"Disappearing Tatzu !"@Hell's Palace.

ここ数日のニューヨークは、マジに寒い。

外に居て風が吹こう物なら、体感温度はマイナス18度!…そんな中、昨年の秋コロンバス・サークルに聳え立つコロンブス像を取り囲む「リヴィング・ルーム」を作り、10万人以上の観客を動員したインスタレーション・アート「Discovering Columbus」の作家、西野達氏が滔々ニューヨークを去る事に為り、そのお別れパーティー「Disappearing Tatzu !」(笑)を地獄宮殿で開催する事に。

「達っつぁん」と初めて会って以来意気投合し、以来此処数ヶ月の間に何回会って飲んだり食ったりしたか分からないが、一番思い出に残って居るのは、コウスケ君(藤高晃右:「ニューヨーク・アート・ビート」ファウンダー、NY滞在中の達っつぁんの通訳)の家での初対面や、「Discovering Columbus」の初日、「サプライズ・ディナー」(拙ダイアリー:「『ハレのご縁』、或いは『サプライズ大作戦』」参照)や日本クラブでのトーク(拙ダイアリー:「書道家現代美術家、序でに『あんちくしょう』」参照)も然る事ながら、矢張り達っつぁんがニューヨークに来た頃に地獄宮殿で開催したウェルカム・パーティー、「Discovering Tatzu !」(拙ダイアリー:「"Discovering Tatzu"@Hell's Palace」参照)の「インヴィテイション・メール」を送った時の事だ。

筆者が英語で作ったそのメールは、主にニューヨークのアート関係者に送った物だったのだが、そのメールで筆者は「チョットした」間違いを犯してしまったのだが、それは、達っつぁんの英語名を「Tatzu Nishino」と書いてしまった事だ。

達っつぁんの日本名は「西野達」だが、今回のプロジェクトでの達っつぁんの名前は「Tatzu Nishi」で、「Nishi"no"」では無い(この辺が、実にヤヤコシイ)…勿論人の名前を間違えるのは失礼だし、達っつぁんがプロジェクト毎に名前を変えて活動している事も知って居たが、所謂「ウッカリ間違い」で有った。が、このメールを送った直後、その達っつぁん本人からメールが来て、其処には

「俺の名前は、Tatzu "Nishi"で、"Nishino"では有りません。宜しくお願い致します。」

と大きな赤字で、しかもボールド(太字)で強調して書いて有った。

知り合ったばかりだった事も有って、早速達っつぁんを怒らせてしまったかと思い、気の弱い筆者がコウスケ君に相談したら、「孫さん、達さんのメールは何時も『ボールド』ですから、心配無いですよ…まぁ、強調したい時には『赤』使って来ますけどね」と云う。

「いや、このメール、『赤』使ってるんだけど…」と云うと、コウスケ君は「…」(笑)。其処でクサマヨイに相談したら、彼女の答えは一言「大体あの人、自分は『人の名前』を絶対覚えないんだから、放っとけば良いのよ!」で有った。

「成る程、そりゃそうだ!」と膝を打ち、急に気が楽に為ったのだが、それには当然訳が有って、話はコウスケ君宅での達っつぁんとの初対面の日に遡る。

筆者がオークション会社でスペシャリストをしているとの話で、「クリスティーズ」に勤めていると云って居るのに、達っつぁんはその日、最後迄それを「サザビーズ」と云い続け、その後もつい最近迄、筆者を誰かに紹介する時には、必ず「『サザビーズ』の孫一」と紹介するので困っていたのだ(笑)。

が、筆者の名前だけはキチンと「孫一」と覚えてくれたので、其処は光栄に思わねば為らない…何故ならクサマヨイに至っては、会う度に「毎回」名前を間違えられた挙句、かなり親しく為った後でも酔った暁には「あの〜、以前何処かでお会いしましたっけ?」と云われ、憤慨していたからで有る!

しかし良く考えれば、アーティストが自分の作品や仕事に関しては細かく、他の事には無頓着なのも充分理解出来るし、況してや達っつぁんの様に豪快なアーティストは尚更で、その人柄も手伝って憎めない…そんな事で、達っつぁんと一緒の時には、自分が競合会社の社員と化して居たのも、今となっては良い思い出なのだ(笑)。

そんな達っつぁんを送るパーティーには、パブリック・アート・ファンドの人達や、インゴやオスカール等の仲の良い現代美術家、ニューヨーク在住の日本人アーティスト達、大学教授や院生、ギャラリー・ディレクターやキュレーター、ミュージシャンやダンサー達、ファッション・デザイナーやキャスター迄、そして達っつぁんからの「ゲスト・リスト」に有った「美女軍団」(笑)を含めた、総勢70人が集まり大盛況。

次々と空くワイン・ボトルと、供される料理(「海鮮チラシ」から「キーマ・カレー」迄!)の数々がゲスト達を盛り上げながら、パーティーは「スピーチ・タイム」を迎えた。

筆者の合図で、皆の前に立つ達っつぁんと「最後の」通訳をするコウスケ君…しかし実はこの2人、この日夕方迄講演会の為にトロントに居り、しかも彼等の乗る便が雪の為にキャンセルされてしまったりしたので、パーティーに間に合わなかったかも知れなかったのだ!

若しパーティーに間に合わない、若しくは来れない場合には、それこそ文字通りの「Disappearing」で、「主役『消失』のお別れ会」と云った不条理劇的パーティーと為った筈で、それはそれで一興だっただろう(笑)。

が、其処は流石に強運の達っつぁん!そして、その達っつぁんのスピーチ中に「爆弾発言」が有った…何と達っつぁん、6週間後に新しい仕事でニューヨークに戻って来て、再び6週間滞在するとの事!そして曰く、

「6週間後の『歓迎パーティー』と、12週間後の『お別れパーティー』を今から楽しみにしてます!」(笑)

何とグリーディーな男なのだ(笑)…が、聞くと、この仕事はほんの4日前に決まったばかりらしく、夜中過ぎ迄続いたこの晩のパーティーも、謂わば「『暫しの』お別れ会」と為ってしまったが、それでも達っつぁんがニューヨークに戻って来る事を全員が喜び、寂しく為る筈のパーティーが却って盛り上がった事は、云う迄も無いだろう。

「Discovering Columbus」で、ニューヨークのコンテンポラリー・アート・シーンに多大なる足跡を残したアーティスト、西野達…この街がこの陽気なアーティストを失う期間が、たったの6週間に為ったのは、この街に取っても我々に取っても幸運としか云い様が無い。

さてさて、6週間後の「Reviving Tatzu !」パーティーの準備を始めねば!(笑)


−筆者に拠るレクチャーの開催告知−

日時:2013年2月9日(土)午後3時半-5時

場所:朝日カルチャーセンター新宿

講演タイトル:「渋谷の『白隠』と海を渡った『白隠』」

講座サイト:http://www.asahiculture.com/LES/detail.asp?CNO=188251&userflg=0

展覧会サイト:http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/12_hakuin.html

奮ってご参加下さい!