Your History Is Not Our History@Haunch of Venison.

「Haunch of Venison」で現在開催されている、上記展覧会へ行って来た。

この展覧会は、David SalleとRichard Phillipsの二人の現代美術家が構成する展覧会で、この二人の「世代の異なる」アーティストが、各々活動していた「1980年代のニューヨーク」で制作されていたアートを展示する事に拠って、その時代性を読み取ろうと云う企画である。

出展アーティストは、バスキア、クレメンテ、ゴーバー、フィッシェル、ジェニー・ホルツァー、ナン・ゴールディン、リチャード・プリンス、シンディ・シャーマン、そしてジュリアン・シュナーベル等総勢20作家で、展示を観ると、その作家の作品だと一目で判るモノも有れば、そうで無い作品も多々有る…この点もこの展覧会の面白い所かも知れない。

さてエレベーターを降りると、真っ先に「桜」の木らしきモノが描かれた、巨大な絵画が目に飛び込んでくるのだが、これはシュナーベルの作品「Rebirth I(The Last View of Camiliano Cien Fuegos)」('86)。逆さに描かれた満開の「桜」に、二つの眼が大きく描かれている全く奇妙な作品だが、インパクトはかなり強い。話を聞くとシュナーベルは、歌舞伎のセット(そう云えば、舞台上の桜に見えなくも無い)や緞帳をイメージして、この作品を制作したらしい。

そのシュナーベルに先ず度肝を抜かれたのだが、気を取り直して進むと、今度はジェフ・クーンズの'88年度作品「Buster Keaton」に出会う。この作品は、馬に乗った「等身大」の、アメリカの古き良き時代の有名コメディアン、バスター・キートンを木彫彩色で「キッチュ」に表現しているのだが、未だクーンズの個性的表現は余り見受けられない。

そしてホワイト・ウォールに眼を移せば、クレメンテやサーレの大作、ゴーバーの「シンク」等が掛かるが、正直この'80年代と云う時代は、筆者に取っては「芸術的にどう云う時代なのか」非常に解かり辛く、良いのか悪いのかも判断し辛い…どうした物か(笑)。

それでも、例えばクーンズのブロンズ作品「アクアラング」('85)や、フィッシェルの「The Old Man's Boat & the Old man's Dog」('81)、シュナーベルの「The Jute Grower」等は見応えも有り、かなり気に入った作品だったのだが、展示作家の殆どが40年代後半から50年代生まれだと云う事からすると、80年代と云う時代は彼らの所謂「黎明期」若しくは「暗中模索」の時代で有ったとも云えるだろう(死んでしまったバスキアは措いておいて)。

そこが作品的に中途半端な感じを持たせるのかも知れないが、しかし「暗中模索期」の作品だからこそ、彼らが目指していた当時の芸術的方向性を掴む事が可能とも云えるし、その上で「到達点」としての彼らの「現在」を読み解く事も、可能になるのかも知れない。

この展覧会は、5月1日まで開催中。