「文藝紹興―南宋藝術與文化」@国立故宮博物院。

昨日、神保町の家を出て、ビジネス・ラウンジのソファに座る迄、丁度45分…羽田とは、何と近くて便利なのだろう!

その羽田発のANA便に乗り込み、村上龍の新作「歌うクジラ」下巻を少し読んだ後、ニューヨーク便等よりもかなり旨かった和食のセットを食べながら、アンジェリーナ・ジョリー主演のダブル・スパイ物、「SALT」を見終わると、アッと云う間に台北松山空港に着く。
そして、本当に筆者は「迎えの車」に縁が無いらしく、今回も来やしない(後で聞いたら、もう1つの方の空港に居たらしい…何故だ!)。仕方無くタクシーに乗って、ホテルへ向かった。

今回泊まるホテルは、台湾の同僚Cのオススメの「E」で、ロビーには現代美術も飾られた、ルイ・ヴィトンの隣に位置する「ブティック・ホテル」である。因みにスタッフは略若い女性で、須からく美女ばかり…ウーム滞在が楽しみになってきた(何で?:笑)。

美女に案内され部屋に入ると、何と部屋の真ん中に囲いも無く「ジャグジー付きバスタブ」が!トイレとシャワーの扉はスライド一枚、剰りにも現代的デザイン過ぎて落ち着かない…しかも何処と無く「ラブホ」チックで、そんな部屋で、美女からスイッチやら、信じられない位に多い数のリモコンやらの説明等を受けて居ると、何だか興奮して来る…訳が無いだろう!(笑)
荷物を置くと、早速2年振りの「故宮」へ。今回の「南宋展」は前評判も高く、日本からも25日の展示替え・シンポジウムを挟んで行かれた方も多いらしい。前期の方が良いとの噂も有り、スケジュール上後期しか観れないのが残念だが、仕方が無い…。

故宮に着き、先ずは「器物」を観覧。南宋の焼物は、「官窯」も勿論綺麗なのだが、「龍泉窯」の青磁の美しさには、決して敵わないと思う…しかし、何と美しいのだろう!鳳凰や鯱の耳の付いた瓶等、もう溜め息が出る。まるで宋時代の美しき貴婦人の、滑らかだが少し冷たい、シットリとした裸の柔肌…ちょっとエロいが、それしか例えようも無い(笑)。

玉や金工の数々も素晴らしかったのだが、もう一点だけ挙げれば、金時代の定窯陰刻雲龍文盤「壽成殿」銘、此れがまた素晴らしい。絵のプリミティブさと、定窯白磁の完成度が相まみ合って、何とも云えぬ味が有る…欲しいっ!

次に階上に上がり、愈々「書画」のセクションへ。

何しろ馬麟、馬遠、李迪、夏珪等々、名前だけでもスゴい面子なのだが、全体を通して観た感想としては、筆者は中国絵画に関しては素人ながら、全体的に何処と無く「アトリビューション」が甘い様に思ったのだが、如何だろうか…。

しかしそれでも、作者不詳の絹本墨画「秋溪待渡」や、個人蔵となっている謝元の絹本著色「桃花」、李安忠の「竹鳩」や伝李唐の風俗画「灸圖」、そして夏珪の墨画画巻「溪山清遠」等は、逸品中の逸品で、来た甲斐も有ったと云うものである!

序でにもう一点付け加えるならば、作者不詳の仏画「畫千手千眼観世音菩薩」であろう…これはもう、或る種「グロ」が入って居るのだが、全ての掌に描かれた千の「眼」…これでもか!具合が凄い。その他、書や資料関係も数多く、東博からの虚堂智愚の「與照禅者偈頌」(国宝)等も来ていた。

展覧会場では、大阪の業者のM君とバッタリ。博物館中、何度行き来しても必ず彼に会ってしまい、流石プロ、勉強熱心だなぁと感心仕切り。観覧後は、未だに体調万全と行かない事もあり、疲れ切ってホテルに帰ると、思わずベッドで転た寝…気が付くと、何と夜中の1時過ぎであった。

何と云う事だ…「トンポウロウ」を食い損なった!しかしそれでも、今朝ホテルの朝食で死ぬ程旨い「エッグ・ベネディクト」を食し(台北でこれ程旨いとは!)、少し機嫌が治ったが、禍根は残された侭である(笑)。

台北に「多大なる未練」を残しながらも、これから香港へ飛ぶ。