チャイニーズ・ディーラー達との夕食。

昨日は、アジア現代美術のデイ・セールを見たり、焼物や漆の器物の下見をしながら勉強、顧客達と情報交換したりと、広い会場を歩き回る。

昨日開催された「中国20世紀美術」「アジア現代美術」のデイ・セールは、ロットベースで70%、ヴァリューで88%、総額2億3110万7500香港ドル(約25億円)を売り上げた。パーセンテージを見ると、このマーケットも、少々落ち着いて来たか、との感も強い…。

そして夜は、有力中国人ディーラーA氏宅での、ディナー・パーティーに招待され、いそいそと参加。

香港の街を見下ろす、小高い山の上に在るA氏のマンションには、中国現代美術の絵画や版画、彫刻が並び、クリスティーズサザビーズ、そしてポリー等の中国本土のオークション会社のカタログが、所狭しと壁一面を埋め尽くしている。
昨晩のメンバーは、中国美術のディーラー、H、N、Iの3氏と、元オークション会社の中国美術スペシャリストで、現在はワイン・ビジネスをしているR氏、筆者とA氏の6人である。

先ずは、ワインやお茶で乾杯。最近のマーケット情報や、先日ロンドンのマイナーなオークション・ハウス、「ベイズブリッジ」に出品され、日本円でおよそ70億円と云う「如何なるアジアの美術品でも、オークション史上世界最高価格」で売却された、18世紀清朝乾隆年製の「黄彩透かし魚文壺」の事等を、図録を眺めながら話す。

この、今の所全く類例が無いと思われる作品を実際に見た人に拠ると、何しろ発色が美しく、黄色地に施された紋様の細かさ、透かし彫りのクオリティも秀逸で、サイズも大きな「逸品」らしい…のだが、今日話した有力英国人ディーラーの話に拠ると、どうも「駄目なモノ」との噂もあるのだが、真偽の程は確かではない…この辺も中国美術は、本当に難しい。

さて、そうこうしている内に、食事の支度が出来たらしく、ダイニングに移動…円卓を囲み、男6人が席に付く。

この日のディナーは、タイ料理。先ずは、野菜タップリのヘルシー・スープ、「トムヤムクン」。激辛ペッパーに、ヒイヒイ云いながらも、余りの旨さにお代わりを止められない…。そして、各種ハーブとピーナッツ・ソースをふんだんに掛けて食す麺、パパイヤ・サラダ、豆腐のムース等、健康的なメニューで、しかも「かなり」美味い!普通の家で、これ程のタイ料理を出せるとは、流石A氏とそのオバサン・シェフである!
さて昨日の6人の中には、何と身長180cm.超が3名、体重80kg超が2人と100kg超が1人と云う、ヘビー級美術商が揃って居たのだが、この連中でさえ「もう食えない」と思っていた所へ、メインの「ベジタブル・カレー」が…が、シッカリと頂きました!

この10年の中国美術品市場の推移、世界の強力コレクターや業者の噂話、思い出の名コレクション、明後日開催の器物オークションの予想等話題は尽きず、デザートの「ココナッツのケーキ、甘黒米添え」が出る頃には、時計の針は11時近くを指し、名残を惜しみながらも、お開き。

円高に苦しむ今日この頃、日本美術品を探し廻り、小さなマーケットで四苦八苦している身としては、絶好調の中国美術関係者の中では、何処と無く肩身が狭かったのだが、しかしこの日の会話や情報は大変勉強に為ったと共に、「今に見ておれ、日本美術を中国人に売ってやる!」と、無理矢理自分を鼓舞した晩でもあった…。

謝謝、A氏!