「悲しきマロンちゃん」的近況。

10月25日(火)
20:30 ANA便が、珍しく30分早く成田着。機内では碌な映画が無かったお陰で、懐かしのドラマ「ロング ・バケーション」を遂に視聴完了。最終話、瀬名のコンクール決勝でのシーンに不覚にも感動して仕舞ふ。然しこの時代のドラマには夢や希望も有って、ドラマ初主演のキムタクも中々良い。到着後はディレクターT氏の出迎えを受ける…ここ10ヶ月程、T氏にはかなりの時間会って居るので、或る意味彼女・女房並みとも云える(笑)。一緒に神田明神にお詣り後、帰宅。


10月26日(水)
6:00 時差ボケの所為で夜中に何度も起きて仕舞い、それが故に良く眠れず、仕方無く起床。バナナ、豆乳青汁シェイク、サプリメント、お抹茶を頂く。

9:00 某雑誌への執筆の参考にする為、ビデオしか持って居なかった篠田正浩監督作品「写楽」(1995)と、溝口健二の「歌麿をめぐる五人の女」(1926)をアマゾンで注文。特に「写楽」は良く出来た映画だが、本作には当時漸く頭角を現し始めて居た、現代の「耕書堂」ことTSUTAYAが制作プロデューサーに入って居て、増田社長命名のその社名の由来も再確認出来る。

12:00 都内某ホテルの寿司店「N」で、VIP顧客ご夫妻とランチ。その後甘味処で「栗あんみつ」を頂き、今年も「マロンちゃん」のエンジンが掛かる(笑)。

14:00 某浮世絵商に赴き、最近興味を持って居る横浜絵を観る。一川芳員のモノが面白い。横浜絵は桃山時代の南蛮、江戸後期の江漢以来の「西洋文化上陸」絵画なので、先祖を横浜に在った外人相手ビジネスに持ち、今外国で日本美術を扱う僕が、この分野に年々親しみを持ち始めたのも宜なるかな

16:30 飯倉近辺の行きつけのフレーマーを訪れ、頼んで居た某額装作品の箱を受け取る。然し、日本で箱を作ると何で「黄色い袋」が付いて来るのだろう…「黄色」でなければいけないのか?赤とか白とか?

17:30 六本木某所にて、来日中のコレクターJ夫妻とミーティング。J氏は今年88歳で、日本の学者達が米寿のお祝いをしてくれるそうだ。その後ディナーは夫妻行きつけの「回転寿司」へ。昼夜異なった種類の、異なった美味しさのお寿司を頂いた…これも日本の食の醍醐味。


10月27日(木)
10:00 注文した「写楽」と「歌麿をめぐる五人の女」のDVDが届く。「写楽」のジャケットの葉月里緒奈が美しい。余りの嬉しさに、追加で市川崑の「天河伝説殺人事件」と「獄門島」、勅使河原宏の「利休」を注文する。能と俳句と茶の湯…日本文化を映画で観るのは愉しみの一つ。

12:00 都内某ホテルの天麩羅店「Y」にて、母親と昼食。相変わらずの母と、亡き父の誕生日(文化の日)に親戚を招いての食事会に就て打ち合わせをする。

15:30 オフィスに寄った後、同僚と某私立美術館の親会社を訪ね、担当者とミーティング。先は長い。

17:00 元イッセイ・ミヤケのデザイナー藤原大氏からの招待を受け、資生堂で始まった氏がディレクターを務める展覧会、「Link of Life エイジングは未来だ」展のオープニング・レセプションへ。この展覧会は、資生堂の社員と社外のクリエイターや研究者とのコラボレーションが、アート作品として展示される面白い企画。

19:00 銀座を後にし、今度はワタリウムで開催中の「ナムジュン・パイク展」のカタログ出版記念レセプションへ。レセプションには磯崎新氏や平凡社社長等名士も来て居て、本展覧会の共同キュレーター渡辺真也君と和多利さん姉弟に拠る、美しい力作カタログの出版を祝う。展覧会後期も素晴らしく、アップリンクで上映された渡辺君が監督をした映画「Soul Odyssey」の評判も良いみたい。プロデューサーの1人として嬉しい限りだ。

20:30 ワタリウムに一緒に行った友人と、青山「D」でディナー。相変わらず男前のシチリア料理に舌鼓を打つ。帰り際、送りに出て来たIシェフから「D」の開店10周年記念パーティーの招待を受け、「もう10年か…10年はひと昔、夢だ夢だ」と熊谷直実の様に呟く。


10月28日(金)
10:00 東博に向かい、開催中の特別展「禅ー心をかたちにー」と「平安の秘仏ー滋賀櫟野寺の大観音とみほとけたち」を観る。両方とも素晴らしい展覧会だが、個人的には「禅展」の後半が一番良く、矢張り室町絵画が素晴らしい。一点吃驚したのは、展覧会のカード・図録共「仙突」が「僊突」と記されて居た事で、何時からこの表記に為ったのだろう?確かに仙突は、略彼の人生終了直前迄「僊突」と名乗ったらしいのだが、今迄「仙突」で通って来たのを変えるのは、意識の上でも難しい。

