「新と旧」、「今と昔」。

昨日の朝は、一昨晩の疲れが取れずに、昼前に起きた後、近所の「松翁」で蕎麦。
そして午後早く、重い体を引き摺って洗足池に在る、「GALLERY COCON 古今」へ向かった。このギャラリーは、結核治療を中心とする内科医、S氏の病院「洗足池病院」のエントランスに併設されたギャラリーなのだが、筆者が訪ねてみようと思う以上、此処が只の画廊では無い事は、想像に難くないだろう。

友人の武田菜種さんの紹介で、佐藤先生に先ずお会いする。ギャラリーは白壁のシンプルな造りで、川俣正小林正人の作品が掛かるが、ミソは此れからで、ショウケースに眼を遣ると、藤原期の「木造護法神立像」や、前漢の「加彩女子陶俑」等が展示されているのだ。
そう、この優しい語り口のS先生は、古美術と現代美術の両方をコレクションされているのだ。

2階に上がると白髪の大作や「李朝白磁壺」、李禹煥の「フロム・ポイント」や「二月堂焼経」等、そして3階には、観覧後3人で「収集の喜び」を熱く語った茶室風談話室も有り、建物も含めて、趣味の非常に良い、一本「眼の筋」の通ったコレクションであった。

S先生、菜種さんと再会を約して辞すると、その後は根津美術館で始まった、「能面の心・装束の華 物語をうつす姿」展へ。

前日に格調高い「狂言面」を観たので、期待して行ったのだが、気に入った作品は、「十六」と「万媚」の能面二面。この池田家伝来、18世紀出目の二面は、両作共に出色の出来で有るが、特に「万媚」(拙ダイアリー:「能の面」参照)は、生々しくも美しく、欲しいっ!と思わせる秀作であった。

観終わり、根津を後にしたのだが、夕食の約束迄時間が有ったので、てくてく歩いて、乃木坂の行き付けカフェ「L」にて休憩。

そしてディナーは、友人達と銀座一丁目に在る「予約の取れない」落合シェフのイタリアン、「ラ・ベットラ」にて。

昨晩のスターティング・メンバーは、公共放送局のU女史と、隠れ優ちゃんファンの某化粧品会社CDのA氏。Uさんとは、彼女が日本に帰国してから初めて会うのだが、相変わらず元気そうで安心する。

非常に美味しいアンティパスト(チーズのソテー、穴子や鴨など)を食べながら、日本の将来に就いて語っていると、Uさんの同期のKさん、14代続く某企業家のM氏が次々と到着…ウニや桜えび、カラスミのパスタ、ポーク・ソテーのバルサミコ・ソース等の絶品料理と共に、ワインもどんどん空き、宴も盛り上がる。

そして滔々「かいちやう」もお稽古を終え合流し、役者が揃った!

長い歴史を持つ家の「跡取り」としての悩み、「恋バナ」や「即興的駄洒落」も連発され、大「ストレス発散大会」の体を呈し始めたのだが、途中ニューヨークで留守番中の妻に電話した時に、国際電話にも拘わらず、酔って長々と「相談」を始めたメンバーが出たりと(笑)、閉店時間を大幅にオーバーした侭、爆笑最高潮の内、夜中前に解散。

解散はしたものの、M氏、A氏とは「もう一杯」と云う事になり、山の上ホテルのバーに移動…浮世絵や鍔の美術館もやられているM氏と共に、日本文化の保護と啓蒙を熱く語ったのだった。

新旧の「美術品」と、今昔の「ご縁」に恵まれた、有難くも楽しい1日であった。