少しは心が涼む話。

愛して止まない作家、ルシアン・フロイドが逝った。

ドイツに生まれ、子供の頃ナチから逃れる為に英国に渡った、偉大なる心理学者を祖父に、建築家を父に持つこの作家の死は、筆者に取っては今年接した如何なるアーティストの訃報の中でも、最もガックリした物で有る…不世出の偉大なる才能は、もう二度と帰って来ない。20世紀最高の作家の死を、謹んでお祈りしたい。

さて突然だが、70年代後半から80年代にかけて流行った、「ブーギ・ナイッ!」「レッツ・キーポン・ダンシン、キーポン・ダンシン!」と唄う、ファンキー・ナンバーをご存知だろうか?

この曲を演奏しているバンドの絶品バラード「Always and Forever」も超有名で、ディスコのチーク・タイムの定番だったのだが、何でこんな話をするのかと云うと、このバンドの名前が今のニューヨークを襲っているからなのだが、そのバンド名とは…「Heatwave」、所謂「熱波」で有る。

この中西部からやって来た熱波のお陰で、昨日のニューヨークは滔々華氏100度(摂氏37度)を超え、今日は何と102度…もう頭も体も「メルトダウン」状態である。死者も20人を超えたこの熱波、明後日には何とか収まるらしいのだが、我慢が出来ん…という事で、少しは気持ちが涼しくなる話題を(為るかな?:笑)。

それは昨日出た、クリスティーズの2011年度上半期の決算報告の事である。

結果から云うと、前年同期に比べ本年殿売上げは、20億ポンド(約2557億円)で、英ポンドベースで15%アップした!地域で見ると、ヨーロッパが前年比24%アップ、アメリカが13%のダウン、アジアが48%(!)のアップで中東が10%のアップであった。因みにオークションとは別物の「相対取引」である、「プライヴェート・セール」の売上げが凄く、前年比57%のアップで有った。

これを見るとアメリカの売上げが下がって居るが、これは昨年の世界最高価格記録を樹立した、例の106億円の「ピカソ」が今年無かった事が、大きな理由の1つである。しかし、今回のこの決算報告から見えて来るのは、世界のアート・マーケットが非常に堅調である事と、高額から低価格までの幅広いプライス・レンジで顧客が増えている事実、特にロシアと中国本土の新しい顧客層、また「メディチ」と呼ばれる、多種多様な分野の年代を問わず、「一級品のみ」を買い漁る富裕層の登場である。

例えばロシアの顧客は、印象派・近代絵画、オールド・マスター、20世紀装飾美術、現代美術を横断して買い、Greater China(中国本土、台湾、香港)の顧客は、中国美術、ワイン、そしてオールド・マスターに興味を深めている。また国で云えば、ブラジルからの買いが活発で有ったのが面白い。

上半期高額作品トップ10を見ると、1位がウォーホルの自画像で、現代美術と印象派近代絵画が5点ずつ入賞、しかし現代美術の5点は3位のピカソを除く1、2、4、5、6位を占めているので(ウォーホルとベーコンが2点ずつとロスコ)、事実上現代美術に引っ張られた上半期と云える…現代美術マーケット、恐るべしである。

日本・韓国美術部門も春は絶好調だっただけに、「何だ、また一発屋か…」と云われない様に、頑張らねば…皆さん、応援お願い致します!