12:30 代官山の行きつけ「O」で、オムライスと「栗のスフレ」を頂く。死ぬ程旨い「O」の栗のスフレは、「マロンちゃん」な僕に取っては遣り過す事の出来ない季節の風物詩なのだが、何しろ毎年2〜3週間程しか出さない。で、数年前にボンヤリして居てミスして仕舞った年が有って、その年の秋からの1年間は恐ろしい後悔に苛まれた…ので、今年は電話でいつ迄店で出されるかを確認の上食べに行った訳だが、その事を知ったムッシュ(シェフ)が悔いの無い様にと、何と「ダブル」で出して呉れて、大感激!またムッシュ情報に拠ると、今年は栗が不作で、「O」で出す期間も可なり短く為って仕舞ったらしい。成る程そう云われれば、今年はコンビニにも栗のデザートが少ない気がするのだが、如何だろうか?嗚呼、栗不足だなんて、マロンちゃんには悲し過ぎる…。

15:00 京橋の古美術店を訪ね、仏像を幾つか拝見する…が、交渉は上手く行かず、残念賞。

19:00 翌日の「海外から見た禅画:白隠と仙突」に関するレクチャーの為の準備をする。人前で90分間も話すのは、何度やっても緊張するなぁ。


10月29日(土)
3:30 時差ボケが取れず、何とこの時間に起きて仕舞ふ。今日はレクチャー、にも関わらずだ…大丈夫か、俺?

12:00 某TV局と、骨董フェア「目白コレクション」に向かう。「目白コレクション」は毎年行って居るフェアで、廉価な骨董や民芸品が多いが、時折掘り出しっぽいモノも有る。今回は幸い(笑)欲しいモノは無かったが、昔僕が持って居た仏像が出て居て、ビックリ…嬉しい再会で有った。

13:30 骨董フェアの後は、永青文庫で始まった「仙突ワールド」を観に行く。此処では仙突の「ゆるカワ」絵画を堪能したが、白隠と仙突とは何と異なる2人なのだろう。

15:30 朝日カルチャーセンター新宿で、「海外から見た禅画:白隠と仙突」と題されたレクチャーを行う。玄人・素人さんを含めた熱心な生徒さん達には、此方の方が元気付けられた。受講して頂いた皆さん、有難うございました!講義の終わりには、朝カル担当のAさんから来年東博で開催される「運慶展」のレクチャーを依頼され、受講者の皆さんにも発表される。来年はその「運慶展」と、奈良博での「快慶展」の揃い踏み… 仏像好きには堪らん1年に為りそうだ。

18:00 TV局ディレクターと共に、天王洲の寺田アート・コンプレックスに向かう。僕が今回初めて行く事に為ったこの場所には、アーティスト・スタジオと白金から移転して来た山本現代、URANO、児玉画廊、そしてYUKA TSURUNO等のギャラリーが入って居て、この晩はオープン・スタジオとギャラリーのオープニング・レセプションに乱入。URANOの淺井裕介展「胞子と水脈」では作家とも話す事が出来、以前都現美で観た「泥の絵画」を再見して、その迫力に唸る。児玉画廊の伊藤隆介「天王洲洋画劇場」は、その技術とコンセプトが面白く、特に「エクソシスト」が気に入った。が、一番驚いたのは山本現代で始まった西尾康之展「REM」。今回の西尾の新作は、レム睡眠をテーマとした3DCG作品の体験展示だが、虚無感漂う「数値的造形」は生々しくエロティックで、何処かロマンティック。素晴らしい作品だと思う。

20:30 白金の焼肉屋「J」で、ディレクター氏と作家と食事。美味過ぎる焼肉各種・冷麺・カレー迄を堪能…これで、明日も頑張れる!

22:30 余りの満腹と睡眠不足で撃沈。至福と云えば至福だが、年といえば、年(涙)。


明日からは京都主張。久々の祇園が僕を待って居る…かも知れない(笑)。それに付けても今年のマロンちゃん、一体どう為っちゃうんだろうか…(涙)。


−お知らせ−
*10月15日発売の雑誌BRUTUS 834号「現代アートと暮らしたい!」を、ほんの少しお手伝いしました。内容充実の本号、是非ご覧下さい→http://magazineworld.jp/brutus/

*12月14日(水)19:00より、青山の岡本太郎記念館にて開催される「舘鼻則孝 呪力の美学」展のアーティスト・トークに登壇します。詳しくは→http://www.taro-okamoto.or.jp/event/index.html

*12月16日(金)19:00-20:30、ワタリウム美術館での「2016 山田寅次郎研究会4:山田寅次郎著『土耳古画考』の再考」 に、ゲスト・コメンテーターとして登壇します。詳しくは→http://www.watarium.co.jp/lec_trajirou/Torajiro2016-SideAB_outline.pdf

*僕がエクゼクティヴ・プロデューサーを務め、「インドネシア世界人権映画祭」にて国際優秀賞とストーリー賞を受賞した映画、渡辺真也監督作品「Soul Oddysey–ユーラシアを探して」(→http://www.shinyawatanabe.net/soulodyssey/ja/)が、好評の為、来年1月21・24・30日の3日間、渋谷のアップリンクにて、リヴァイヴァル上映されます。奮ってご来場下さい!