「利休忌」と、5億4千万ドルの夢。

ニューヨークは春爛漫…セントラル・パークの花は咲き乱れ、戦ぐ風も夜を除けば穏やかで、ヘルズ・キッチンのロフトから窓全面に見える大きな空や雲、飛び交う海鳥達さえ、その動きが何故かゆったりとして来ている様に見える。

そんな中、昨日はアッパー・イースト・サイドの裏千家で、「利休忌」のお茶のお呼ばれで有った。

さて、筆者に取って「利休忌」と云うと、何時も思い浮かぶのが利休の遺偈(辞世の句)で有る。


人生七十 力囲希咄 (じんせいしちじゅう りきいきとつ) 
吾這寶剣 祖佛共殺 (わがこのほうけん そぶつともにころす)
堤る我得具足の一太刀 (ひっさぐる わがえぐそくのひとつたち)
今此時ぞ天に抛 (いまこのときぞ てんになげうつ)


この遺偈、何度読んでも何と力強く、何と猛々しいのだろう!此れこそ、千利休その人の「人となり」を顕しているのでは無かろうか。

そして「利休忌」は、唯利休の遺業を思い出すだけで無く、利休が前時代の「殻」を破り、新たなる創意や前衛的芸術性を目指したと云う事を再確認した上で、今の茶人が単に「昔」に留まらない事を決意するに相応しい機会なのでは無いだろうか…。

そんな事を考えながら、「御祖堂」にお参りさせて頂いた後、入った茶室の床には利休居士像の軸が掛けられ、床や床脇には花入が並んで居り、皆でお茶が始まる前の「花寄せ」を見学する事に。

菊・竹・松・柳・桜・桐、と呼ばれた各人が花を生ける「花寄せ」が終わると亭主が入室し、先ずは利休居士への献茶が為され、濃茶点前と為った。そうして主菓子のきんとんを頂き、お濃茶を頂くと中立し、その後手作り点心を頂いて今年の「利休忌」のお茶は終了。

「利休忌」が来ると、毎年もう1年の1/4が終わってしまったと云う事に驚くのだが、ニューヨークに居ながらもこう云った季節感を感じられる所が、ニューヨークでのお茶の素晴らしい所なので有る…春の訪れを感じた、穏やかなひと時であった。

さて、今週のニューヨークは「利休忌」も大事だが、実はもう1つ重大事が有って、それは「5億4000万ドル」(約443億円)の金額に為った「ロト(宝くじ)」で有る(笑)。

繰越に繰越を重ね、「史上最高額」に膨れ上がったこのロトの抽選は昨晩行われた筈だから、新たなる「百億万長者」が出たか、はたまた再び繰越になったのか…かく云う筆者も勿論購入したので、今からゲル妻と膨大な額の当選金をどう使うか吟味して居る所だが(笑)、ふと以前200億円超のロトを当てた家族が、テレビでインタビューを受けて居たのを思い出した。

その家族は両親とティーン・エイジャーの男の子2人の4人家族で、父親は田舎でパン屋をやっているのだが、その家族全員がステージに上げられると、インタビュアーが質問を始めたが、家族を代表して答えたのはその父親で有った。


「さて、あなた方はこのお金を、一体何に使いますか?」

「俺はゴルフが好きだから、パン屋を引退して残りの人生はゴルフ三昧だな。」

「では、奥様には?」

「ウチのは車が好きだから、前からカッコ良いと云ってた『ジャガー』って云う車を買ってやって、後は世界旅行に連れて行く。」

「では、息子さん達にはどうでしょう?」

すると、父親はニッコリと笑ってこう答えた。


「息子には、パン屋を継がせる。」



大爆笑に沸く会場の中ステージの両親の後ろで、思わず顔が引き攣り、歯を食い縛った息子達の顔を筆者は見逃さなかったが(笑)、何とも痛快で天晴れな父親では無いか!

「子孫に美田を残さず」…恐らくは世界一金持ちの「街のパン屋」に為ったで有ろう息子達は、ロトが当たった事よりこう云う事を平気で云える父親を持った事の方に、幸運を感じるべきだと思う。が、顔が引き攣る息子の気持ちも良〜く判る(笑)。

どうせ見るなら、夢は大きい方が良い…さてそろそろ、ゲル妻と443億円の使い途を「マジに」決めねばならないので、今日はこの辺で(笑)。