「LOTOS CLUB」。

いやー「ブルー・サムライ」達、良くやりました!

ここ一番で「世界の大舞台で、うろたえずに力を出し切る」と云う、日本人が最も出来そうで出来ない事を具現し、勝ち上がった事は本当に大きい。少年時代に、ベッケンバウワーにレッスンを受けた筆者としては、もう本当に嬉しい…自信を持った「ブルー・サムライ」は、パラグアイも粉砕だ!

さて昨日も、9月のオークション出品作の獲得とカタログに精を出す。今回は「明治:MEIJI」にフォーカスを当てて集品しているのだが、大名品を含む素晴しい京都並河の七宝、象彦の漆棚、薩摩、金工品、象牙細工等、中々良いセレクションで有る。この「MEIJI」は、日本美術史の文脈の中でも、これからもっともっと見直されるだろうし、それは何故ならば、その全ての工芸分野(金工・漆芸・七宝等)に於ける「技術」が、疑い無く世界一であるからだ。

しかし「MEIJI」は、所謂「侘び寂び」と云った日本人好みでは無いし、かく云う筆者ですらアメリカに来た頃は、「何じゃこのゴテゴテ、ピカピカ、悪趣味なモノは!」と正直思ったりもした。が、NY生活が長くなり「外人化」が進む毎に(笑)、その日本人ならではの繊細且つ「微に入り、細に入る」技術の凄さと、「何がこれ程までに、外人のハートを鷲掴みするのか?」と云った疑問・興味が出て来たので有る。

また「MEIJI」のみならず、9月のセールに出品予定の他分野でも、例えば絵画では、狩野孝信作龍安寺旧蔵の襖絵六面(「連れ」はMETとシアトル美術館が所蔵)や萬野美術館旧蔵品、陶磁器ではマスプロ美術館旧蔵品、能面、甲冑、浮世絵(写楽国芳・新版画等)、現代陶芸・絵画迄、バラエティに富んだ「高品質」セールに為って来ている。未だ集品中なので詳細は追って記そうと思うが、乞うご期待!

一転して夜は、同僚のM君のご両親に拠るご招待で、アッパー・イーストサイドに在る「LOTOS CLUB」でディナー…メンバーは他に、イサム・ノグチの盟友で美術館理事もしている旧知のS氏夫妻であった。

クラブ発足当時のメンバーであるマーク・トウェインに因って、「The Ace of Clubs」と称されたこの「LOTOS CLUB」は、当時の若き小説家・ジャーナリスト・評論家達に拠って1870年に設立された、アメリカでも有数の、歴史且つ由緒有る「文筆家クラブ」である。

現在クラブの在る重厚な作りの建物は、1900年にヴァンダービルト家に拠って建てられた物で、大理石の暖炉や如何にも「クラブ」な図書室、そして名物である、有名小説家や政治家、ジャーナリスト等の「実際に描かれた」無数の肖像画と、何故か女性の「ヌード絵画」が掛かる地下のダイニング・ルーム等など、古き良き時代の「男性クラブ」の香りを、今でも十二分に漂わせている。

サービスも、嘗て何度も何箇所も連れて行かれたロンドンの、例えば「OXFORD CLUB」の様な「ジェントルマンズ・クラブ」程にはスノッブ過ぎず、非常に心地が良い…流石「ライターズ・クラブ」である。食事はこれも名物の「ロブスター・サーズデイ」、プリプリのロブスターを頂いた。アートに関する楽しいお喋りやゴシップ、そして何よりも「このテーブルで、カポーティが煙草を吸っていたのでは?」とか、「このカウンターで、O・ヘンリが酒を飲んだのだろうか…?」等と想像しながらの食事…「クラブ」特有の、素晴しい雰囲気を堪能させて頂いた。

最後に、この「LOTOS CLUB」の名前の由来を記しておこう。このクラブ名には「休息と調和の追求」の意が込められているそうで、この「LOTOS(忘憂樹)」はヴィクトリア朝の詩人、アルフレッド・テニスンの詩「The Lotos Eaters」(邦題:「安逸の人々」)から取られ、そしてこのクラブの「モットー」は、このテニスンの詩中に在る、以下の「2行」に集約されるとの事だ。


In the afternoon they came unto a land
In which it seemed always afternoon


ウーム、いいなぁ。