で食べ、その後それを「出汁シャブシャブ」で食べる。そして食べ終わったら、そこへラーメンを入れ、貝の旨みが効いた出汁スープで食す…もう「ヘヴン」である(笑)!!

これ以上食ったら死ぬ、と云う所まで食べた後はカラオケに決定。しかし此処で「壺中居」中島氏が脱落。残り7名でミッドタウンの居酒屋カラオケ・ボックス「RIKI」へ。しかし、これからが凄かった。

何しろ「ORIENTAL GARDEN」で、ビールや紹興酒をグイグイ呑んでいた連中なので、それまで一応の「礼節」を保っていた我々も、少々羽目を外し始める。特に「先輩・後輩」や「主人・従業員」の上下関係に於いて、21世紀の今も理不尽な程喧しい日本古美術業界に於いては、例えば自分の方が年齢が上でも、「若」と呼ばれる様な主人筋の、まだうら若き「お孫さん」には、全面的に気を使わねば為らない…自分が「若」の後で歌を唄ったり、「リモコン入力操作」をさせる等、もっての外なのである(笑)!

あぁなのに川崎君、やってしまいました…。カラオケ開始直後、山内君に「リモコン入力」をさせてしまった事が、先輩諸氏に火を付けてしまったのだ(笑)。山内君はロンドンに11年も住んだ、未だ20代後半のイケメン古美術商なのだが、実は「古門前『思文閣』」の会長のお孫さんなのである…。「筋、通せよ!」等と叱咤された後は、川崎君働く、働く(笑)。

誤解が無い様に云っておくが、勿論「筋通せよ」等は「冗談」で云っているのだけれども(しかし半分本気の様な所が、「イケズ」である…京都人は本当に難しい)、川崎君は本気で恐縮し動き回る。しかしこれだけ云われるのは、実は川崎君が皆に愛される性格の持ち主だからなので有って、彼はこの「いじられキャラ」を「誇り」に思った方が良いし、両親と神様(健輔氏ではない:笑)に感謝すべきである。

そしてカラオケも絶好調…「うるさ方」の集団は皆、本当に歌が上手い。そこへ、この店で働いているMAKIちゃんが登場。彼女が部屋に入ってきた瞬間から、筆者は「この子は、絶対に歌が上手いに違いない」と「目利き」していたのだが、それが見事に的中、「上手い」所の騒ぎでは無く、物凄いレヴェルであった。聞けばMAKIちゃんは、特に歌の為にNYに来た訳では無く、唯カラオケが好きなだけだとの事だったが、「絶対に歌の勉強をすべきである」と、我々「うるさ方」全員の意見は一致した。

川崎君の「愛される性格」やRさんの「ゴルフ」、山内君の「環境」、MAKIちゃんの「歌」の様に、神様(健輔氏ではない…しつこいか:笑)は、全ての人間に、自分でも時折中々気付かない何らかの「ギフト(才能)」を与えてくれている。そして、その「ギフト」に気付いた者だけが、自分の人生をより充実した物に出来る…爆風スランプの「大きな玉ねぎの下で」や桑田の「月」を唄いながら、そして彼らの歌を聴きながら、そんな事をふと感じていた。

川崎君、Rさん、山内君、MAKIちゃん…貴方達の「ギフト」は、もう見つけられているかも知れないし、見つけられるのを「今か今か」と待っているかも知れません。そしてそれを見つけ、育てるには自分を鍛える事しか有りません。

嘗て僕らオジサン達が、そうした様に(本当?本当です)。