講話会でレクチャー@全生庵。

しかし暑い…一昨日練馬では38.2℃、異常だ。外に出ると、脳味噌が溶けてスープに為りそうな勢いである。日経平均株価も今年最安値を記録し、円も85円台、暑さと共に日本もニューヨークから来ている筆者も、踏んだり蹴ったりである。
その一昨日の夜は、時差ボケを圧して、友人のクリエイティブ・ディレクターA氏&ライターAさんのカップルと食事。

先ずは、飯倉片町近くの和食屋「S」で、季節の食材を使ったあっさり料理を食す。その後は、場所を白金の「M」に移し「飲み」。アート界の現状等の話が尽きず、気が付けば1時を回り、解散。

そして筆者が高校生、未だぐっさんも謙さんもTVに出ていなかった頃、ソックリだと云われていた清水健太郎が6度目(!)の逮捕をされた昨日の夜は、東京谷中に在る禅堂「全生庵」で行われた、「谷中政経塾」でレクチャーを行った。

この日のレクチャーは、友人で「憂国の同士」、某IT企業社長のK氏が運営する政策経済研究会で、メンバーが座禅を組んでいるこの「全生庵」に於いて、定期的に開催される「講話会」である。

全生庵」は、明治16年山岡鉄舟に拠って、国に殉じて死んで行った幕末の志士達を弔う為に建立された。また、三遊亭円朝が収集した、円山応挙等50点に及ぶ「幽霊画」コレクションや、その円朝の墓が在る事でも有名で、これは余談だが、「美貌」で人気の現代美術家松井冬子氏の嘗ての嫁ぎ先でもある。

全生庵に着き、K氏の出迎えを受けると、先ずは階上の展示室の「幽霊画」を、お坊さんの案内で拝見する。円朝師匠、良くぞここ迄集めた物だ!応挙や暁斎等、ずらっと並んだ幽霊達…講演後にお話させて頂いた平井住職の話に拠ると、全生庵にはハッキリ云って「出る」そうである…先日の「四谷怪談」と云い、今年の夏は嫌に幽霊付いている(笑)。

幽霊達に別れを告げ、ヘッジ・ファンドGM、民放プロデューサーと経済部長、外務省課長、国家戦略室、銀行等、メインの出席者の方々と、講演前のお弁当を頂く。皆さん興味津々で、食べる暇も無い位の質問攻め…しかし、筆者の仕事に興味を持って頂けるのは、本当に有り難い。

時間と為り、90分間の講演がスタート。今日の講演タイトルは「現代の世界に於ける日本文化の位置と、外から見た日本」である。会場は大広間で、30人程の人が列になって座っている。K氏に拠る紹介の後、先ずはクリスティーズの歴史や業務内容、鑑定・査定等のスペシャリストの仕事の話から始めた。しかし、講演する時は何時もそうなのだが、筆者はa.k.a.「ミスター脱線」として知られる男、話があっちこっちに飛び捲り、しかし自分もノリ始めた為、喋り捲り(笑)。

オークションや、日本美術の面白い逸話を交えながら話し続けるが、今回の講話の「筆者的目的」は実は其処では無く、如何に日本文化を「武器」として世界と闘うか、如何に国内に於いて伝統文化を継承して行くか、そして、井の外を知らずして、井の中を知る事は出来ない、蛙に為ってはならない、と云う点なのである。

最初は固い表情が多かったメンバーも、次第に身を乗り出し、メモを取りながら熱心に耳を傾け、所々此方の力の入る箇所では、頷き方も大きくなる。講演終了後の質疑応答の際、文化財保護とナショナリズムに関しての鋭い質問をした外務省課長の様な、見るからに東大出の、頭の良さそうな中堅官僚やバンカー達の真剣な眼差し、議論を見ていたら、日本の若手も捨てたものでは無いな、との感を強くしたのだった。

そして講話会は、盛会の内に無事終了。住職とK氏にご挨拶をして全生庵を後にした後は、友人達と山の上ホテルのバーで打ち上げとなった。

この「全生庵」での講演は、筆者に取って、実は特別な感慨があった。それはこの「全生庵」と云う場所が、そもそも自身の死後、K氏との縁を繋いでくれた祖父の親友で血盟団員、右翼思想家、そして筆者に子供の頃から多大なる影響を与えた或る方が、中曽根、細川両首相を呼んで座禅を組ませた、或る意味「日本が作られ」、「政治が動いた」場所だったからだ。そんな場所で自分が話をする事等、考えてもみなかったし、実際言葉に為らない程、身に余る光栄であったのだ。

K氏に、この機会を与えて下さった事を先ず大感謝。そして「或る方の」教えを実践し、早や一刻も日本を良くせねば、と改めて固く心に誓った、昨夜の孫一であった。