「白隠」と焼肉。

何と、10月になってしまった(汗)。

今年も後3ヶ月…この秋には、今月中旬の西海岸、そして11月中旬から始まるニューヨーク→日本→台湾→香港→日本と云う結構過酷なビジネス・ツアーが組まれており、しかし「日本」とは云えども、多い時には10以上の都道府県を訪れる事も有るので、どれだけ飛行機や新幹線等で移動するのか…?と考えただけで、涙が出そうになる(笑)。

雨が降り続けるニューヨーク…昨晩は先ず、妻とジャパン・ソサエティで始まる白隠禅師の展覧会「The Sound of One Hand: Paintings and Calligraphy by Zen Master Hakuin」の内覧会へ。

白隠アメリカでもかなりメジャーな日本美術作家で、顧客でも有りこの秋日本で展覧会を開催しているギッター氏等のコレクターや、今回のキュレーションを担当したスティーヴン・アディス先生等のオーソリティも居らしゃっるので、研究も盛んで有る。展示されている絵画・墨蹟は、このギッター氏のコレクションや日本の業者/コレクターのコレクション、アメリカの美術館から出展であるが、作品に関して云えば正直少し物足りなく感じた。白隠は作品が多く、素晴しい作品が多く存在している事が判っているだけに残念だし、もう少し日本の寺や業者、ヨーロッパの個人等からも出展が有れば良かったと思う…が、予算の都合なども有るのだろう。

展示された作品の中で最も面白かったのは、珍しい「鬼の行水」(掛幅:紙本墨画)と云う作品で、鬼は画中に登場せず、只金棒と蓑だけが地面に転がっていると云う絵柄である。これは「鬼に金棒」と云う様に、鬼は一時たりとも金棒を手放さないのだが、唯一風呂に入る時だけは金棒を手放す、と云う事を表している。金棒と蓑だけを見せる事に因って「鬼の不在」、そして「鬼の行水」を観者に想像させるテクニック(まるで、「誰ヶ袖図屏風」だ!)…白隠とは、何とニクい坊主なのだろう(笑)。

また展示作品にも有ったが、「動中工夫勝静中百千億倍」(動中の工夫は静中に勝る事、百千億倍)は、白隠の数有る墨蹟の中でも最も好きな言葉であり、筆者の座右の銘の一でもある…これで来月、絡み捲くった「ご縁」で実現する筈の龍沢寺訪問も、より楽しみになって来た。

展覧会を観終え、ギッター氏を初めとする知り合い達と挨拶をすると、昨晩のメイン・イヴェント、友人のハイヤー会社社長のS氏と織物作家のT女史と食事の為、トライベッカに最近出来た焼肉屋「T」へと猛ダッシュ(笑)。

何しろ筆者は、9月5日の日曜日を最後に「一日たりとも」休んでいない…日頃食生活に気を使っている我々地獄夫婦であるが(ホントか?:笑)、昨日ばかりはS氏からの「旨い焼肉屋が最近出来て、其処はこれまた旨いホルモン出しますよ!」との情報にアッサリと負け、「此処で踏ん張らねば!」、「長い事休んでないんだから!」と云う非常に強い「建前」を以てして(笑)、意気揚々と出掛けたのであった。

さて着いてみると、「T」はこじんまりとした現代的な店。壁にはグラフィティ調の絵と共に「焼肉に関する『良き事』」が説明されていて、客に外人も多い。メニューを見ると、もう口中涎モノで、ユッケ、レバ刺やセンマイは当然、ホルモン系もかなり充実している。キムチ、胡麻ドレッシングの掛かったキャベツが突出しで出た後は、先ずはユッケとセンマイ、レバタタキと「生肉納豆」、荏胡麻の葉を注文して食す…ウンマイ!!もう全て新鮮で、たまらん。

そして焼物へ突入。カルビ、タン塩、ハラミ、中落ちカルビ、ハツ、テッチャンを白飯で食べるが、もう旨くて旨くて、ご飯も進む。一周した後、再びカルビとご飯へ戻り、最後はソフトクリーム・ほうじ茶ソース掛けで締め。

いやぁ、本当にこの「T」は美味かった…正直「G角」や「コリアンタウン」の店々等、到底眼では無い!このお店を紹介してくれたS氏に大感謝である。身も心もすっかり満たされ、気分も良くなり、疲れもアッサリ何処かへ飛んで行った。

「焼肉勝節食百千億倍」(笑)。