「Conversation about Constitution」、或いは「夜の気晴らし」。

昨日に続いて、今日もオフィスで仕事…(嘆)。

これで、先週末とその前の三連休も出社したので、1月10日から1日も休んでいない事に為る…。今度の3月のオークションは、出品数も310点を超えるので当然調査・編集作業も大変なのだが、先日此処で記した「南蛮屏風」だけの為の「スペシャル・カタログ」も同時進行中、その上急なアプレーザル等も入って来たりで、もうヘロヘロである。

そんな此処の所の毎日なので、体と頭はこれ以上無いと云う程に疲れていても、今週末もその昼間の「反動」で、夜は外に出掛ける事にした。

先ず金曜の晩は、我が家の「プリンセス」が未だ体調優れない事も有り、学生時代の友人で、現在某機械メーカーの米国CEOとなってニューヨークに赴任しているTと、Tとの共通の友人でアート関係の仕事をしながら俳優を目指している若いN君とで、ミッドタウンの創作寿司店「G」へ。

この「G」は日本人の経営で、筆者が今まで食べた「創作寿司」で唯一許せると云うか、本当に美味しい寿司屋なのだが、8時過ぎに行った時も客は日本人・外人を含めて超満員。そしてこの日も、旧知のシェフAさんからの数々のサービスを含め、工夫を凝らした「寿司」と云うよりも、凝った「フィンガー・フード」と呼んだ方が相応しい料理の連続…相変わらず、本当に美味かった!

散々食べて、じゃあ次!と云う事になり、ミッドタウン某所で飲む事に。そして移動中、タクシーの中でふと赤ランプの点ったブラックベリーを見ると、畏友建築家S氏からのメールが入っていた。読んで見ると、来週彼は愈々引っ越す事に為ったらしいのだが、その新居の住所が何と我が「地獄パレス」から2ブロックの所…「スープも冷めない」距離では無いか(笑)。彼の仕事場等から、引越し先はトライベッカやヴィレッジを想像していただけに、かなり吃驚。しかし流石にS氏が選んだのは高層アパートで、彼の部屋も50階以上の見晴らしの良い部屋らしい。

と云う事で、久々のS氏も呼んで皆で一緒に飲む事に。聞くとS氏も念願の「情熱大陸」に出演するらしく、先週から取材が入っている…等の話で、結局夜中過ぎ迄盛り上がり、その晩はお開き。

そして昨日土曜日は、再び8時過ぎ迄オフィスで頑張った後、体調が戻って来た妻と久々にチェルシーの「B」でディナー。しかしこの「B」は何時行っても超満員で、昨日の晩も然り。美味しい烏賊のアペタイザー、好物の焼野菜のリコッタ・チーズ乗せ、シェフからの特製キノコ・スープ、ラムとキノコのラグー・スパゲッティ、そしてステーキをシェアして食す…あぁ、何て旨いんだろう…もうパラダイスである!言い訳がましいが、そして別にこの時期に限った事でも無いが、これだけ休み無く働いていると、いい加減ダイエットやら健康管理等、ハッキリ云ってどうでも良くなる。「これだけ働いてるんだから、誰にも文句は云わせん!お前等、俺のを食うのを黙って見てろ!」ってな具合である(笑)。

さて、開き直って食べ捲くっていたディナーの後半戦、友人のピアニストH女史が登場し、デザートにジョイン。そして今思い出しても、涎が出る位旨い「オレンジ・タルト」をエスプレッソで頂いていると、今度はこれまた友人で超音楽通のジェエリー・デザイナーN氏が登場し、この間のキース・ジャレットのコンサート(拙ダイアリー:「『遺言』の執行:An Evening of Keith Jarrett−Solo Piano Improvisations@Carnegie Hall.」参照)の話をする。

このキースのコンサートの事を記したダイアリーの翌日にも、実は何人かの方からメールを頂いたのだが、N氏を含めたジャズに詳しい人々の意見を聞くと、やはりキースのライヴ演奏での「ムラ」はかなり有名で、最近では10回行っても1回凄い演奏が有れば良いとの事。「B」のシェフTさんも、途中で帰って来てしまったとか…「ライヴに行くのが難しい」アーティストである。

そうこうしていたら、N氏の友人で我々も旧知のストーンズのべーシスト、ダリルが登場し一緒に飲む事に。ダリルとはN氏のバースデー以来(拙ダイアリー:「N氏のバースデーと、ダリル・ジョーンズとの一夜」参照)の久々の再会であったが、相変わらずの巨体と笑顔で非常に元気そう…今回のニューヨーク滞在は、自身のアルバムのレコーディングと子供の誕生日で多忙だそうだ(笑)。

そしてダリルも交えて総勢5人となった我々は、未だダリルも一緒にプレイをした事は無いが、意外にも特に彼の「歌詞」を買っていると云う、これも最近コンサートに行ったばかりの「プリンス」(拙ダイアリー:「『小さな巨人』:PRINCE@M.S.G.」参照)、ダリルが30歳の時に耳にピアスを空けた後に、母親に会ってそれを見つかった時に散々怒られたと云う話(笑)や、彼の最近の蕎麦打ち技術の進展具合、そして現在エジプトで起っている革命運動に就いて等を話した。

その中でも、エジプトの現状の話から日本やアメリカでの「差別」へと話題が移り、最終的に「憲法」(constitution)と云う物は、国民に対して「金」や「土地」を保障するもので無く、「平等なる権利」を保証する物だと云う話に。

しかしこの「権利」と云う物は、「義務」を果たさない者には行使する「権利」が無い物で有るのも事実で、こんな事は判りきった事だが、「自由」の概念が「制限」の概念の中で初めて存在する事と似ているが、国家が国民に求める義務と、国民が国家に要求する権利のバランスを保つのが、一番難しいのだろう。シカゴで保守的な黒人の息子として生まれ育ったダリルは(ピアスの話でお判りだろう)、時には「笑える」エピソードを絡めたりもしながら、零れ落ちそうな程に大きい眼をより大きくして、そう云った話を我々に真剣に語った。

帰り際、ダリルにキースのコンサートの話をしたら、「あぁ、アイツのライヴは『JOKE』だからな!」と云うので、「やっぱり大概の場合は『冗談』みたいな出来だったりするのか…?」と聞いたら、それは筆者の聞き間違いだったらしく、彼はもう一度「No, no, no...not "JOKE", I said "JERK"!」と大笑いして応え、「俺には、朝「祈り」として聞く『ケルン・コンサート』が有れば、充分だ」と筆者に冗談交じりに告げた…評価とは人それぞれである(笑)。

「休み無し」の気晴らしは、あっと云う間に、週末の夜の闇へと吸い込まれて消えて行った…休める迄、後一週間の辛抱である。