さらば香港、バースデー・ボーイズ、そして「引き」の強さ。

前日の熱狂的な「中国近代絵画セール」の余韻を引き摺りながら開催された、一昨日の「中国古器物セール」。

開催された4セールは,計8億2971万2250香港ドル(約87億円)を売り上げたが、トッブ・ロットを含んだ2千万香港ドルクラスの高額商品が売れず、少々苦しい場面も有った…が、しぶとく売り抜けた様にも思う。
しかし会場の雰囲気は、前日の絵画セールの熱気とは比較に為らない程冷静で、作品を選んでビッドする顧客達の姿が、オークション・ルームに見受けられた。
そして、この「中国古器物オークション」を以てして、5日間に渡りワイン・宝石・時計・アジア現代美術・中国絵画・中国器物等の、10以上のオークションを開催した、クリスティーズ香港の春のシーズンが終了。

この春シーズンに於ける、5日間に及んだアジア美術オークションの売上高総計は、凡そ27億3000万香港ドル・3億5100万米ドル・286億3700万円で、前年同期比64%、昨年の秋シーズンに比べても15%のアップで有った。

この結果を踏まえ、その上で全セールに立ち会った者の「私見」を述べさせて貰えれば、中国美術市場は未だ「絶対的に」拡大し続けている…が、バイヤー達は、思ったよりも冷静に為って来ている様に見えた。

此れには、前に此処で述べた「デポジット・システム」の影響も有ると思うが、メイン・ランド・チャイナの顧客達の眼が、確実に肥えて来ている証左だろうと思う…中国と云う国は思ったよりも、何時も広く「賢い」のである。

「食べ過ぎ」香港に別れを告げた、昨日の帰りのANA便では、同機で帰国する日本人顧客達と、セール結果や市況等について歓談。

その中に「永遠の青年風貌」を持つ、中国美術の超有力ディーラーI氏が居らしたのだが、何と昨日はI氏のバースデーとの事で、その話をしていたら、客室乗務員の1人が其れを聞き付け、飛行中の機内で「お祝い」が始まった。

此れだけ飛行機に乗っている筆者だが、実際に「誕生祝い」を機内で見るのは、生まれて初めて。客室乗務員3人が「特製デザート」(通常食後のデザートは、小型のハーゲンダッツヴァニラ・アイスクリームなのだが、それをスクープして皿に盛り、ソースを掛けて「花」を添えたモノ!)を持って来て、隣席の我々も御相伴に預かり、シャンパンで乾杯する。

そして客室乗務員3人が、揃って「I様、お誕生日おめでとうございます!」と云うと、I氏も満更でも無い笑顔。流石に機内なので、キャンドルと「ハッピー・バースデー」は無かったが、緊張の解けたオークション後の、微笑ましい1コマで有った。

その後、神保町には夜8時過ぎに到着。久々に「B」に顔を出すと、何とこの日2人目のバースデー・ボーイの建築家O氏(兄)にバッタリ…此方ではキャンドルを立てた美味しい「ベルギー・チョコ・テリーヌ」と「ハッピー・バースデー」の合唱でお祝い。

その上、今朝出張の為に6時発「のぞみ1号」に飛び乗り、席を探して車内を歩いて居ると、歌舞伎関係のA専務にバッタリ…相変わらず「人」の引きが強く、本当に悪い事が出来ない(笑)。

車窓から見る富士山の美しさに溜め息を吐きながら、このダイアリーをアップしている孫一がお伝えしました。