「屏風天国」の日々。

$1=75.78円の「史上最高値」を円が記録し、そしてランチを買いに行ったら、ニューヨークのデリにも滔々暖房が入って居た今日この頃、此方はと云うと、先週今週と「プチ出張」の連続でお疲れ気味である。

そんな先週の或る日、当社の「Estate & appraisal」部門の同僚と連れ立って、小雨の中を某顧客宅へと車を走らせた。

90分程走って着いて見ると、当に先日此処で記した「夢」の様な雰囲気で(拙ダイアリー:「OMEN:前兆(全後編)」参照)、自動的に開く門やら、家屋まで門からかなり走る敷地内の道、クラシックな家の佇まい迄夢の中の状況と酷似して居て、「これは若しかしたら、凄い作品が有るかも…そして、背後に気を付けねば!」(笑)と緊張したが、拝見した屏風は残念ながらそれ程の重要作品でも無く、序に頭を殴られたりする事も無く、無事に帰還。

また別の日には、メトロポリタン美術館から直ぐの5番街のアパートに住む某電気製品会社のCEO宅で、こちらも屏風を査定。

こうなると、前にも思ったのだが、一体何隻(双)の日本の屏風がニューヨークに存在するのだろうか?と云う疑問が湧く。一度等、マンハッタン内、しかも全て別の顧客宅で10隻以上の屏風を一週間に査定して回った事も有る位だから、如何にニューヨークの人が日本の屏風をインテリアとして好んでいるかが判るだろう。そして今週はと云えば、またまた屏風を3双と1隻、こちらは某倉庫での査定。本当にニューヨークと云う土地は、当に「屏風天国」では無いか!

しかし、査定対象は屏風だけでは無い…一昨日は一昨日で、飛行機に乗って仏像の査定に飛んだ。

せっかく朝5時に起きて空港に向かったのに、相変わらず、当たり前の様に1時間半も出発が遅れ、何とか現地に着いてみても、帰りの飛行機の時間の都合で、結局数時間しか滞在出来なく為ってしまった。

しかもこの日の朝は、来月7-8日にマジソン・スクエア・ガーデンで開催される、Jay-ZKanye Westのコンサート・チケット発売日で、旨く取れるか心配だったのだが、こちらは友人のお陰で確りとゲット!これで11月9日の午後から始まる「ニューヨーク−西海岸−日本−香港−日本−ニューヨーク」と云う、1ヶ月半を余裕で超える長期出張前のマンハッタンでの最後の2夜が、Jay-Z with Kayne West(7日)とSting(8日)のコンサートと云う事に為った…ウーム、楽しみ過ぎるが、濃過ぎるラインナップでも有る(笑)。

そんなこんなで何とか目的地に着き、空港に迎えに来てくれた顧客のお宅で観た仏像は、久々の「ヒット」!作も古く、恐らくは10-11世紀の木彫仏で有る…修理の跡も有るが、全体的な印象も頗るヨロシイ作品で有った!オークションに出てくれば良いが…。

その後は他部門の作品も観たのだが、次に出て来たのが何とチャイコフスキーに拠る「自筆書簡」…先日チャイコのシンフォニーを聴きに行ったばかりだったので(拙ダイアリー:「マエストロの、絶え間なく揺れ動く、右手の指@カーネギー・ホール」参照)、余りの偶然に吃驚してしまったが、此れも所謂「御縁」と云う奴なのだろう。

その後も、日本の密教法具やヴィクトル・ユゴーの書簡、西洋版画等諸々を拝見し、帰りの飛行機の時間が迫っていたので、気も漫ろにご夫妻とコーヒーを頂くと、再び空港迄大急ぎで送って貰ったのだが、着いてチェックインしてみると、想像した様に帰りの便も2時間の遅れ…それならばあんなに急がず、ゆっくりとコーヒーとお菓子を頂き、ご夫妻ともっとお話をすれば良かったと航空会社を再び呪いながらも、しかし帰りの便がキャンセルされなかった事を感謝しつつ(何故平気であんなに遅れる飛行機会社に、感謝せねば為らないのだ?:怒)、「屏風天国」行きの便に乗り込んだ。

プロペラ機の窓側に座り、その窓からプロペラや車輪を格納する機体部が錆びて居たり、所々「穴」が開いていたり、離陸後車輪を格納したその蓋が確り閉まらなかったのを窓から眺めていたら、何と無く「あぁ、オレみたいだなぁ」と思ってしまった。

そして、長年扱き使われて時代遅れに為り、疲れ切ったオレの様なプロペラは、一生懸命頑張って回ったにも関わらず、機体は強風の為木の葉の様に揺れ、唯でさえ疲れたオレの体に不快感を齎させたが、あのプロペラの様なオレは何とか踏ん張り、「屏風天国」への再びの帰還を果たしたのだった。

「屏風天国」の日々は、エキサイティングだが、極めてタフなのだ。