「マヨ千代」デビュー@杉本茶室「今冥途」。

今日は先ずは、先日の「グラミー賞」から。今回は賞の行方に殆ど関心が無かったので、そのステージだけを楽しみにして居たのだが、幾つかには眼を瞠り、正直幾つかにはガッカリした。

では「Disappointing」の方から…先ずは、授賞式最初のパフォーマンスだった、Beyonce & Jay-Z。ダンスなどの動きも余り無く、彼女の「尻」ばかりを追い掛けたカメラもカメラだったが、イマイチも良い所だった。

Pinkの宙吊りも飽き飽き…が、それにも況して最悪だったのは、クラシック・ピアニストのランランとメタリカの、意味不明な共演だ。そもそも筆者は、ランランを今迄一度足りとも良いと思った事が無いのだが、それは彼のピアノにニュアンスが全く無く、テクニックを誇示し過ぎる上に、ミーハーさと野心が表に出過ぎて居るから。メタリカも、良くランランなんかと共演したと思う。

それに引き換え「Brilliant !」だったのは、ジョン・レジェンド。今回の「All of Me」のパフォーマンスは素晴らしく、TV前の筆者も正直感動して仕舞った程だ(→http://www.xclusiveszone.net/2014/01/video-john-legend-all-of-me-live-at-56th-annual-grammy-awards/)!

また、ナイル・ロジャースFreak out !)とスティーヴィー(& オマー・ハキム!)が登場したDaft Punkも、曲が中々カッコ良いのと、ナイル独特のギター・フレーズがファレルのキャラにマッチして居て、結構楽しめた(→http://www.hollywoodreporter.com/news/daft-punk-stevie-wonder-pharrell-674151)。

が、もう一組忘れて為らないのは、キャロル・キングとサラ・バレリスの2人が、メドレー・アレンジをしたお互いの名曲「Beautiful」と「Brave」を、ピアノ2台で弾き語り合ったパフォーマンス(→http://www.hollywoodreporter.com/news/carole-king-sara-bareilles-perform-674200)。お互いに、アーティストとしてリスペクトしている、と云う感じが良く伝わり、しかも曲が素晴らしい上に歌が上手い…これ以上、何を望もうか!

そんなグラミー賞も終わり、明日は愈々ニューヨークで初開催だと云う「スーパー・ボウル」…何と、もう2月で有る(汗)。

そして進行中の2冊のカタログ編集も大詰めだが、先日その合間を縫って、マヨンセと今年最後の「新年会」に出席して来た。場所はチェルシーに在る、現代美術家杉本博司氏の茶室「今冥途」…そう、杉本氏主催の「大新年会」で有る。

今回のメンバーは、日本から到着したばかりのアーティスト須田悦弘氏をスペシャル・ゲストに、若手アーティストやアート・ディーラー、ライターやニューヨークでも大人気のラーメン店Bの店主氏、杉本ファミリーや杉本ステュディオの方々、そして我ら地獄夫妻とこれも来紐育したばかりのマヨンセ姉等の、総勢約30名。

さて今年の「新年会」は、先ずは氏の茶室「今冥途」での「余興」を1時間程楽しんだ後、階下のステュディオでお酒と「邪道な寿司」(笑)を頂く、と云う趣向…が然し、今回の「余興」は只の「余興」では無かった!

此処で話は、その前の晩に遡る。夜仕事から疲れて帰って来ると、マヨンセの眼が三角になって居て、着物を出して、取っ替え引っ替え着ては筆者に意見を求めて来た。

「黒紋付の『着流し』」にするか、「淡い色の着物に『袴』」にするか、はたまた『黒紋付』に『袴』」にするか…その理由は杉本氏の依頼で、この晩の「余興」の1つとして「今冥途」の茶室を舞台に見立て、琴奏者の黒澤有美さんと「即興」共演する事になって居たからだ。

マヨンセと有美さんは、以前1度(2セッション)「即興パフォーマンス」共演をしているが、その時の2人の呼吸やタイミングはかなり相性が良かったので、今回もかなり期待が出来る。が、唯一の心配は、元能楽師のマヨンセは今迄「板」(或いは、固い地面)の上でしか舞って居らず、「『摺り足』や『踏み』の出来ない『畳』上で、どう舞うのか?」と云う事で有った。

況してや狭い茶室の畳の上と為ると、「仕舞」と云うよりは「地唄舞」的に舞わざるを得ない。とすると「袴」では可笑しいし、開け放たれた上げ畳の茶室を舞台とし、観客席と為る下の立礼席から観上げる、と云う「今冥途」の仕様からすると、これは座敷舞踊的に「黒紋付」しか無いのでは無いか…しかも、依頼主が杉本博司氏だけに「モノクローム」こそ最適、序でに扇も「金」を止めて「銀」にする事で、漸く夫婦間で合意する。

そしてマヨンセはこの晩、井上八千代ならぬ「桂屋マヨ千代」へと、トランスフォームしたので有った(笑)。

「今冥土」に到着すると、先に来ていたマヨ千代はもう黒紋付に着替え、有美さんも琴の準備完了の様子。そして杉本氏ご子息のK氏は、その後のカラオケ大会の為のキーボードの調整、S君もギターのチューニングに余念が無い。そしてゲストが三々五々やって来て、いざ「新年会@今冥途」が開幕!

