「地獄でドッキリ」:サプライズ・バースデー・パーティー@地獄宮殿。

今週末は「インディペンデンス・デイ」の為、連休。木・金曜の朝の出勤時等、束の間の静寂がニューヨークの街に訪れ、それと共に気温が下がり、非常に快適な日々であった。

さて金曜は、夕方になると仕事を抜け出し、友人のエリザベス宮殿主A姫と重要な打ち合わせ。この「重要な」ミーティングが何かと云うと、話は6月25日に遡る。7月2日の「妻の誕生日」が一週間後に迫ったこの日、ふと2日が金曜である事と「独立記念日の連休前夜」で有る事に突然気付き、これも全く降って来た様に「サプライズ・パーティー」のアイディアが浮かんでしまったのだ。映画やTVで観た事が有っても、実際した事もされた事も無い筆者は、即こう云った事に精通していると思われるA姫に連絡、「実行委員長」を快諾頂いた。その後直ぐに妻、夫婦共に仲の良い15人程の友人に連絡すると、幸運にも悉く出席OKの返事が来て、皆ヤル気満々…連休なのに、妻は何と運が良い事か(笑)!

実は此処からが大変であった…が、将来「サプライズ・パーティー」を「自宅」でやろうと思う人は、今回のダイアリーを是非参考にして頂たい。さて、先ず「自宅」でやりたかったの訳を説明せねばならない…それは、1.ディナーは思い出のレストランでしたかった。2.映画等で、「家に帰って来てドアを開け、電気をつけたら其処に皆が待っていて、クラッカーを鳴らし『ハッピー・バースデー』が合唱される」に憧れていた。3.筆者は酒が呑めないので、「もう1軒行こう」等の口実を付けての、「バー」等での開催は出来ない、からなのである。

しかし重要なのは、何しろ「絶対に妻に知られずに行動し、当然一言も漏らさず、友人達、アパートのコンシエルジュ等にもそれを徹底する」事だ…根が正直な夫としては、これは針の筵である(笑)。A姫はその間に、デコレーションの為風船を50個近く予約したとの事、彼氏のイタリア人Pと2人で、カラフルな風船を愛車ヴェスパか、さも無ければ地下鉄で運ぶのを想像しただけで、顔が綻ぶ…イタリア映画みたいだ(この「風船」とパーティーに関する、A姫の可愛くステキなブログはこちら→http://originalslope.blogspot.com/)。

そして当日の「段取り」はこうである…1.先ず6時過ぎに孫一夫婦は、ディナーへ出かける。2.8時に、事前に合鍵を渡されたA姫と幹事数名が、拙宅「地獄パレス」に潜入、飾り付けを始める。3.残りのパーティー出席者は8時半迄に「必ず」集合、我々に家の近所でバッタリ会わない様に、遅れそうな者は10時以降に来て貰う。3.レストランを出る15分前程前に、A姫に連絡を入れ。準備状況を確認する。4.アパートに帰って来て、エレベーターに乗る前に、何とかA姫に「ワン切り」コールをする…部屋を暗くして待つ為である。5.部屋の鍵は「絶対に」妻に開けさせ、その妻に最初に部屋に入らせて電気を付けさせる。6.そして、部屋に入り電気をつけた瞬間…、と云う内容。ウーム、綿密極まりない計画、成功間違いなしだろう(笑)…が、拭い切れない不安も。

それは、参加予定のK君が云うには、以前友人男性の為に「サプライズ」を企画した時に、彼女の方が、彼を部屋に連れて来る為に具合が悪くなった振りをしたら、彼の方が機嫌が悪くなり大喧嘩になってしまい、結局彼女が彼の怒りを静める為に、事の次第を「全て」彼に喋ってしまたそうな。そして二人がアパートに登場した時には、事情を知らない参加者たちだけがはしゃいで、本人達はもう白け切っていて超サイテーだったとの事。それと、これまた参加予定の友人M女史に、「全ては孫一さんの『演技力』に懸かってますからね!」と云われた事である…大丈夫だろうか…。

さて当日の土曜日。仕事をしていても、どうも落ち着かない。仕事中、何回かA姫とメールをやり取りし、「鍵の開け方」等、最後の打ち合わせ。アパートのコンシエルジュにも、「今日パーティーだよね、ENJOY!」等と妻に云わない様に充分に云って聞かせたし、宮殿を綺麗に掃除しておくのも、数日前から妻に「誕生日をピカピカの部屋で迎えると、『大きな幸運』がやってくるのを知ってるか?」等と云い聞かせ(笑)、「素直な」地獄の女主人は、日頃はとても急に人を呼べない有様の宮殿を、有ろう事かキチンと片付けていたので、シメシメと一安心。筆者も一度家に帰り支度をして、2人でユニオン・スクエアに在る行き付けのレストラン「T」に赴いたのだが、出掛ける際のコンシエルジュの「ウインク」が忘れられない(笑)。

