ニューヨークでしか味わえない、日曜の昼下がり。

もう一年の1/3が終わってしまった。

年を取るに連れ、年々時間の経過が驚く程早くなるが、今年は今迄、震災やオークションの大成功等公私共に「好悪」の振り幅が異常に大きく、真の意味で「アッと云う間」で有った。

そんな中金曜の夜は、某民放プロデューサーのA氏と居酒屋ディナー。

A氏とはここ数年、筆者の仕事の取材等で顔見知りには為っていたのだが、今回の「Save Japan Benefit」の取材で大変お世話になった事も有って、食事をしようと云う事に為ったのである。震災後の日本復興の方法論や、政治経済に就いて等色々と話したのだが、驚いたのは、或る事から何とA氏が筆者の小中高の後輩と判明!…相変わらずの「縁」の強さを思い知る事と為った。

続く昨日の土曜の晩は、VIPクライアント氏と現代美術ディーラーのW氏との3人で、焼肉「T」でディナー。

「T」に一週間に2度行くのは初めてなのだが(拙ダイアリー:「外国から、今の日本に出来る事」参照)、流石にゲイの店員が筆者を覚えていてくれていて、妙に愛想が良い(笑)。食事中は、ガゴシアンの「ピカソ展」の素晴らしさや、サザビーズ・クリスティーズ印象派セール出品作品に就いて話しながらも、オトナな筆者は今週2度目の「T」と云う事で、ご飯も一膳のみと心もち「セーヴ」を試みながらも、センマイの刺身やユッケから何時もの焼肉迄、相変わらずの美味を堪能させて頂いた。

そして今日日曜は、素晴らしいお天気の中、妻と楽しみにしていた、友人のドイツ人現代美術家インゴ・ギュンターの「ステュディオ訪問」。お昼前に車で迎えに来てくれたインゴの車に乗り込むと、其処には現代美術史家の富井玲子さんと旦那さんで写真家のジェフの顔が…嬉しいサプライズで有った。

何とも気持ちの良い「ドライヴ日和」の中、トンネルを抜けニュージャージーのインゴのステュディオに向かう。学生時代、バイトでナム・ジュン・パイクの運転手をしていたと云うインゴ運転の車に乗るのは初めてだったが、時折見せる「加速」や「ハンドル捌き」の鋭さは、彼がドイツ人で有る事を思い出させる(笑)。面白い物で、マンハッタンから30分も走っていないのに、もう其処は「田舎」の様で、それはニュージャージーの空気が如何にニューヨークと異なるかを証明しているかの様で有った。

そうこうしている内に、インゴのステュディオの在る、古い倉庫に到着…案内されたステュディオには、インゴの最新のインスタレーション・ワークである「Gloves」が設置されていた。

この「Gloves」は本当に素晴らしい作品で、多種多様な色・文様・数字等に彩られた数々の「地球儀」が、内側からのライトに照らされながら、シャフトに支えられて薄闇のステュディオに浮かんでいる。そしてこの「地球儀」達は、例えば「地球が受ける太陽熱量の大小分布地図」だったり、「国家人口に対する刑務所数のグラフ地図」、或いは「出稼ぎ民族の移動分布地図」や「携帯電話の人口比所持数グラフ」だったりする、云ってみれば地球規模の自然・環境・政治・経済・民族に関する「統計」のアート表現なのだ。こんなにも美しくも、示唆に富んだインテリジェントなアートを観たのは久しぶりで、非常に感動した!

素晴らしいアート経験と為ったインゴのステュディオ訪問の後は、その近所のシーフード・レストランに行きランチ。

この辺一帯はポルトガル人居住区だそうで、小さな街全体が「小ポルトガル」で耳に入る会話も全てポルトガル語、空港が近い為に時折見える、低空飛行をする飛行機迄「TAPポルトガル航空」だったりして、まるでリスボンの下町に居る様な錯覚を覚える程だ。そしてもう賢明な読者には想像が付いているだろうが、このポーチュギーズ・レストランが、又信じられない位に旨い(笑)。

「付出」として出た、桃山時代以来日本人好みの味の「鰯のフリット」や「ミニ・コロッケ」とトーストしたパンから始まり、驚くべきビッグ・ポーションなのにリーズナブルな「海の幸スープ」や「烏賊のフリット」、「ハマグリのガーリック蒸し」や締めの「パエリヤ」迄、全てを5人でシェアして食す…云う迄も無く全てが「超ウマ」で、大満足。

帰りには、インゴお勧めの「ポーチュギーズ・スーパーマーケット」に皆で立ち寄り、これも超安い果物やプロシュートを購入…素晴らしいアートと食事とお天気、そして何よりもインゴに大感謝して、マンハッタンへと帰還した。

マンハッタンから来た日本人とアメリカ人が、ニュージャージーでドイツ人アーティストの考える「地球環境と世界経済のアート」を観、ポルトガル人に囲まれてポルトガル料理を食した「日曜の昼下がり」…ニューヨークでしか味わえない、リラックスした好い一日でした!