昨年末の大カラオケ大会でも着用された、アメ横で見つけたと云う「ゼラチン・シルバー・ジャケット」(笑)を再び纏った杉本氏の挨拶、有美さん&マヨ千代の紹介の後、有美さんの「一弾」を以ってパフォーマンスは始まった。

たそがれた茶室に琴の音が暫く響くと、水屋口からマヨ千代が静かに登場…仕舞を基にした、ミニマル且つ超スローな舞が始まる。そしてマヨ千代が時折見せる、能には無い足の動きは、裾から出た足のチラリズムに仄かなエロティシズムが有り、謂わば京舞で舞妓が芸妓に為る時にしか舞わない「黒髪」的要素が見える。これは前の晩に、衣装を「黒紋付着流し」と決めた故の動きだったか。

今回も、有美さんの素晴らしい琴の即興演奏との相性もバッチリで、欲を云えばもう少しマヨ千代に「序破『急』」が欲しかったが、如何せん畳上では、仕舞の様な「急」の動きは難しい…致し方無い処だろう。

そして、緊迫した有美さんとマヨ千代の15分程のパフォーマンスは、盛大な拍手を受けて無事終了。続いて有美さんの琴の伴奏に拠る、杉本氏の「竹田の子守唄」でカラオケ大会が開宴した。

が、何と云っても全員未だ「飲酒前」だった為、歌い手も聴衆もノリが今1つで、緊張感も隠せず(笑)、次の演し物は実は杉本氏ご子息K氏の弾き語りだったにも関わらず、急に順番を振られたワタクシは(これって、忘年会と全く同じパターンじゃ無いか!)、結局K氏のピアノ伴奏で「マイ・ウェイ」を熱唱する羽目に。

その後K氏の「オネスティ」弾き語り、S君のギター伴奏に拠るホストの娘さんSさんの「喝采」等を経て、カラオケは「一先ず」終了…皆階下のスタジオに降りて、今度は宴会開始と為った。

宴会のメインディッシュは、上に「邪道な寿司」と書いたが、これが何とハーレムに在る文字通り「邪道」な寿司屋のお寿司で(笑)、店の名前とは裏腹に味は大層宜しい。K女史の昔からの友人だと云うオーナーのN氏は、元々FIT(Fashion Institute of Technology)でデザインを教えていたらしいのだが、趣味のワインが昂じて滔々「ワインに合う寿司屋」に為って仕舞ったとの事…ニューヨークには、本当に面白い人が居る物だ。

そして宴も酣、和気藹々と話も酒も進んだ頃、S君のギター伴奏に因るホストのオペラ曲が始まったのだが、後から考えると、それは単なる「序章」に過ぎなかったので有る…。

何故なら6時半から始まったこの会、9時半過ぎには少しずつゲストも帰り始め、スタッフもテーブルを片付け始めていたのだが、有志が「今冥途」に戻ってカラオケを始めた事に因って、その後数人がジョイン、最終的にはホストを含めた10人程が、結局夜中12時半迄歌い続けたからだ!

K氏のキーボードとS君のギターに伴奏された、「なごり雪」「愛の讃歌」「シクラメンのかほり」「霧の摩周湖」「別れのサンバ」「木綿のハンカチーフ」「Hey Jude」等のポップから、全員で斉唱させられた、もとい、斉唱した(笑)「君が代」迄、大変な振幅の選曲だったこの晩の「生カラ」だったが、「トリ」は勿論ホスト氏の「いい日旅立ちスペシャル』」で有る。

この非常に特殊な「いい日旅立ちスペシャル』」は、筆者も実は初体験…得も云われぬ味わいが有って(笑)、素晴らしく可笑しい。そして宴の後、思い起こせば「飲酒後」の生カラの最中に、何度も何度も「『次』までに練習だな」と云うフレーズがホスト氏の口から出て居た事からすると、「次」が有る事これ必須…「練習」しとかなきゃ、で有る(笑)。

何れにしても、記念碑的な「マヨ千代」デビューの巻でした!