"Art | Basel" @ 香港會議展覽中心。

蒸し暑い香港にやって来た。

今回の香港出張の目的は、世界最大のアート・フェア「Art Basel」(以下「A|B」)が香港で初めて開くこの催しと、同じ「香港會議展覽中心」で開催される、クリスティーズのアジア現代美術や中国美術の下見会、そして顧客に会う為で有って、決して美味い飯だけを食いに来た訳では無い…決して…無い(笑)。

筆者が乗った同じANA便には、アーティスト奈良美智氏も居たが、今週の香港には作家、ディーラー、コレクター等の世界の現代美術関係者が集まるから(会場には奈良、村上隆、西野達各氏やサラリーマン・コレクターの宮津氏も)、「『香港會議展覽中心』でテロでも有ったら、被害額はどうなっちゃうんだろう?」等と不謹慎な事を思いながらも、先ずは定宿にチェック・インし、着替えて早速「A|B」へ。

それは何故なら、到着した22日の正午から5時迄が「Exclusive Private View」と為って居て、「A|B」のTさんから頂いた "Private View VIP" のカードが物を云うからだ。そんなこんなで、時差ボケでフラフラする身体を引き摺りながら香港會議展覽中心に行って見ると、2フロアを独占した「A|B」に混雑は無く、240を超えるブースと作品をジックリと拝見出来た…と云いたい処だが、知り合いのギャラリストやコレクター等と会ってしまうと、当然立ち話になり、中々作品に集中出来ない。

が、流石「A|B」!…ガゴシアンやペイスを始め、キャステリやボロースキー、ホワイト・キューブ、アクアヴェラ、ズワイナーやショーン・ケリー、ブラム&ポー等を筆頭に、世界の名だたるギャラリーが目白押しで、中国や韓国(しかし、何故GANA ARTが出て居ないのだろう?)と共に、ギャラリー小柳、ミヅマ、小山登美男、カイカイキキ、太田ファイン・アーツ、Shugo Arts、SCAI、タカ・イシイ、Nanzuka、山本現代、アラタニウラノ等が出展して居て、日本のギャラリーも頑張っている。

さて、今回の「A|B」の会場では、参加ギャラリーは「Galleries(畫廊…:字が無い)」「Discoveries(藝術探新)」「Insights(亞洲視野)」「Encounters(藝聚空間)」と呼ばれる4つのカテゴリーに分かれて居り、観る者への一つの指針と為って居て、初めての香港でのフェアとしての気遣いが見える。

そしてご存知の通り、「A|B」はスイスのバーゼルとマイアミで開催されているが、云う迄も無く、今回は中国の好景気と本土を中心とする富裕層を狙っての企画なのだろうし、会場を徘徊してみると、何れのギャラリーも「流石、アート・バーゼル!」と云った気合の入った作品ラインナップだった。

…が、しかし、実際スイス・バーゼルでのご本家「A|B」が、たった1ヶ月後の来月13日に開幕する事を考えると、ディーラー達も「目垢」を恐れて「目玉」は展示して居ないのかも知れない。また「VIP Exclusive Viewing」の終了後に、知り合いのアメリカ・ヨーロッパ・日本のディーラー達に聞いてみても、実際「本土・香港・台湾の中国人達が、何れ程作品を買ったのか?」と云う疑問は払拭出来無かった。

しかし考え方を変えれば、この「Art | Basel Hong Kong」は、中国人コレクターや中国人ギャラリストに対する「世界の現代美術のマーケット教育」の場で有り、また「名刺交換の場」として活きるだろうし、例えば今後富裕なコレクターがオークション・カタログを見た時に、「あぁ、あの時のアーティストの作品か!」等と思い出し、今回交換したギャラリストの名刺を引っ張り出して、あわよくばメールでもして呉れれば、それで良いのかも知れない。

個人的には、現代美術の「アート・フェア」が多過ぎると思う。たった10日前、ニューヨークを出る時に「FRIEZE」と「PULSE」が終わったばかりだし、バカ売れしたオークションも含めれば、とてもじゃ無いが作品も覚え切れないが、それでも価格は上がり続ける…日本の株価が、1日で1000円以上落っこちても、で有る。

世界のコンテンポラリー・アート・マーケットは、一体何処へ向かうのだろう?

達さんやコレクター達と旨すぎる「C」の飲茶を食べながら、そんな思いを強くした第1回「Art | Basel Hong Kong」でした。