「シンディ・シャーマン」と「あだ酢」の旨味。

昨日は小糠雨降る中、御堂筋ならぬ(欧陽菲菲の「雨の御堂筋」は大名曲だ!)、MOMAで開催中のシンディ・シャーマンの回顧展を観に行った。

この展覧会は、1970年代中盤から始まった彼女のフォトグラフィック・アートを170点以上集めた、大規模な物で有る。

さて恥を忍んで云えば、筆者は今迄彼女の作品を素晴らしいと思った事が、実は一度も無い。

それは、彼女の作品に対する筆者の理解と勉強の不足なのか、はたまた趣味の問題なのか。何れにせよ、作品の数だけは見ているし、シグナチャー・ワークと云われる作品も知っている…がしかし、なので有る。

そして結局今回の展覧会を観終わった後も、シャーマンとその作品に対する美術史的評価を理解した上でも、残念ながら何も感じ無かった事を告白せねば為らない。

彼女の初期の仕事には、ジェンダーを強く意識し、本人の若さも手伝っての品の良い作品も有ると思うが、本人が年を取るに連れて精神的・肉体的にも「中性化」し、そうして創られた作品にはグロテスクさと「イタさ」が増して来た様に思う。制作の時代的変遷とすれば、それはそれで正当だとは思うが、如何せん深刻且つ美しさに欠ける所が困るのだ。

個人的には、森村泰昌作品の方が「笑える」エンターテイメント性が有って、深刻振らない分好ましい気がしてしまった展覧会で有った。

さて此処で、話は1日前の土曜の夜に遡る。

この日の為に、ゲル妻は懲りずに「サプライズ・バースデー・ディナー」を企画…この晩のターゲットは、今週木曜日に「The Stone」で坂本龍一氏と共演(→http://www.sitesakamoto.com/whatsnew/)、そしてこの日●●歳の誕生日を迎えた、作曲家Aちゃん(因みにゲル妻は、水曜日に共演)。

今回の「共犯」メンバーは、写真家S君に建築家K君、ミュージシャンMさんにパートナーのインド人H君、現代美術家S氏に、Aちゃんの友人のドイツ人女性、そして我ら地獄夫婦の計8名。

場所は、最近A姫が取材しお勧めだと云っていた、創業130年を誇り、世界の著名人も訪れたと云う、36丁目に在るステーキ・ハウスの「K」。古式床しい店内には、ダグラス・マッカーサー等が使ったパイプや写真が展示され、抜群の雰囲気で有る。

共犯者達は7時半に集合し、8時にMさんカップルが騙して連れてくる手筈になっているAちゃんを待ち受ける…。

コリアン・タウン内の36丁目と云う事で、てっきり「韓国焼肉」に行く積りに為っていたAちゃんが8時過ぎ、遂に「米国焼肉」に登場。そして、騙された「決定的瞬間」に焚かれたフラッシュの数々に茫然自失し、その後感動に陥ったAちゃん…久々の「サプライズ」、大成功で有った!

乾杯後は、ケール・サラダやグリルド・ヴェジタブル、ハッシュド・ポテトやフレンチ・フライ、そして主役の「ポーター・ハウス・ステーキ」を皆でガツガツと食べながら、Aちゃんが如何にこの日に対して如何に「サスピシャス」で有ったか等の話で、皆笑い続けたが、誕生日が来る度に「騙されるのでは?」と友人を疑い続けるのも、如何なものか…とも思う(笑)。

その後、「海老蔵似」の天才パティシエ、Kさん特製の甘過ぎない絶妙な味が素晴らしかった、Aちゃんの「似顔絵付き」カップ・ケーキを食べる頃には、普段は余り呑まないAちゃんもワインでホロ酔い気分に為り、ご機嫌の様子。

そして滔々Aちゃんに拠って、必殺の東北名物の珍味「あだ酢」が出されると、出席者一同吃驚仰天…そして爆笑の渦と化したので有った!

この東北地方独特の「あだ酢」の旨味は、歳を経ないと分からない事も多々有るのだが、Aちゃんもやっと大人に為ったと云う事だろう。因みに、この余りに旨味の深い「あだ酢」の正体はと云うと…おっと、今は我々だけの秘密にして置こうと思う(笑)。

夜中前迄盛り上がり続けたディナーも、何時の間にか大雨に為っていた外を、駅迄皆で駆け抜けて、Aちゃんのサプライズ・バースデーは無事終了。

そして今週は完璧な「音楽週間」になる予定で、火〜木は「The Stone」、後半はジャズの大御所のライヴが待っている…今週は「ニューヨーク・ミュージック・ダイアリー」に乞うご期待で有る!