外国から、今の日本に出来る事。

25度を超えそうな暑い日だった月曜日、「SJB」(→http://savejapanbenefits.org/)のチャリティ・コンサート・シリーズの立案者、ジョン・ゾーンが偶然にもウチの会社の下見会に来、偶々バイトをしていたゲル妻とばったり会ったりして吃驚したその晩は、友人2人とダウンタウン焼肉屋「T」でスタミナを付ける。

メンバーはご存知「フード・メイト」のジャズ・ピアニストH女史、チェルシーの有名画廊「P」勤務のTさん、ゲル妻と筆者の4人…このメンバーを選択した時点で、臨戦態勢は整ったと云っても過言では無い…3人の「カルビスト修道女」(拙ダイアリー:「『カルビスト』の誕生日」参照)と筆者との、「カルビスツ・ウォー」開戦である(笑)!

オーナーと友人でも有るTさんのお勧めで、先ずはスパイシー枝豆、ユッケと「白味噌モツ煮込」を頼むが、何とこの「煮込」の時点でもう全員「白飯」が欲しくなり、始め白飯の上に煮込を掛けて食べていたが、このバカウマの煮込の「汁一滴」も無駄にしない様にと、逆に煮込みの取り皿の方に白飯を入れ、浸して食し始めた…あぁ、先が思いやられる(笑)。

ジョージ・コンドの話等で盛り上がりながら、怒涛の勢いで初めて食す「網で焼く『すき焼き』」(これも本当に旨い!)や、定番の「厚切タン」やカルビ、中落カルビやミノ等を「お代わり」しながら食べ続け、最後のソフトクリーム迄完食。此処で告白するならば、今週は何を隠そう、月ー土の全ての夕食に予定が入っていて、「食べ過ぎ注意報」が発令されているのだが、初日からこれでは、全く以って先が思いやられる(再笑)。

そして昨日は、夕方からゲル妻と旧知の現代美術家S氏をチェルシーのスタジオに訪問…氏の最新作等(立体もある!)を拝見しながら、コレクターとしても著名な氏の最近の戦利品の話等をする。S氏のコレクションはかなり多岐に渡っており、その余りの数寄観「S好み」の為に、時折理解不能に陥る「モノ」が有ったりもするが、しかし氏の説明を受けた後には、それ等も「美術品」としての存在感を増すのだから、誠に不思議である。氏は或る種、良い意味での「錬金術師」に違いない(笑)。

その後場所を移動すると、お待ち兼ねの「茶室」拝見タイム。

S氏の茶室は未だ建設中なので、此処に詳しくは記さないが、何しろ日米から選りすぐった材料を調達しての、「ニューヨーク・ロフト」の構造を存分に有効利用した現代的な造りで、素晴らしい。茶室に関わる全ては、凝りに凝った素材やアイディアの数々はS氏ならではの物で、窓から見えるハドソン河や隣のビルの貯水槽等も、「如何にもニューヨーク」の借景となって居て溜息が出る…陽がハドソン河に沈む頃の茶事や、窓に雪の降るのを観ながらの「夜咄」、簡単な能の「仕舞」や「一調」でもしたら…等と勝手に考えるだけで、「涎」の出るのを禁じえない程だ(笑)。当代きっての、真の意味での「数寄者」S氏の創意、完成が余りに待ち遠しい。

見学後は3人で、スタジオ近所のテラスの有るイタリアン、「B」でディナー。美味しいイタリアンを食べながら、S氏の歴史やコレクション、ニューヨークでの日本文化紹介の未来や、日本再生の為の政治的・文化的政策について迄、余りに興味深い話を聴き、語った。

さて、そのS氏との話の間も思ったのだが、それは最近有志皆で頑張ってやって来た2つの震災復興救援キャンペーン、「SJB」と「Love Art & Help Japn」も概ね軌道に乗り、ニューヨークから発信する所謂「日本支援活動」も、そろそろ別段階へと移行するべき時期ではないだろうか、と云う事で有る。「LAHJ」に就いては、このひと月の間皆をリードして本当に頑張って来た、藤高晃右君の直近のブログに詳しいが(→http://blog.kosukefujitaka.com/2011/04/love-art-help-japan.html)、こう云った運動は当然続けて行くにしても、「今、ニューヨークから日本に対して出来る事」は未だ他にも有るのでは無いか、と云う意味である。

そしてそれは、若しかしたら「義援金」や「物資」、「勇気」等では無く、「提言」若しくは「外圧」なのかも知れない。何故なら、この侭金銭・物資等の支援を世界中から受け続け、そしてそれなりの復興をしたとしても、外から見ると、我が国が再び「内向き」「島国根性」の「元の木阿弥」に為る事が、余りにも「当然」の如く思えるからなのだ。

これだけの災害事故が有っても、未だ「原発推進派」が選挙に勝つ。誰一人、責任を取り切るリーダーも出て来ない。この期に及んで、人の足を引っ張り、責任の擦り付け合いをする…普段は楽観主義者の筆者も、こう云った状況を見ると段々と悲観的に為って来るのだが、こうなったら世界的・地球的見地から日本を見る事の出来る、視野の広い各分野で活躍するニューヨーク(海外)在住日本人や日本寄りの外国人の知識人達が、嘗て外国人が乗って来航した「黒船」に乗り込む気概で、例えばジャパン・ソサエティ等が中心となって会議を開き、今世界は日本をこう見ている、こうなって欲しいと思っている、こう為らねばならないと云った厳しい「日本への提言」を採択し、全世界メディアを通して日本に送る、と云うのはどうだろうか…日本に帰化を決められたドナルド・キーン氏にも、ガツンと一言云って頂きたい位である。

「支援」はお金や物資、声援だけでは無い。外国に居る我々にしか出来ない、考える事の出来ない「啓蒙」や厳しい「叱咤激励」も、母国への重要な「支援」だと思うのだが。