「DOMANI(明日)」を救うのは、誰だ!

昨日は、顧客の古美術商を何軒か廻った後、夕方から「かいちやう」と共に、新国立美術館で開催中の「DOMANI」展レセプションへ。

この展覧会は、文化庁助成金に拠るアーティスト海外派遣研修制度の「成果発表の場」であるのだが、以前ニューヨークに居た友人のアーティストで、出展作家の一人である流麻二果さんから、お招き頂いたのであった。

さて、文化庁からの派遣と云う事は、国民の税金を使っている訳だから、国立美術館でその成果を観る権利が国民にあるのは、至極当然である。

以前此処にも記したが、この派遣制度は必要ではあるが、国はその制度内容を厳しくすべきであろう。帰国後の審査、そして審査の結果に因っては、国への奨学金の一部返済や国による買い上げ、派遣決定迄の審査の透明化等、解決せねばならない問題は山積みではあるが、こう云った展覧会が開催されるのは、何しろ重要で、国民が眼を光らせる事の出来る重要な機会なので、皆さん是非観に行く様に!

終了ギリギリに美術館に駆け込み、会場ではアーティストのミヤケマイさんや近藤聡乃さん等とも再会…旧交を温め、早速作品を観る事に。

さて、麻二果さんの作品は、抽象画では有るが有機的で、色が複雑に絡み溶け合い、或る意味エロティックですら有る。そして、この美術館の大壁面ホワイト・ウォールに掛かった彼女の大きな作品を観たのは、実は今回が初めてだったのだが、彼女の作品の色彩がより引き立ち、その色と抽象形状が、キャンバスからその外側迄、溢れ出す勢いであった。

以前麻二果さんに、筆者とゲル妻をイメージして制作依頼をした事が有るのだが、彼女が思うには妻は「青」、筆者は何と「白」のイメージだそうで、しかし筆者の「白」に関しては「そんな筈はない!」と何度も考え直したそうだが(笑)、どう考えても「白」にしか行き着かず、が描いて居る内に「青」と「白」が画面上で段々「エロく」交じり合い、「春画みたく為って来た…どうしよう!」と云って来た事も有った(笑)。

これは、麻二果さんの制作過程が何と無く想像出来る話で、人や物、観念等が「色」に置き換えられ、その関係性のケミストリーに因って、実在と空想(抽象)のあわいに、新たな「関係性」を生み出し表現している様な気がするのだ。麻二果さんの今後の活躍にも期待したい!

閉館後は、かいちやうと近所の行き付けのカフェ「L」で、近況報告を兼ねてお茶。旨いフワフワのレア・チーズケーキをシェアしながら、かいちやうの近著、香港でのレクチャーや「モノ争奪戦」の話などで盛り上がる。また、かいちやうのバースデーだった事も有り、可愛い「嘘もん」をプレゼント。

話は盛り上がったが、かいちやうとは再会を約して此処で別れ、夜は能楽師飲み会@「いるさ」へ。この晩のメンバーは「イケメン」シテ方観世流のH氏とS氏、S氏の美人「元能楽師」の妹Mさん、帰って来たゲル妻と筆者である。

実はこのメンバーは、不思議な「能縁」で繋がっており、事の発端は、先ず筆者が京都で偶然H氏と顧客を通じて知り合い(拙ダイアリー「『能縁』の日」参照)、後日メールをすると、H氏には仲の良い能楽師の先輩兄妹が居て、そのS兄妹はゲル妻と親しい様だ、との事…この事を妻に聞くと、彼らは芸大邦楽科能楽専攻の先輩・後輩で、実家に遊びに来る程仲が良いと云うでは無いか!世間は何と狭いのだろう。

数多の話で盛り上がったのだが、一番笑ったのは、H氏が京都駅で羽織袴姿で居た時(彼は新幹線等では、和服姿で移動する…これは素晴らしい事で、能楽協会は「和服での移動」を能楽師に義務化すべきである!)、近くに居た修学旅行の子供達がH氏を見て、何やらひそひそ話している…H氏が効き耳を立てると、「龍馬や〜」「武士や〜」と云って居たらしい(笑)。

今の日本の若者には、見つける事が極めて困難な、「姿勢が良く」「自信に満ち」「良く飲み良く食べ」「日本文化を愛し、大切にする」若手能楽師達…彼らを見ていると、日本の内向き若者を叩き直すには、1.徴兵制を復活させ、2年間の兵役を義務付ける、2.若しくは2年間海外でボランティアをしてくる、3.若しくは、2年間お能内弟子をする(笑)、しか無いだろう。

この話をしたら、イケメン能楽師達は、「3が一番きついねぇ」と笑っていたが、或る意味正しい答えだと思う。何故ならお能内弟子には、文化・教養・礼儀・規律・根性・頭の回転の、全てが求められるからで有る。

日本の「DOMANI」を救うのは、実は「能」かも知れない(マジです)。