覚悟の「ぽっちり」@祇園。

一昨日の朝イチの飛行機で、再び9月のオークションの為の「モノ探し」の旅に出た。

最初の収穫は、非常〜に描き込みの良い屏風…これはマジに凄い。そしてこの屏風は一寸面白い体裁なのだが、それは観てのお楽しみ。

その後も名品・迷品を見続け、「モノ・ハンティング」も順調に進み、金工品や絵画、武具等をゲットする。

京都に入った夜は、長いお付き合いの顧客夫妻のご招待で夕食へ。

連れて行って頂いたのは、祇園の路地のどん詰まりに在る「A」。ご夫婦でやられているこのお店には、初めてお邪魔したのだが、こぢんまりとした店内も静かで、料理はと云うとこれまた素晴らしく美味い!

鱧や蓴菜、稚鮎等の季節の素材をふんだんに使った料理は、筆者の味覚・視覚・嗅覚・触覚を刺激し続け、ダイエットの自覚をも失わせる程に、魅惑的で有った。

その晩は早目にホテルに帰って、マッサージを受け就寝し、昨日は朝から顧客廻りに精を出して、業者や個人コレクターからの仏教美術や漆工芸品等の出品を決めた。

「待望」の夜は、VIPクライアントと先ずは木屋町の「K」で食事…はてさて、今夜は一体何軒行く事になるのだろうか(笑)。

この有名料亭のディフュージョン・ラインである「K」も、前夜の「A」と同様、ミシュラン星を獲ったそうで、以前来た時よりも味が少々西洋化し、洗練されたように感じる…此処でも大好物の稚鮎や鱧を頂き大満足で有った。

「K」を出ると、2軒目は祇園迄歩いて、白州正子も良く来ていたと云う、お茶屋の「M」へ…この「M」は、去年の今頃「黒髪」を観た所である(拙ダイアリー:「先笄の黒髪」参照)。

昨晩の「M」では、今年6人の新人舞妓の中でも、最も綺麗だと評判の舞妓見習い、豆六さんを呼んで飲む。
豆六さんは未だ16才、所属する置屋から老舗お茶屋に派遣されての、ひと月の研修期間も後一週間程、未だ緊張すると云うが、当たり前だろう。

16にして故郷から京都に出て来て、住み込みで「お姉さん」に仕え、休みは月2日、稽古事や着付け、化粧迄学ぶ事ばかり…小さい頃から舞妓に為るのが夢だったと云う、「大人の世界」に飛び込んで来た豆六さんは、紅を引いた眉と唇も可愛らしい半玉さんで有った。

話ながらふと見ると、豆六さんの派手で可愛らしい、大き目の「帯留」が眼に付いた。聞くと、舞妓さんの帯留を「ぽっちり」と呼ぶそうで、代々同じ家のお姉さんから譲り受けるそうだ。

弱冠16にして、最近の若者には稀な、人生の「決断」をした豆六さんの顔は、一年間の厳しい修行を潜り抜けて来た女性の、得も云われぬ強さの色香が漂っていて、その「ぽっちり」は、代々の舞妓さん達の「決断」の歴史をも漂わせて居たので有った。

「M」を後にすると、この晩3軒目、今「世界一」、もとい「祇園一」人気の有る店と評判の「B」へ。

大層色っぽく切符の良い、元芸妓のママTさんのお出迎えで店内に入ると、其処はモダンな空間。そしてTさんと話していたら、或る事から偶然お互いの本名(名字では無く名前の方)が同じ事が判り、この名前の人には、悪い人が居る筈が無い!と盛り上がる(笑)。

切符の良い美しいTママと出会ったので、「今夜は、この店で上がり」と覚悟したのだが、VIP氏の「いやぁ、孫ーさんの好きな女優さんにそっくりな娘の居る店が、近くに在るんですよ」と云う甘言に乗せられ、結局都合4軒目、〆は花見小路から少し入ったビルに在る「K」と為った。

国宝美人女優Yにソックリ、と謳われたその彼女はと云うと、確かにその雰囲気は有ったのだが、鈴木ヒロミツ並みに「でも何かが違う」ので有った(此れが判る人は、マジに「通」で有る)…。

祇園の夜は、覚悟に充ちている。