「孫一、会社やめるってよ」。

選挙迄後3週間を切り、滋賀県の嘉田知事が「日本未来の党」を結成・発表した。

この時期での発表は、流石「選挙のプロフェッショナル」小沢氏の仕掛けでは無いかと思うが、亀井氏等の反原発勢力が結集すれば、かなり闘えると思う。安部氏などは「『反原発』1点での選挙は…」と反発しているが、嘗て「郵政選挙」で大勝ちした自分達の事を棚に上げていて、全く以て片腹痛い。

もう1点、筆者はこういう時期こそ「女性リーダーが向いている」と思っていたので、嘉田氏の事をもう少し見極めたいと思うが(知事を辞めて出馬すれば、だが)、これで民主・自民・維新に投票しないで済む可能性が出て来た。

さて此処で、アート界の最新ニュースを3つお届けしよう。先ずは一昨日、ニューヨークで開催された「アメリカ美術」セールで、エドワード・ホッパーの1946年作「ケープ・コッドの10月」が960万2500ドル(約7億8000万円)で売却され、「新記録」を記録した。

一体何の「新記録」かと云えば、現在クリスティーズが力を入れている「Christie's LIVE」(インターネットに拠るビッド)に因る落札額の新記録で、これ迄の記録が、2010年に330万ドルで売却された商時代の青銅器だった事を考えれば、一気に3倍近く跳ね上がった訳だ。

次のニュースは、香港の「中国器物セール」の結果。ロット・ベースで73%、ヴァリュー・ベースで82%を売り、総売上は5億2356万2875香港ドル(約55億4500万円)。コレクション・セールでは、「中国家具」のアメリカ個人コレクションが約1億400万ドル香港ドル、李家の漆工品コレクションが約3500万香港ドルを売り上げた。

レギュラーの器物セールのトップ・ロットは、600万-800万香港ドル(約6360万円-8480万円エスティメイトに対して、何と4880万香港ドル(約5億1700万円)で売れた、乾隆銘のエナメル・ガラスの筆筒…全体ではロットで70%、ヴァリューで79%の売却だったので、或る意味健全な結果と云えよう。

そして3つ目のニュース。この夏クリスティーズのジャパン・オフィスは、近代建築として唯一重要文化財指定を受けている丸の内の「明治生命館」に移転し、その内装を現代美術家杉本博司氏が担当した。

氏の内装は、謂わば「和のミニマル」とでも呼ぶべき「杉本好」に溢れ、皇居を見渡す文化財建築との相性も抜群の物と為っているが、その新オフィスのお披露目が、氏の写真作品と古美術コレクションの展示と共に、来週12月7-8日の2日間に渡って開催される(招待客のみ来場可)。

出展作品は、氏の作品からは「海景」、コレクションからは「杉本文楽」にも登場した平安期の「十一面観音立像」(拙ダイアリー:「古典芸能の未来:『杉本文楽 曾根崎心中』@神奈川芸術劇場」参照)や、最近コレクション入りしたこれまた平安期の「行道面」等が展示される予定…何とも楽しみだ。

さて此処からが今日の本題。以前から或るVIPクライアントに「面白いから、観て下さい!」と云われて居た映画を、やっとANA台北便で観る事が出来た…「桐島、部活やめるってよ」で有る。

この朝井リョウ原作、吉田大八監督の本作、何と主人公で有るべき「桐島」は最後迄画面に登場しない(チラッと見えたりするが)!そして、その登場しない主人公の部活を「辞める」と云う噂が、周りの生徒達の関係性に次第に大きな波紋を起こして行く様を、生徒達各々の視点を通してその視点を変えながら描くが、観終わった後には、何とも云い難い不思議な「イイ感じ」が残る。

そしてこの作品は、筆者がジャパン・オフィス勤務時に起こした、或る事件を思い出させた…あれはロンドンとニューヨークの研修後、東京支社に営業部長として勤務していた或る年の、「4月1日」の事。

BBCの放送や「タイムズ」でも有名な様に、4月1日には、英国の会社では「エイプリル・フール」が横行するのだが、その年の「エイプリル・フール」として、筆者は当時ニューヨークに務めていた同僚Sを驚かそうと、日本時間の夜、「もう忙し過ぎて、ウンザリだ…俺はもう会社を辞める!」との「嘘」(気持ち的には、半分本気だったのだが:笑)のメールを送り退社した。

そしてその翌朝、事件は起きた…。

当時クリスティーズ印象派部門のトップで社内の大実力者、今は世界のトップ・ディーラー「A」に勤めている、ギョロ目のスコティッシュMがオフィスに来ていて、筆者の出社を待ち構えていたのだ。

「Mago, are you really leaving us ? Are you sure ?? When will you quit ?」

マジか?しかし何でMが此処に居て、そんな事を云っているのだ?彼のギョロ目が、狼狽える筆者の眼を厳しく捉えて離さない。

「そ、そんな事ありません!何かの間違いです!」と答えると、Mは「フーン…ニューヨークのSから聞いたぞ…」と云う。

Mに詳しく話を聞くと、重要な仕事の為に極秘で日本に来て、着いたばかりの時差ボケと疲労困憊の為、深夜グッスリと寝ていたMは、「4月1日」と云う事をてっきり忘れていたSからの「M、大変だ!マゴが会社を辞めるって云ってるぞ!」との電話で、叩き起こされたらしい。

その後、Mには「エイプリル・フール」のジョークに関する「ルール」を 長々と説教されたのだが、「噂の早さ」と「予期せぬリアクション」を痛感したので有る。

大失敗の「孫一、会社やめるってよ」の巻でした(笑)。