「スピーチ・セラピスト」のスピーチ:「SAG AWARDS」速報。

昨晩、疲労困憊の体を引き摺って家に戻り、あっさりとした夕食を食べた後は、非常に危険な状況で有るが(笑)アイスクリームを膝に抱えながら、TVで第17回「SAG(Screen Actors Guild)」アワードの授賞式を観た。

この「SAG AWARDS」は、全米映画俳優組合に加入しているメンバーに因って投票され、アカデミー賞ゴールデン・グローブ賞とは異なり脚本賞や音楽賞等の賞は無く、「俳優」に対してのみ与えられる賞なのだが、その権威と選考結果はかなり重要視されており、このSAGの結果が、3月のアカデミー賞に最も影響を与えるとも云われている賞である。

さて、注目の賞の行方は後で記すが、先ず注目した人物は「Lifetime Achievement Award」を受賞した、名優アーネスト・ボーグナインである。若い世代の人は、この俳優の名前等聞いた事も無いだろうが、筆者に取っては何とも忘れられない、個性的且つ味のある「顔」の持ち主の名バイ・プレイヤーなのである。「マーティ」でアカデミー主演男優賞を獲っているが、筆者はその映画は未見、しかしデビュー作である名作「地上より永遠に」や「ワイルド・パンチ」の用心棒役、「ポセイドン・アドベンチャー」での、主役ジーン・ハックマンに事有るごとに楯突く「目茶目茶『嫌な男』」の役等忘れ難いし、最近ではこれも大好きな映画「ガタカ」(イーサン・ホークジュード・ロウ主演の近未来SF映画:余り知られていないかも知れないが、素晴しい作品である!)で元気な顔を見せていた。

このボーグナイン、当年取って何と「94歳」らしいのだが(失礼だが、もうとっくに死んでいると思っていた!)、この授賞式での彼は本当に矍鑠としていて、歩く姿もスピーチ台に立った背筋も真っ直ぐ、白髪にタキシードとブラックタイが凄く格好良く、昔の「荒くれ者」的イメージは皆無であった。実はこのボーグナインを見る度に、いつも典型的な、顔は恐いが実直で真面目な「アメリカ人」を思い浮かべていたのだが、流石両親ともイタリア系だからか(笑)、何と5度も結婚しているらしい!受賞スピーチでは、自分が人生を掛けてきた軍人生活から映画の世界に入り、此れ迄俳優としてやって来れた事を組合に感謝、余りに格好良いルックスと話で、この渋い俳優をすっかり見直してしまったのだった。

そして注目の賞の行方はと云うと、先ず助演男優・女優賞はゴールデン・グローブ賞と同様で、クリスチャン・ベールとメリッサ・リオが2人とも「The Fighter」からの受賞、主演男優賞と女優賞も、これもゴールデン・グローブと同じコリン・ファース(「The King's Speech」)とナタリー・ポートマン(「Black Swan」)で、此処までは何の波乱も無く来たが、最後の最後にプレゼンターのドナルド・サザーランドが読み上げた、「作品賞」の代わりの「Best Ensemble賞」の「アクター像」は、「ソーシャル・ネットワーク」「ブラック・スワン」「The Fighter」「The Kids Are Alright」を抑えて、「The King's Speech」のキャストの元へと手渡されたのであった!

受賞スピーチは、舞台に上がった3人の主演俳優達の中で、この日に限っては「スピーチの苦手な王様」役のコリン・ファースでは無く、本作で王様のスピーチ・セラピスト役のジェフリー・ラッシュが、王様と王妃(ヘレン・ボナム・カーター)を従えて担当、図らずも「『スピーチ・セラピスト』のスピーチ」となった。

これで益々、アカデミー賞の行方が楽しみになって来た…頑張れ「The King's Speech」!