「時差」を感じた、新橋の夜。

昨日は、今度は飛行機で「再び」日帰り出張…体が悲鳴を上げる。

機窓から見た山々や街は雪模様、目的地の気温は2度と寒い。が、素晴らしい作品の為には、そんな泣き言は云っていられない。

この土地は、緯度の割りに冬は寒く、雪も降る。飛行場からタクシーに乗ると、待っていたかの様に小雪が舞い始め、運転手さんに云わせると、朝から降るこの雪は「初雪」だそうだ。

そして、実際この日拝見した作品は、此処で詳しく云えないのが残念だが、この10年で筆者が観た、如何なる売り物の日本美術品の中でも、「ベスト5」に入る程素晴らしい作品であった。
仕事の局面で、本当に素晴らしい作品を、間近で長時間見ると、非常に疲れる。それは、興奮と幸福と真剣さ、そして作品鑑定と査定金額と云うモノ達が、頭の中を永遠の如く駆け巡り、しかしそれ等を整理した上で、「結論」を出さねばならないからである。

昨日、この大名品に対して筆者が下した決断は、かなり大胆なモノであったと思うが、「自分の下した決断に、過ちは決して無い」がポリシーである自分には、後悔はない…後は顧客の最終決断を待つばかりだ。

出張を終えて東京に帰ると、新橋の鮨屋「S」で夕食。ここの店主は骨董品にも詳しく、先付、小鉢、つまみ、鮨とも全て素晴らしい。「カニ蔵」ネタや「死ぬ程旨いけど、死ぬ程態度の悪い店」(勿論、この「S」は違います!)等、店主との話も盛り上がり、とても美味しく頂いた。

そして鮨の後は、以前この「S」の在った、小道を挟んだ向かいの場所に、最近店主が出したバー、「P」に。
このバーの店名は、矢沢永吉の曲のタイトルから取られているらしいのだが、一寸見ると、営業時間の事なのか?と云った不思議な名前。その2階建ての店内は、大正ロマン、若しくは京都の町屋風で、流れる曲はクラシック、1階のカウンターは10人で一杯の広さだが、2階の小さい個室には、何と「若冲」の軸がかかると云う、粋なバーである。

バーテン氏に勧められた、シャトー・ムートン・ロートシルトのカシス・リキュールを舐めたり、ジンジャービールやスペシャル・ノン・アルコール・カクテルを飲んだりして、時折カウンターで同席したお客さんと話したりしていたが、ふと留守電が入って居るのに気付き、外に出て聞いてみると、それはアーティストのMさんからであった。

留守電に残されたMさんの声は、何故か心細げで、聞くと「今歌舞伎町に来ているんですけど、『G』が見つからないんです…孫一さん、今何処ですかぁ?」のメッセージ。これを聞いた筆者は、一瞬絶句の後、往来の人々の眼も忘れて、1人大爆笑したのであった。

それは何故かと云えば、このMさんとは、「翌日」(今日)、筆者が企画したこの「G」と云う歌舞伎町のディープな中華屋での、「アート忘年会」で会う事に為って居たからである!

流石アーティストのMさん、アメリカ、ヨーロッパから帰国してもう結構経つのにも関わらず、未だ「時差」が有るらしい…「今晩」きちんと「G」でお会いできる事を、楽しみにして居ります!

そのアート忘年会の模様は、明日此処で報告を…乞うご期待!