「BASARA」で行こう!

日曜は、時差ボケの体を引きずって、森アーツ・センター・ギャラリーで3日間だけ開催されていたアート・フェア(その後このフェアは、展覧のみとなる)「G-TOKYO」を見学。

15の国内有力現代美術ギャラリーが集い、流石の場所柄も有って、会場も普通のフェアとは異なりスッキリ、インスタレーションも美しく仕上がっていた。

入場すると、会場は人も疎らで一寸寂しい雰囲気だったが、そんなフェアの中で、筆者が気に入った作品を此処に幾つか紹介すれば、戸谷成雄「ミニマルバロック IX」@シュウゴアーツ、エドガー・マーティンズ@山本現代ヴォルフガング・ティルマンスワコウ・ワークス・オブ・アート天明屋尚「昇龍図」@ミヅマアートギャラリーと云った所。付け加えるならば、建築家中村拓志に拠る、ホールでのシャンパン・グラスを使ってのインスタレーションも、印象的な作品であった。

その中でも、天明屋の「縁起物」と題された今回の作品群の中の「昇龍図」は、正直非常に吃驚した作品だっのだが、それは何故かと云うと、展示されていたその作品は和紙の素地が只額装されているだけで、何度眼を凝らして見ても、何処にも「昇龍」が見えないからであった。

そして、その謎解きはと云うと、めでたくも有り難い「昇龍」を、天明屋は何と「水」で和紙に描き、その水で描かれた龍は、恰も龍が天に昇り消える様に「蒸発した」との事…因みに作家が龍を描いている様子は、「証拠」として、きちんと写真に残っているとの事である。

こう聞くと、この作品は天明屋作品にしては珍しい、所謂コンセプチュアル・アートの様でも有るが、三潴氏に拠ると、この作品は無事出雲大社宮司さんに拠って購入されたとの事…流石「コンセプチュアル・自然に帰す」お仕事の方である。

フェアを見た後は、ヒルズ内で場所を移動し、三潴氏と天明屋氏とのトーク・セッション「BASARA」に参加。

昨年、天明屋尚キュレーションの下、スパイラルで開催された展覧会「BASARA」を観れなかった筆者は、その後図録を買い求め読んではいたのだが、本人の口から聞く「婆沙羅」為らぬ「BASARA」のコンセプトを聴いてみたかったのだ。

さてイメージを写し出しながらの両氏のトークは、天明屋氏の「BASARA」のコンセプト、つまり縄文土器から始まり、刺青、デコトラやデコ電に至る迄の、日本文化に観られる「過剰装飾」美術と文化、そしてそれらの造形に多大な影響を与える、江戸期の「傾く(かぶく)=歌舞伎」に代表される、「反抗性」や「反体制性」の解説、そして三潴氏の日本現代美術への熱い思いが溢れ、大変面白かった!

この「BASARA」のコンセプトは、嘗ての辻維雄氏に拠る「飾り」を想起させる物が有るが、「下剋上的」発想が新しい…これも天明屋尚と云う作家自身が傾(かぶ)いているからで、そこに説得力が有るのだ。

来月ニューヨークのジャパン・ソサエティで始まる「Bye Bye Kitty」展にも参加する、この「傾き者」アーティストに、今後も期待しよう。

Born to Be BASARA !