川の流れのように。

米ドルが78円、ユーロは96円、株価は8500円割れ…こんな三重苦な日が、やはりやって来た。

そしてユーロの状況は極めて危機的で、世界経済が窮地に立たされた今、意味不明な原発再稼働とこの円高地獄の中、日本は本当に生き延びる事が出来るのだろうか?

そんなこんなで憂鬱な筆者は、これから「上流」へと帰る為に、香港国際空港のラウンジに居る。

さて一昨日、クリスティーズ香港の春の「アジア・中国美術セール」が終了した。

シーズン最終日は「器物」の3セール…先ずは七宝作品の個人コレクション・セール、「Masterpieces of the Enameller's Art from the Mandel Collection」は、30ロット中25点売れ、売上総額は6527万香港ドル(約6億4千万円)。トップ・ロットは乾隆時代のペアの「象」で、842万香港ドル(約8600万円)で有った。

続く「The Imperial Sale」は2億1917万1250香港ドル(約22億7600万円)を売り、84ロット中54点売れ(64%)、ヴァリューでは76%の成績。トップ・ロットは昭憲皇太后旧蔵、乾隆銘の青磁壺で2860万香港ドル(約2億9300万円)だったが、しかし全体的には思ったよりも売れなかった感が残る。

そして今シーズンの「トリ」、「重要中国器物」のセールは、271点のオファーで172点売れ(63%)、ヴァリューでは74%、総額2億2542万5250香港ドル(約23億円)を売り上げた。

トップ・ロットは「元染(ゲンソメ)」(元時代の染付磁器の事)の「マンダリン・ダック」紋大皿で2922万香港ドル(約3億円)、しかし1千万香港ドル以上で売れた作品は、この作品ともう1点のみ。

さて、何処と無く落ち着いて来た様にも思える、今シーズンのクリスティーズ香港のアジア・中国美術セールだったが、しかし結果を見ると、5日間で19億2400万香港ドル(約196億8千万円)、ロットで81%、ヴァリューでは88%を売り上げ、競合他社とのマーケット・シェアも52%を獲得。

またアジア美術以外にも、約14億円で売れたハリー・ウィンストンの「ビンク・ダイヤモンド」を含む宝石やワイン、時計のセールを含めた香港セール全体を見ると、総額27億香港ドル(約276億円)を記録、「中国、未だ強し!」の感を残したのだった。

それに反して、今朝の日経一面でも、インドと中国の景気の鈍化が伝えられて居たが、中国の景気に関しては、そう云われ始めてもう久しい。

それでも中国と云う国は、例え日々消え行く富豪が居ても、次から次へと筍の様に新しい金持ちが、此れも日々出て来る。

この事は或るヨーロッパの有力業者が、「マゴ、香港セールの会場に来る度に、客の半分は見た事の無い顔に替わってるんだよ…スゴいと思わないか?」と感慨深く呟いた事に証明されるだろう。

これらの話は、やはり「『国力』とは『人口』の多さに立脚する」と云う事を、我々に否定出来なくさせる。

そして近年、日本から大量に出て行く中国美術品…美術品とは「川の流れ」の様に、金と力の無い国からそれらを持つ国へと、止めど無く流れて行くモノなのだ。

世界経済の「川」に於いては、「上流」は決して豊かでは無い…日本美術を探しに、これからそんな「上流」に戻る。

再見、香港。