忙中「宴」有り。

寒かった昨日の日曜は、昼頃から活動開始。

腹拵えを蕎麦屋で済ませると、この日が最終日だったサントリー美術館の「写楽歌麿の仕掛け人 その名は蔦屋重三郎」展を観に行く。

結構シブい企画の展覧会にも関わらず、最終日と有って館内は中々の混雑。人を掻き分けて、作品を拝見する。

写楽歌麿をスターダムに押し上げた大プロデューサー「蔦重」は、実に興味深い人物で、今で云うマルチメディア・プランナーだ。「江戸版:おとなの特選街」こと「吉原細見」を出版したり、狂歌を詠んだり、お縄になって身上半減になったりと、調べる者を飽きさせない、「江戸の粋人」なのである。そして電子書籍化が進む21世紀の今、この「天才出版人」に焦点を当てたこの展覧会は、大いに意義が有ると思う。

下の階に下りて一休みしていると、太田記念美術館のH先生とバッタリ…ゲル妻を紹介し、ご挨拶。そして見終わった展覧会はと云うと、確かに非常に興味深い展示で有ったが、強いて云えば、展示されていた浮世絵版画の中に、状態がイマイチな作品が有り、其処が少し残念だったか…。

ミッドタウンを後にし、今度は青山のワタリウム美術館へ、「藤本壮介展」を観に…和多利さん、ご無沙汰しているが、お元気だろうか?。

この展覧会は、8月にニューヨークの友人建築家S氏に誘われたのだが、残念ながら時間が取れず、今迄延び延びになっていた物で、やっとの観覧となった。

この展覧会にはサブ・タイトルとして、「山のような建築 雲のような建築 森のような建築―建築と東京の未来を考える2010」と有る様に、建築が生まれる迄の過程をモデルや素描で見せながら、藤本氏が考える自然と建築の新しい関係性や、「想像」の重要性を問う試みの展示である。

天井から吊るされたり、床から林立する、モデルやドローイングの合間を縫って歩く展示は新しいが、六尺超の巨体の筆者に取って、擦れ違う人と作品にぶつからない様に観て廻るのは、まるで己の身体能力を試されて居る様で、非常に辛かった(笑)!

しかし、特に4階の「建築と東京の未来を考える」は興味深く、それは東京の下町で生まれ育った者として、歴史的に「坂」や「山」が、この街に住む者に取って重要な地理的・心理的ファクターであり続けている事を、十二分に知っているからである…「想像都市」としての東京、中々見応えが有った。

そして夜は、自宅から徒歩圏内に在る、知られざる中華料理店での、「忘年クリスマス」パーティー

メンバーは、最近ご近所さんになった作家H氏、ジャズ評論家のO氏、パリ在住フォトグラファーS氏、公共放送U女史と、我ら地獄夫婦…美味しい上海蟹コースを、ワイワイと楽しむ。

食後は、店から徒歩3分程のH氏宅にお邪魔し、お仕事から帰宅された「H氏妻Hさん」(U女史に拠ると、最近は「奥様」「旦那様」「家内」「ご主人」等は、放送では使えないそうで、「妻」「夫」のみが使用可能なのだそうだ!)手作りのデザート等、素晴らしいお持て成しを頂いた…しかし世の中には、美しく知的で、仕事が出来て料理が上手く、客に対してあれだけの持て成しが出来る女性が、現に存在する…そう、我が妻以外にも、である(笑)!

持参した「オバマ大統領就任パーティー」で出された、リベラルなワイン(笑)を傾けながら、話題も音楽、政治、文学、アート、恋愛迄大いに盛り上がり、しかし何時も思うのだが、例えば昨晩で云えば30代から50代、外国居住経験の有る人が多く、サッバリしていて、そして年齢性別を超えて「自然に」盛り上がれる人達との会話は、最高に知的で楽しく、大いに刺激になる。

時計の針も夜中を回り、最後は「作家の書斎」を拝見して、解散。そして今朝、フォトグラファーS氏はパリへ、ゲル妻は萩へと旅立ち、O氏もクリスマスからニューヨークとの事…多忙な皆さんが、時間を繰り合わせての、一晩の宴…楽しくも思い出深い、「忘年クリスマス」の一夜で有った。

忙中「宴」有り、いや「縁」有り、である。