テンスな、余りにテンスな…: 坂本龍一&ゲル妻@The Stone。

昨日は5時半過ぎに仕事を切り上げ、一度家に戻り、ササッと夕食を食べて着替えると、三脚を抱えていざ再び「The Stone」へ。

Ryuichi Sakamoto Curates the Stone」の第2夜、8時からのファースト・ギグは坂本龍一ジョン・ゾーンの即興ライヴ。

会場は、ジョンの希望で教授が座るピアノとジョンが足を掛ける椅子だけを除いた、フロア全体に観客を座らせた為に超満員…サックスを時には打楽器の様に、時には川のせせらぎの様に吹くジョンと、ピアノを「音の宝石箱」の様に扱う教授の両者の演奏は、これが初顔合わせとは思えない程ソリッドで、素晴らしかった。

そして愈々、我がゲル妻が登場する10時からのセカンド・セッション。

開場と同時に人が雪崩れ込み、客席のみ為らず、通路も立ち見で一杯になる程超満員と為ったが、その観客の中には映像作家のシリン・ネシャットや女優の菊地凛子さん、現代美術家インゴ・ギュンター、チボ・マットの羽鳥美保さん等のアーティスト達の顔も見える。

そして場内が暗く為ると、先ずは教授が登場し、緊迫感の有るピアノと「音」を奏で始め、黒紋付きのゲル妻がゆっくりと登場…。

今回のゲル妻のパフォーマンスは、能「道成寺」をベースにした物で、能で云う所の直面(ひためん)の「前シテ」と、般若面を着けての「後シテ」の様な2部構成的なパフォーマンスだが、能には無い「解脱」と「救済」に因って締め括られると云う、「能」とは異なる「即興舞踊」である。

例えば能「道成寺」で、シテと小鼓との掛け合いが見せ場である「乱拍子」も、昨晩は、教授のピアノから紡ぎ出される極めてテンスな音と曲調、ゲル妻のこれも即興性を駆使した舞の、この両者のどちらも譲らない緊迫感溢れる即興的芸術性は、口憚ったいが、決して「能」の「型の芸術性」に負けて居なかったと思う。

45分間の公演終了後、汗だくに為った教授と話した時も「いやぁテンス、テンス!良かったよ〜!」と云って頂き(→http://twitter.com/#!/skmtmgr)、シリンや凛子さんにも「素晴らしかった!」とお褒めを頂いたので、先ずは一安心…ゲル妻のパフォーマンスは、教授をほんの少しは「本気モード」にさせたのでは無かろうか!?

そしてこの夜のパフォーマンスをして、旦那である筆者はそんなゲル妻を誇りに思うと共に、ワタクシが能「道成寺」の僧侶の様に、日々如何に「女の情念」と対決しそれを鎮めているかと云う事を、来場した多くの友人達に観て貰えたと云う点で、自らをも誉めてあげたい気分で有った(笑)。

冗談はさておき、身内を誉めるのは気が引けるが、しかしゲル妻は本当に良くやったと思う。が、これで暫く、夜中にふと眼に入る「般若面」に怯える事も無くなる訳で、嬉しい様な寂しい様な(笑)…しかしまた何時か「舞うゲル妻」を見たいと思わせる、昨晩のパフォーマンスでした。

ご来場頂きました皆様、本当に有り難うごさいました!