しかし、世の中そう上手くは運ばない。連休と有って「T」が意外に空いており、ディナーが思ったよりも早く終わってしまったのだ。皆が集まるのは8時半だと云うのに、未だ8時15分…取り敢えず「ダブル・エスプレッソ」を頼みチビチビ呑んで粘るが時間が足りず、もう一杯お替りをする羽目に。「胃酸逆流の危険」を敢えて犯す、この妻への愛を、彼女は本当に判って居るのだろうか、と思う位、妻は美味しそうに食べ、ワインを飲み干す(笑)。もう限界か…と思った処へ、オーナー・シェフのマルコがテーブルにやって来て話し始め、テーブルの下ではガッツ・ポーズ、これで時間が調整できた。そして「T」を出ても、念の為1ブロックほど歩いて時間を稼ぐ…「歩こう」等と云った筆者に、妻は不審の目を向けたが、無視して歩く。そして、妻が何処かもう1軒行きたそうなのをも無視して、タクシーに乗り込み、愈々「地獄宮殿」へと戻った。

タクシーを降りる時に、支払いが手間取ってる振りをして、部屋で待機中のA姫にワン切り…ちゃんと伝わっただろうか?コンシエルジュも知っているのに、敢えて「クリーニングが届いているけど、持って行くか?」等と聞く。「明日にするよ」と応えると、再びウインク…ヤツも相当演技派である。エレベーターに乗り、もうこっちの心臓はドキドキ、知らぬは妻ばかりなり。エレーベーターを降りて部屋に向かう途中、「あぁ、エスプレッソ飲み過ぎで胃が痛い…」と演技し、妻に先に向かわせ鍵を開けさせる。そしてドアを開け、電気を付けた瞬間…。

「HAPPY BIRTHDAY!!!」の大歓声とクラッカー、ブーブー為るオモチャや連発するストロボの数々に、妻は一瞬何事が起ったかと、驚愕の余り玄関でへたり込んでしまった!部屋は、天井に浮かんだ色取り取りの風船にすっかり彩られ、そこから垂れる、これも色取り取りの紐が「宮殿」をまるで草間弥生インスタレーションの様に装っていた。そして、妻の前に運ばれてきたバースデー・ケーキには、30数本の蝋燭が所狭しと立てられ、妻は感動しながらも、「願い」を込めてそれを吹き消した…「サプライズ」、大成功である!!

宮殿に揃った顔、顔、顔…実行委員長のファッション・ジャーナリストA姫とワイン・スペシャリストのP王子カップル、カメラ担当の写真家G君、ケーキ担当のブラック・カルチャー専門家のT君、妻のダンス親友タレントYさん、ライターのM女史&D氏夫妻、アート・サイト運営のK君&A夫妻、建築家Sと作曲家Aちゃんカップル、NYUで教鞭も取る現代美術家S氏、現代美術家I氏とジャパン・ソサエティのY女史夫妻、ジェエリー・デザイナーN氏とジャズ・ピアニストH女史、ヘア・デザイナーのMちゃん、皆来てくれて本当に有難う!

乾杯が終わり、暫くして宴も酣になると、現代美術家S氏のちょっとサディスティックなディレクションで(笑)、写真家G君に拠る、妻、Yさん、Mちゃんの「元アイドルチック・トリオ」の爆笑撮影会が始まり、皆、もうこんなに笑った事は無いと云う位に大笑い。そして、気の置けない友人達のお蔭で、大盛り上がりに盛り上がった「サプライズ・バースデー・パーティー」も、気が付けば2時半、お開きとなった。噂によると、その後家に帰ったのに部屋の鍵が無く入れなくて、「尻取り」をしながら鍵屋の到着を待った方が居らした様だが、この日が「夏」で本当に良かったです(笑)。

翌朝起きると、前の晩天井に浮かんでいた殆どの風船は下に落ちて、宮殿の床をカラフルに染めていたが、余りにハッピーな夜の、そして友情の「象徴」の様に、「白い風船」がたった一つだけ未だ天井に浮かんでいた。

皆さん、ご協力そして心からのお祝いを、本当に有難う御座いました!