「クリスティーズ」で週末を。

ハロウィーンを今週末に控えた今日のニューヨークは、最高14度で最低7度。段々と冬の足音が聞こえて来た…。

しかし今日もドバイと英国で、イエメンからのシカゴ向け貨物に爆発物が見つかり、昨日は昨日で、アメリカ国内で今年になってから、何と40人目の「テロ未遂犯」が逮捕されたりと、かなりアメリカは物騒になって来ている…非常にきな臭いので、注意が必要だ。

さて本日はと云うと、友人のアイリッシュ・ディーラーFと、アッパー・イーストのビストロで久々のランチ。最近の日本現代美術マーケットや大手ディーラーの動向、展覧会情報等を話す。プライベートでも付き合いの有るFは、日頃は「笑わん殿下」並に気難しい人間だが、笑うと本当に笑顔が素晴しくて、気さくに為る。さて今日Fから聞いた所に拠ると、最近ジャパン・ソサエティ・ギャラリーが「アドヴァイザリー・コミッティ」を作ったらしい…やっと作ったかと云う感じだが、コミッティのメンバーには杉本博司氏も入っているそうで、これは英断と云えよう。これからのジャパン・ソサエティ・ギャラリーの展覧会に、期待したい。

そしてクリスティーズでは、印象派オークションの下見会が始まった。今回のトップ・ロットは、2500万ー3500万ドル(約20億ー28億円)のエスティメイトが付いた、マティスの珍しくも重要なブロンズ作品「Nu de Dos, 4 Etat」(Back Nude IV)だが、個人的に最も欲しいのは、プラスター製の「白いジャコメッティ」、「Buste d'Homme」(120−180万ドル:9600万ー1億4千万円)である!この作品は、日頃ジャコメッティのブロンズを見慣れている者には、余りにも目に麗しく映る作品で(筆者だけかも知れないが:笑)、ちょっとフラジャイルな感じが堪らない…これだけ円高になると、マジ「安い」感じがするが、一体誰が買うのだろう。

また今回は「個人コレクション」も充実していて、例えば現代美術も含む「パレフスキー・コレクション」(筆者の分野でも、歌麿・春信・北斎等の素晴しい浮世絵版画があり、来年3月のオークションの目玉である!)のレジェ等、重要な作品も有るのだが、今回下見会を見ていて一つ面白かったのは、筆者が日本勤務していた頃に日本から出品した作品が、何点かマーケットに戻って来ている事だ。勿論「どれ」とは此処で云えないのだが、その絵画達を下見会で見つけた時は何と云うか、旧友に会った様な気持ちで、妙に懐かしかった。「マーケット・サイクル」も「10年ひと昔」と云う事か…。

今日から始まった下見会は「印象派・近代絵画」だけではなく、デュシャンやウォーホル等の「デニス・ホッパー・コレクション」を含む「現代美術」のハイライトや、ロンドンで開催される「オールド・マスター絵画」に出品される素晴しいプッサン、「古代美術」に出品される、B.C.2400年頃の驚くべき美しさを保つ大理石の「女性立像」(これは、500万ドル有ったら即買いである!)やトライバル・アート等などを含み、今ロックフェラー・センターのクリスティーズ社屋は、美術館クラス、またモノによってはそれ以上のクオリティのアートが、「観頃」と為っている。

芸術の秋、クリスティーズの下見会は入場無料、出入り自由、買わなくてもOKですので(買ってくれたら尚良いが:笑)、この週末是非お立ち寄り下さい!