「クリーム・ソバ」と、「クリスティーズの勝利」@ロンドン。

暑い…暑過ぎる。

今の季節に日本に居る人からすれば、「マダマダ甘いぜ。」と為るのだろうが、今日のニューヨークの予想気温は33度。このまま体の脂肪も溶けてしまえば良いのに…(笑)。しかし、オフィスの中は寒すぎる…どうすれば良いと云うのだ。

先ず昨晩は、友人のクラシック・ギター勉強中の「肉食系美少年学生」のS君と、今彼がお手伝いをしている作曲家のK氏との男3人で、ミッドタウン・イーストの和食屋で食事。K氏と、現代美術家であるK氏の奥様とは、今まで色々な場所で何度かお目に掛かって居るのだが、会食は初めてだったので、楽しみにしていたのだ。話をしてみると、K氏と筆者とは全くの同世代、しかも江戸っ子でゲイにモテル点も共通(笑)、音楽や政治の話迄楽しい一時を過した。

ここで質問…皆さんは「Cream Soba」と云うデザートをご存知だろうか。昨晩行った和食屋で、締めの「かけそば」や「せいろ」を食べた後、頼んだデザート・メニューにその「Cream Soba」と云う聞きなれない物が載っていたのだ。

男3人とも、「この『クリーム・ソバ』とは、一体何なのだ…」と想像力を膨らませながらも、頭の中は「?マーク」で一杯だったが、そもそも好奇心の強いS君や筆者、それにK氏も「ウーム、人生一回だけなら食べてみても良い」と仰るので、それならばこの「クリーム・ソバ」を注文してみようと云う事となり、さっきから余り態度の良くない、ちょっと「強面」のウエイトレスを呼んだ。

すると、彼女は「こちらは只今、品切れなんです…。」と何故か不機嫌そうに云う。食えないとなると、余計に食いたくなるのが世の常。皆「エー!?折角食べる決心をしたのに…」と不満タラタラで、「じゃあ、せめてこの『クリーム・ソバ』が、どんなデザートなのか教えてよ。何、アイスが蕎麦の上に乗ってたりする訳?甘いの?」等と、今までの彼女の態度の悪さに対する鬱憤を晴らすかの様に、「強面」に詰め寄る。彼女は、ちょっとたじろいだが不思議そうな顔をして、「いえ、普通にアイスが乗ったソーダですけど…」と応えた。

「エッ?ソーダ…?今、ソーダって云った…?」。

面食らった我々が、今一度眼を凝らしてメニューを良ーく見ると、其処には「Cream Soda」と有り、要は3人揃って『d』と『b』とを見間違えていただけだったのだ!何と云う羞恥、何と云う老眼。と云うか、「『クリーム・ソバ』なんて食い物、有る訳無いじゃん」って事である。年は取りたくない物だ(涙)…S君、若いんだからしっかりしてくれよ(号泣)。

しかしこの「ヨミマツガイ」、嘗て村田英雄が「フランク・シナトラ」を「フランク・ツナトラ」と読んだり、誰かさんが「幕の内弁当」を「墓の内弁当」と読んだレベルと同じだった(涙)。

さて気を取り直して、今日の本題。昨晩ロンドン・クリスティーズで開催された「印象派・近代絵画イヴニング・セール」が終わったので、この春のロンドンでの、両オークションハウス「イヴニング・セール」の結果報告である。

先ずは火曜日に先行して開催された、サザビーズ。50ロット中35点売却し、総額1億1210万1350ポンド(約150億2400万円)の売り上げ。トップ・ロットは、マネの「パレットを持つ自画像」の2244万1250ポンド(約30億2000万円)、次がマティス「婦人と寛ぐオダリスク」の1180万1250ポンド(約15億8000万円)で、この2点が1000万ポンド以上での売却作品であった。

それに対するクリスティーズはと云うと、62点のオファーで46点売却、総額1億5259万5550ポンド(約205億3800万円)を売り上げ、サザビーズを破った。トップ・ロットは、「CATS」や「オペラ座の怪人」等で有名な作曲家、アンドリュー・ロイド=ウェバーの財団が売りに出した、ピカソ1903年「青の時代」の名作「アンヘル・フェルナンデス・ド・ソトの肖像」で、3476万1250ポンド(約46億7900万円:約5214万1875ドル:エスティメイトは3000万ー4000万ポンド)、次点はクリムトの「リア・ムンクの肖像」の1880万1250ポンド(約25億3000万円)、もう一点1000万ポンド超の作品が有り、それもピカソ作品「接吻」で1213万7250ポンド(約16億3270万円)であった。

このクリスティーズのセール結果は、英国で行われた如何なる「単一アート・オークション」でも最高の売り上げとなり、「ウェバー・ピカソ」はクリスティーズ・ロンドンで売却された2番目に高額な美術品となった。そしてウェバー財団は、1995年にこの作品を2900万ドル強でサザビーズ・ニューヨークから購入しているので、「一枚の絵画」を15年間持つ事に拠って、2300万ドル(約20億円超)程資産を増やした事になった…しかしこの売却金は、全額英国の文化振興の為に寄附されるとの事…太っ腹である。

セールの結果は良かったが、やはり二極化が進んでいる様に見える。高額で信用の強いブランド作家作品、最高品質作品はより高く、しかしそうでない作品はやや難しい…所謂「ピッキー」な状況に為りつつある。

来週の現代美術セールも要注目、である。