「任侠の徒」健さんと、幸運だった従姉妹達。

しかし今回の地震津波は、本当に恐ろしくも酷い災害となってしまった。

今回の震災・津波に関しては、ニューヨークのテレビもかなりの時間を割いて報道している。そして、その報道内容は当然津波の映像や避難民の事も有るが、最大の関心はやはり「原発事故」の行方だ。これ以上の問題が起きない事を、祈るのみである。

さて金曜日、予想通りオフィスでは全く仕事に集中出来ない侭、複数の米国有力美術館の為に特別下見を開催。オークション前にこう云った大きい事故災害が起きると、2週間後に迫ったセールは全く売れないのではないか?と思われるかも知れないが、何を隠そう10年前の「9.11」の時も、オークションの1週間前にこのテロが起き、ひと月延期した末に開催したオークションはそれなりに売れたので、まぁ為るようにしか為らない、と云うのが本音である。

そして昨日土曜日は、早朝から「TV JAPAN」の緊急無料放送のNHKを観続けていたのだが、気分転換も必要と思い、以前からチケットを取っていた事も有って、友人のS君を誘い、ジャパン・ソサエティに「任侠映画」を見に行く事にした。

今回のこのフィルム・シリーズは、「Hardest Men in Town: Yakuza Chronicles at Sin, Sex & Violence」と題され、この日観た作品は全て1965年度の3作、高倉健主演、石井輝男監督作品の「網走番外地 望郷篇」、同じく高倉健池部良三田佳子主演、佐伯清監督の「昭和残侠伝」、そして鶴田浩二高倉健佐久間良子主演、加藤泰監督作品の「人生劇場 飛車角」で有った。

正直こんな時期に…とも思ったのだが、こう云う時こそ「任侠」の精神がパワーをくれる、とも云えるのでは無いか。そして念の為に云っておくが、これらの作品を「ヤクザ映画」と呼ぶのは、決して正しくない。「任侠」と「ヤクザ」と「暴力団」をごちゃ混ぜに思っている人が居るかも知れないが、この辺はしっかりと区別しなくてはいけない。「健さん」は決してヤクザや暴力団員ではなく、「任侠の徒」なのである。「任侠」とは、弱きを助け強きを挫く気性に富んだ男の事で、仁義を重んじ、家族兄弟を大事にして「筋」を通す男を指すので、ヤクザやチンピラとは「男の格」が違うのだ。

そしてこの3作に出演している「健さん」は、マジに格好良い。何しろ殺しに(敵を討ちに)行く時の鬼気迫る顔と眼付き、着流しの格好良さ、必ず半裸になる逆三の上半身と、背中に咲く桜や唐獅子牡丹の刺青、ニヤッと笑った時の可愛さ…これらの全てが、一緒に観たS君も云っていた様に「あぁ、健さんの汗を拭いてあげたい…健さんにオレの汗を拭いて貰いたい…!」と、彼の映画を観る全ての男達に思わせるのだ!ゲイのアイドルなのも、完璧に納得出来る(笑)。

3本の中では特に「昭和残侠伝」が良かったが、健さんの男の色気と、若き日の特に佐久間良子の美しさに溜息を吐きながら、S君とジャパン・ソサエティを後にすると、ディナーは建築家Sとその友人のOさん、S君、プリンス妻と、久々の「T」で。眠い眼を擦りながら、原発問題や「ソーシャル・ネットワーク」等で激論を交わし、夜中1時頃終了。そして今朝からは再びNHKを観続けていたのだが、そこに東京の親から朗報が!

仙台住で、行方不明だった従姉妹のMが避難所で見つかったのだ!世界中の友人、同僚、顧客、祈祷までしてくれたユダヤ教ラバイ、心配して頂いた皆様、有難うございました!Mは震災後、逸れてしまった旦那と帰省していた娘を探していたそうで、しかし今日やっと連絡が付いたとの事…その知らせに涙が出た。

そして実は、もう一人秋田県在住の従姉E(筆者には、20人以上の従姉妹・従兄弟がいるのだ)も、「あの時」仙台に居た事が判った。Eは県立大学の非常勤講師をしているのだが、この日仙台会場での入試の試験監督官として行っていたそうで、地震直後、揺れが少し収まったのを感じたEは、友人の手を取り猛ダッシュで外に飛び出し、其の侭駅まで走り続けると、何と地元(秋田県日本海側の某街)行きのバスが、バス停に停まっているでは無いか!これは神のお導きだと感じたEは、友人の手を引っ張りバスに乗り込み、運転手に「早く逃げなきゃ!」と、無我夢中で叫んだそうだ。運転手の「判った!」の声で、数人を乗せたバスは走り出し、其の侭何と7時間掛けて地元迄走り続け、無事たどり着いたのだそうだ。

驚くべきは、余震もかなり有っただろう時に、崖崩れも道路の断絶も、落盤・落石等何一つとして、そのバスの行方を阻む物が無かった事なのである。流石若い頃から度胸満点のE、その決断力に頭が下がると共に、彼女の運の強さにも脱帽である。

Mに拠ると、避難生活は本当に大変で、周りの状況、亡くなった知り合い、そしてこれからの事を思うと当に「悪夢」だそうだ…何も出来ないが、応援するしかない。しかし未だ不明の方には申し訳無いと思いつつも、やはり身内の生還は嬉しい…本当に良かった!