The Radiant Child-「バスキアのすべて」。

昨日は、昼過ぎから顧客に会い、「山の上」出身の天麩羅屋でご馳走になる…最後の「穴子天丼」が、最高に美味かった。

食事後2人の業者を訪ねた後は、一度家に戻って着替え、妻と久々の渋谷に出て、映画「バスキアのすべて」を観る事に。

この作品は、今年生誕50周年(!)のアフリカ系米国人アーティスト、ジャン・ミシェル・バスキアの「20年間以上、引き出しに仕舞われていた」映像を基に、アーティスト本人の友人に拠って作られた、ドキュメンタリー・フィルムである。

バスキアに関する映画と云えば、直ぐに思い出すのは、本作品にも登場しているジュリアン・シュナーベル監督の「バスキア」であろう。ジェフリー・ライトバスキアデヴィッド・ボウイが扮するウォーホル、その他ゲイリー・オールドマンデニス・ホッパークリストファー・ウォーケン、そして誰よりも美しい、大好きな英国女優クレア・フォーラーニ等、キャストの素晴らしさに加え、もしかしたら映画監督の方が、絵画よりも才能が有るかも知れないシュナーベルの演出が、際立った素晴らしい作品であった。

そしてこの「Jean Michel Basquiat-The Radiant Child(バスキアのすべて)」は、シュナーベル作品を補って余りある、と云うか、この2作品を観る事に拠って、かなりの確率で、バスキアと云うたった28年弱しかこの世に存在し得なかった、野心溢れるのアーティストの本質に肉薄する事が可能となる。

現代アート・マーケットに君臨する帝王達、ジェフリー・ダイチやラリー・ガゴシアンを始め、シュナーベルやシャーフ、ヘリング等のアーティスト、そしてバスキア本人の恋人や友人達の、「過去」に関するコメントはかなりリアルで、例えば現在精神科医に為っている恋人が語る、バスキアとマドンナの間に有った肉体関係や、ウォーホルとの親密関係に拠って自分の居場所が無くなってしまい悩んだ話等は、80年代ニューヨークの生々しい「過去」と共に、この「アーティストの真実」を浮かび上がらせ、その構成も実に良く出来ている。

また、大ブレークした後もシリアスな芸術家として扱われ無かった為に、アウトサイダー・アーティストとしてのみの評価に納得出来ず、「僕は、線一本一本迄、全て計算して描いているんだ!」と語るバスキアは、全くの無名のグラフィティ・アーティストから、「ウォーホルのマブダチ」に為っても尚、「本流」への強い憧憬を持ち続けた、永遠の「輝ける『アウトサイダー・チルドレン』」だったのだ。

最後に、この作品全編を通してフィーチャーされている、ラングストン・ヒューズの詩を紹介して、今日はお終い。


This is a song for the genius child.
Sing it softly, for the song is wild.
Sing it softly, as ever you can.
Lest it get out hand.


Nobody loves a genius child.


Can you love an eagle,
Tame or wild ?
Can you love an eagle,
Wild or tame ?
Can you love a monster of frightening name ?


Nobody loves a genius child.


Free him - and let his soul run wild.


「GENIUS CHILD」 by Langston Hughes