猫と刺青と日本への恩返し。

最近のニューヨークはもう5月に垂んとして居ると云うのに、夜等有ろう事か再び3〜4度程の気温に逆戻りした日も有って、ダウンコートを永遠に仕舞えない…良い加減にして欲しい。

そんな三寒四温の中、オークションも終わって少々リラックスした先週末は、今迄行けなかった展覧会に向かう…先ずはマディソン街に在るRonin Galleryで開催されていた(先週末で終了)、「TABOO: Ukiyo-e and the Japanese TATTOO」展。

浮世絵や歌舞伎には「ヒール(悪役)」が付き物で、その中には当然893者が多い訳だが、そこで浮世絵版画ファンの中でも取り分け版画中に描かれた「或るモノ」に惹かれて集める人が居る…「刺青」で有る。

この展覧会では刺青を負った役柄の幕末役者絵を中心に、刺青師三代目彫よしの肉筆絵や下絵、須藤昌人に拠る彫よし作の刺青写真も展示されて居たが、「刺青」の底知れぬ魅力が十二分に味わえる展示と為って居た。

古今東西この刺青の魅力に取り付かれる人も多いが、取り分け日本の彫師の技術や構図力、アイディアの素晴らしさは群を抜いて居る…偏見等に負けず、日本伝統(工芸的)技術の一として、此れからも残って行く事を期待したい。

で、「刺青」の次は「猫」…向かったのは現在ジャパン・ソサエティーで開催中の大人気の展覧会、「Life of Cats-Selections from Hiraki Ukiyo-e Collection」だ。

平木浮世絵美術館のコレクションから猫の登場する浮世絵版画を集めた展覧会だが、展示会場の造りが凝っているのと(「猫の目」から版画を観る!)、何しろ描かれた猫達が愛おしい!JSのギャラリー・ディレクター手塚女史は、残念ながら今月末で退任されるとの事だが、本展の入場者数は可成り多いと聞く。手塚女史の最後の花道を飾る、素晴らしくも癒される必見の展覧会なので、是非訪れて頂きたい(本展は6/7迄開催)。

さて夜は夜で、頑張って居たロー・カーボ・ダイエットも数多のストレスで吹っ飛び、同僚や顧客、業界関係者や友人との食事を言い訳に焼肉や寿司、夜中の〆のラーメン迄を喰い捲ると云う、やさぐれた日々を送るワタクシだが、土曜日の夜は友人達と久し振りの歌会。

皆時間が勿体無いと云う事で、フライドポテトやたこ焼等のカラオケ屋特有の「これでもか!」的ジャンクな食事をしながら歌う事に為ったのだが、個人的にはやさぐれ気分の所為か「哀しい歌特集」に為って仕舞い、「シクラメンのかほり」「旅立ち」「心もよう」「One More Time」「嵐の明日」「最後の雨」「粉雪」等を熱唱する(涙)。

結局4時間に渡った、5人の歌い手に拠るAKBから天童よしみに至る「点数付き」歌会は、90点を3度も出した「歌のお姉さん」が優勝!そしてこの歌会は、グラフィック・デザイナーがしゃっくりが止まらない侭何とシートで爆睡…と云う異例の事態で終了したのだった(笑)。

翌日曜日は、昼はICP Schoolで開催されたシンポジウム「SHASHIN: Photography from Japan」の関連イベントで有る、写真家U氏の新作写真集のブック・サイニングに顔を出し、夜はそのU氏と和食店「K」で食事。

カウンター奥には闘病中の「教授」もお一人でいらして居た「K」では、季節の野菜を使った美味しい料理を頂きながら、U氏が大好きな骨董やモノとの「縁」の話、某州で最近撮って来たと云う某航空会社のCM、ハリウッドに持ち込みたい脚本企画話等で大いに盛り上がる…誠に楽しいひと時で有った。

そして一昨日の晩はと云うと、久々のチェルシー「B」でギャラリー・ディレクターのT、某美術館アート・ロイヤーSの両氏とディナー。

皆でバーニャカウダやエッグプラント、アスパラガスのアペタイザーを突きながら、来月開催のヴェニスビエンナーレや、7月3日からフランスはナントの「HAB Galeire」で始まる達っつあん(アーティスト西野達)の新作個展(→http://en.nantes-tourisme.com/event/tatzu-nishi-115982.html)、或いは美術館人事の複雑さ、日本近現代写真ブームの到来、将来日本に帰国するや否や等に就て熱く語る。

メインの段に為ると、リゾットやパスタを頼んだ友人達に対して、気の小さい僕は白身魚のグリルを注文し、ダイエットと云う名の自己満足に耽るが、その後話が東京オリンピックの開会式セレモニーに対する不安や、「近代の超克」ならぬ「現代の超克」、天皇制と憲法第9条の堅持や否やに及ぶと、外国歴の長い我々3人(その内1人はアメリカ生まれのアメリカ育ち)は珈琲のお代わり+デザートを肴に言葉が止まらなく為り、右翼か左翼か、或いは国籍もジェンダーも一切関係無く為り、盛り上がり過ぎる程盛り上がったので有った(笑)。

日本の将来を憂ふが故に、東京オリンピックを機に、藝術で何か日本に恩返しをしたひと思ひますが、皆さん如何でせうか?