10年目の涙。

下見会も、無事今日終了。

役者達(写楽作品)の行方は未だ判らないが、能面や印籠は非常にポピュラーで、漆作品に若しかしたら「世界記録」が出るかも知れない…「捕らぬ狸の皮算用」とはこの事だが、この非常に美しい日本の漆工芸品の「極み」に対する世界の評価には、充分期待出来ると思う。楽しみである。

さて、10回目の「9・11」が終わった。

今年の「9・11」は日曜だったので、下見会も午後からだった事も有り、各局で数日前から始まっていた「10年前の悪夢」を繰り返す放送に続き、朝から追悼式典をTVで観たのだが、今年筆者に思いも掛けない事が起きた。

毎年繰り返される、アルファベティカルに読み上げられる死亡者達の名前を聞いていて・・・涙が、自然と、湧いて来たのだ。

過去9回この追悼式典を観ていて、こんな事は嘗て無かった…そしてこの涙の意味を、目頭を押さえながら考えた。

これは、丁度半年前に起こった「東日本大震災の所為か?」とも思ったが、実はそうでは無く、それは家族を亡くした人々が「あの日」以来10年経っても未だ悲しみに充ち、その年月と消えぬ「突然の喪失感」に対しての、激しい悲しみなのであった。

そして、ポール・サイモンに拠るギター弾き語り「Sound of Silence」は、筆者のその悲しみに拍車を掛け、聴く者の心に余りに痛烈に響く。


Hello darkness, my old friend
I've come to talk with you again
Because a vision softly creeping
Left its seeds while I was sleeping
And the vision that was planted in my brain
Still remains
Within The Sound of Silence


「喪失」と云う闇は、失われ、存在し得無い筈なのに「脳裏」に植え付けられて居る為、忘れていたとしても、或る日突然甦る。そして人は、その闇と向き合って生きねばならない…一筋の光を求めて。

明日はオークション本番…頑張らねば。