日本だけでは、無い。

梅雨の様な長雨が続く近頃のニューヨークだが、時差ボケと戦いながらの下見会セッティングは地獄だったが、何とか明日開場出来そうだ・・・ヤレヤレである。

そして毎年9月のオークションに為ると、必ず下見会期間中に「9・11」がやって来て、しかも今年の「9・11」は何時もの年と違って、東日本大震災から丁度半年、そして「9・11」から丸10年と云う、ニューヨークに住み「9・11」を経験した者に取っては、かなり特別な感情を持つ日に為るだろう。

しかしニューヨークに住んでいると、当たり前だが数多の国籍の人が居るせいで、恐らく日本に居るよりも「世界」をよりより広く感じ、全く持って当たり前なのだが、「震災」が起きた国は何も日本だけでは無い事に日々気付かされる。昨年1月12日に起きたハイチの大地震もその1つで、震災に因る死者は推定32万人に及び、これはスマトラ津波と共に、単一の震災としては世界史上最大級の物で有った。

その上、ハイチと云う国は政情不安定に加え経済基盤が弱く、未だ復興侭為らないばかりかコレラや略奪等も起こり、その兆しすら見えない。ハイチ人の友人を多く持つ妻から彼女の友人達の話を聞くと、余りに悲惨で、東日本大震災と比べる事自体が無意味な事は重々承知だが、ソマリアの飢餓問題と同様、本当に何とかしてあげたいと思う・・・が、寄付位しか出来ないで居るのが現状だ。

そこで今日の話題。クリスティーズは来る今月22日の夜7時、「Artists for Haiti」(→http://artistsforhaiti.com/home)と題された、ハイチ救援の為のチャリティ・オークションを開催する。

このオークションは、「Meet the Parents」等で有名な映画俳優ベン・スティラーが昨年設立した「Stiller Foundation」とギャラリストDavid Zweinerが中心となり、当社が協力して行なう物である。この「Stiller Foundation」は、ベン・スティラーがハイチの子供達への教育支援などを目的に設立された財団で、震災以来1年半の時を経ても一向に復興しないハイチの子供達の為に、この3者が立ち上がった。

オークション出品作品は現代美術作品26点のみだが、内容は中々充実していて、作家名を此処に挙げるとダン・フレイヴィンやシンディ・シャーマンブルジョワやクーンズ、チャック・クローズやジャスパーなどの大御所から、今を時めくウルス・フィッシャーやデュマス、ペイトン、シシリー・ブラウン等の豪華な顔触れで、価格帯も下値4万ドルの作品から、上値120万ドルの作品(フレイヴィンの大作「"monument" for V.Tatlin」)と幅広く、品質も素晴らしい強力なラインナップ・・・クリスティーズはこの「100%ドネイト」されるオークションに於いて、「100% SOLD」と1000万ドルの売り上げを目指している。

下見会は14日迄はDAVID ZWIRNER(525 W.19th Street)、17日から20日までは当社クリスティーズで開催される。また「GALA」は23日7時半から「SKYLIGHT SOHO」で行なわれる予定で、スティラーやクリントン元大統領も出席予定…非常に楽しみな催しでは無いか!

子供の頃、友達が持っているおもちゃを買って貰えなかったり、食事で残したり我侭を云ったりすると、必ず親に毎回こう叱られた。

「世の中にはお前より貧乏だったり、明日の命さえ確かでない人達が沢山居るんだから、贅沢を云うのは止しなさい!」

そして思春期に為り、今と為っては本当に詰まらない事で悩んだりしていると、

「自分が世界で一番不幸な人間等と、絶対に思ってはいけません。世界の人に笑われます!」

今こう云う事を声を大にして云う人が、余り見当たらない気がする…自分が不幸だったり、大変だったりする時程、今一度世界を見渡して自分の置かれた境遇を考える事も、必要なのかも知れない。

さぁ、明日から下見会が始まる…日本の、そして日本美術の為にも頑張らねば!